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プレスリーを通じてアメリカ社会の問題に迫る異色ドキュメンタリー

今もなお絶大な人気を誇るエルヴィス・プレスリーさん
今もなお絶大な人気を誇るエルヴィス・プレスリーさん - Michael Ochs Archives / Getty Images

 伝説のロック歌手、エルヴィス・プレスリーさんを題材にした話題のドキュメンタリー映画『ザ・キング(原題) / The King』について、ユージーン・ジャレッキー監督が、3月8日(現地時間)ニューヨークのNeueHouse Madison Squareで行われた特別試写後のQ&Aで語った。

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 同作は、ジャレッキー監督がオークションで購入した、エルヴィスさんの愛車1963年型ロールスロイス・ファンタム・Vに乗って、メンフィス、ニューヨーク、ラスベガスなどの大都市で行われた当時のツアーを振り返りながら、彼の人生における栄光から亡くなるまでを追った作品。当時と現在のアメリカ社会を比較しながら、真のアメリカンドリームとは何なのか問う。

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ユージーン・ジャレッキー監督
ユージーン・ジャレッキー監督

 若くしてスターダムにのしあがったものの、最期はトイレで亡くなったというエルヴィスさん。アメリカもトランプ政権のもと、ある意味全て(これまでの政策、行政)が水の泡になってしまった(英語では、「Go Down the Toilet」という表現をする)と語るジャレッキー監督。「トランプが大統領になったから、現在の状況に陥ったのではなく、いつの時代も同様の問題をアメリカは抱えてきたと思うんだ。過去には、奴隷、虐殺、女性への抑圧などがあったし、それでもいつも解決に向けて動いてきた。古き良きアメリカと逆にそうではないアメリカも知ってもらい、現在の社会と向き合ってもらいたいと思っているんだ」と話す。

 オークションで手に入れたという1963年型ロールスロイス・ファンタム・Vについては、「コンディションは良くなかったけれど、僕らプロダクションでこの車を買って修復したんだ。実は、オークションにかけられる前、この車は15年くらいミュージアムに展示されていたらしいんだ。タイヤもつぶれて四角くなっていたし、修復するしかなかったよ」とジャレッキー監督。劇中にも故障したシーンがあるが、撮影中20回以上は故障しているそうで、「デスヴァレーのような38度以上ある過酷な土地では全く故障しなかったからまだよかったよ。でも、よく故障したから、その映像を残すのが良いと思ったんだけど、何度も繰り返しているとわざとらしく見えると思って、結局一度しか使わなかったんだ」と明かした。劇中では、さまざまな都市で、エルヴィスさんに関わった人物や彼に影響を受けた人物をこの車に乗せ、車内でインタビューを試みている。

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 グレイスランド(エルヴィスの邸宅を含む敷地)の撮影については、遺産管理団体からの許可を得ずに、その周りを撮影していたという今作。「エルヴィスをべた褒めした映画ではなく、彼を通してもっと深い題材を描いているから、許可を得る必要がなかったんだよ。それに、エルヴィスの妻だったプリシラも今作には参加していないしね。彼女とエルヴィスの私生活にまで踏み込みたくはなかったんだ」と説明。その通り、家族や友人に焦点をあてるのではなく、あくまでエルヴィスを通してアメリカが抱える問題点を浮き彫りにした作品になっている。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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