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是枝裕和監督「人間ではないもの」を撮ることにも興味

記者からの鋭い(?)質問にも真摯に答える是枝裕和監督
記者からの鋭い(?)質問にも真摯に答える是枝裕和監督

 スペインで開催中の第66回サンセバスチャン国際映画祭で映画『万引き家族』(公開中)の是枝裕和監督とリリー・フランキーが記者会見を行った。今回、同映画祭から生涯功労賞に当たるドノスティア賞を受賞した是枝監督は受賞セレモニーで先頃亡くなった樹木希林さんを偲び、涙が止まらなくなってしまったが、会見ではいきなり「三池崇史監督のようなぶっ飛んだホラー映画を撮りたいと思ったことは?」という滅多にない質問が飛び出し、笑いの絶えない場となった。

 是枝監督はまず賞を与えてくれたことへの感謝を述べると、続けて冒頭の質問に対して驚きつつも「ファミリードラマの監督として認知されていますが、自分としてはいろんなジャンルにチャレンジしたいという気持ちがあります」と可能性があることをにおわせた。

 もっとも「それはホラー映画じゃないかもしれないけど、人間ではないものを撮ることに興味があります。人間ではないものが命と心を持って、結果的には人間を考えるストーリーになるんですけど。まだちょっと実現するには時間がかかると思うので、待っていてください」と真摯に答えた。

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 なおスペインでの『万引き家族』の公開は12月21日が予定されている。またアカデミー賞外国語映画賞の日本代表にも選ばれており、そのノミネートの行方や、日本での賞レースの発表も控えていることから、今年5月のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞から始まった熱狂はまだまだ続きそうだ。

 しかし是枝監督自身はすでに10月から撮影が行われる日本・フランス合作映画『La Verite(仏題・仮)』の準備に入っており、今回も滞在先のパリからサンセバスチャン入り。多忙ながらも言葉の端々に、刺激的で充実した日々を楽しんでいる様子がうかがえた。

 会見でも海外で撮影することの困難さを問われると、是枝監督は「言葉や文化の違いを含めて共同製作は初めての経験ですが、どういう映画を撮りたいか? という同じ思いを抱いていれば、言語などの障壁を超えて映画を作ることができるという期待を持っています」と前向きな言葉で返した。

 その上で「例えば『万引き家族』で日本人にとっての幸せの象徴である“親子が川の字で寝る”というシーンがありますが、そういう描写がフランスでは“なぜ、この子は一人で寝ないのか?”という疑問に直面する。ではどういう形でこの家族を寝かすのか? 一つ一つのシーンで受け取られ方が違うから、そういうところから(脚本を)組み立て直さなければならない。それが結構面白い」と、ほほをゆるませた。

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是枝裕和監督とリリー・フランキー
絶妙な掛け合いを披露する是枝裕和監督(左)とリリー・フランキー

 またリリーと是枝監督の2人に対して、「4作で一緒に仕事をしていると思うが、互いの関係に変化は?」という問いもあった。

 まずリリーが「最初にお会いしたのは、是枝監督が映画を作り始めた20年ほど前で、今でも会うと照れ臭くてモジモジする。そう言うと変な関係に思われそうだけど」と告白すると、是枝監督も「生きていて感じる部分が共有できているという印象を持っています。さらに子供との共演シーンでは、僕が子供からどう言う表情を引き出したいのか、100%分かった上で存在してくれる」と全幅の信頼を寄せていることを明かした。

 その言葉が気恥ずかしかったのか、すかさずリリーは「今回、『万引き家族』に僕を呼んでくれた理由は、“リリーさんはとにかくせこい男をやらせたら上手い”」と是枝監督との秘話を明かして笑いに変えると、慌てて是枝監督が「ちょっとニュアンスが違うんですけど(苦笑)。リリーさんは極悪人もとても上手なんですけど、すごく小さい悪いことをやっているリリーさんが、僕はとても好きなんです。せこく、悪いことをするのが」とフォローした。

 だが、リリーは突っ込みの手を緩めず「でも次回作のフランスで撮っている映画に僕はキャスティングされていないので、来年はプライベートでサンセバスチャンに来ます」と、是枝監督を困らせつつ、記者たちの笑いを誘っていた。(取材・文:中山治美)

第66回サンセバスチャン国際映画祭は現地時間9月29日まで開催

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