育児放棄、虐待、シビアなテーマをアニメで描いた理由…楽しくないことも子供たちに語っていくことは大切

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ズッキーニ人形とクロード・バラス監督

 虐待された子供たちを描き、世界で絶賛されたストップモーションアニメ映画『ぼくの名前はズッキーニ』(スイス・フランス合作)のクロード・バラス監督が来日してインタビューに応じ、本作に込めた思いを語った。

映画『ぼくの名前はズッキーニ』予告編

 育児放棄され、衝撃的な事故で母を亡くした9歳の少年ズッキーニが養護施設に送られ、それぞれに複雑な事情を抱える仲間たちと過ごすうちに心を開き、たくましく生きていく姿を切なさと希望とともにつづった本作。第89回アカデミー賞長編アニメ賞にノミネートされたほか、世界最大のアニメーション映画祭・仏アヌシー国際アニメーション映画祭2016では最高賞および観客賞をW受賞、フランス映画界最高峰の第42回セザール賞では最優秀長編アニメーション賞のみならず、実写映画を抑えて最優秀脚色賞に輝いた珠玉の物語だ。

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 8歳~12歳くらいの子供たちに向けて作ったというバラス監督は、アニメでシビアなテーマを扱うことにも恐れはなかったという。「ジル・パリスさんの原作小説では子供たちの暗い過去から始まって、だんだん光を見いだしていく彼らの人生が描かれています。それが、僕にはとても美しいものに感じられたんですよ。なので迷いや不安はありませんでした。決して楽しくはないことも、子供たちに語っていくということは大切だと思っています。人生というのは楽しいことばかりではないですし、難しい局面に陥ったりすることもたくさんある。けれども、その時にその難しい局面を乗り越えていくことが大切なんです。周りの人たちを助けたり、助けてもらったりしながら生きていくことの意味、そういった部分を映し出したいと思いました」。

 バラス監督は「その現実を自分で見て理解せずして、リアルな作品を作ることはできない」と強く感じ、原作者のパリスと同様、実際に施設に足を運び、子供たちと話をした。「彼らが体験した状況というのは、映画で描くときにすごく気を付けないといけないと思いました。子供たちの言葉で、シンプルに、そのことを伝えなくてはいけない。実際に彼らがその話題を自分たちの間で話すとき、どういうふうな言葉を使うのかと。あまりにもダイレクトにそのことを伝えることよりも、子供たちのユーモアや優しさというものも引き出せるようにしました。そういうことを友達同士で話すという時点で、気持ちが『怒り』よりも『許す、信頼する』という方へ行っていると思うんです」。

 バラス監督いわく、ヨーロッパにおける子供向けの映画はそのほとんどが娯楽や冒険もので、本当に子供たちが今直面している現実、社会的な問題に深く切り込んでる映画はほとんどないという。そんな中で本作を観たスイスやフランスの子供たちの反応はどんなものだったのだろうか?

 「とても好意的な反応をもらいました。特に驚いたというか、僕が想像していなかったのが『悲しい部分がよかった』という子供たちの声があったことです。つまり、悲しいとか、寂しいとかいうことをこれまで話題にしてこなかったのか、ということなんですね。だけど子供たちは寂しいからよかった、寂しさを感じられたからよかったと言う。彼らの情緒にそういう部分で働きかけるものが足りなかったんだろうなと思います。もちろんそればかりではダメだから、ユーモラスな部分もほどよく加えながら作るのは大切なのでしょうが、おそらくこの部分は子供作品の中で欠如していたんだと思います」。また、途中でアニメーションであるということを忘れてしまったという感想も。「それは自分としてはうれしい感想で。なぜならテクニックよりも、メッセージ性の方に気持ちが向いていたということだと思うので、すごくうれしかったです」。

 そしてバラス監督が本作を制作した理由の一つには、高畑勲監督や宮崎駿監督が手掛けたテレビシリーズ「アルプスの少女ハイジ」の存在があった。「僕が子供だった頃に、テレビで放映されていた『ハイジ』を観て、感激した思い出が強く残っていました。あれも孤児の女の子の話です。『ハイジ』を観た時の感覚が、本作の原作を読んだ時によみがえってきたんです。自分が子供の時に感じたことを、今度は自分が子供たちに伝えたいと。今回『ぼくの名前はズッキーニ』を持って日本に来られたのは、そういう意味でも自分にとってうれしいことなんです」。(編集部・市川遥)

映画『ぼくの名前はズッキーニ』は公開中

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