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スピルバーグ、アカデミー賞からNetflix締め出し提案へ

スティーヴン・スピルバーグ監督
スティーヴン・スピルバーグ監督 - Axelle / Bauer-Griffin / FilmMagic / Getty Images

 巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督がアカデミー賞からNetflixを締め出すべく、4月に開催される理事会で現在のノミネート資格の変更を提案する予定だとIndieWireが報じた。Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』は最多10部門にノミネートされ、監督賞、撮影賞、外国語映画賞の3冠に輝くなど本年度のオスカーレースを席巻したが、映画館での体験を最重視するスピルバーグ監督は第二の『ROMA/ローマ』を生まないように力を尽くすようだ。

【画像】圧倒的な美しさ『ROMA/ローマ』フォトギャラリー

 スピルバーグ監督は、アカデミーの監督部門の理事会の一員。Netflixなどの動画配信サービスが手掛ける映画をアカデミー賞の選考対象にするかどうかについて、昨年3月にも「もしいい作品ならば、(テレビ界のアカデミー賞とされる)エミー賞を獲るべき。でも、オスカーではない」「映画賞の選考対象になるためにたった1週間くらいの劇場公開を約束したうえで、VOD(ビデオ・オン・デマンド)ビジネスで映画製作の資金集めをしている。でも、実際にはテレビのフォーマットで製作したならば、それはテレビ映画だと思う」と ITV News に語り、その後も映画館での体験が失われることへの危機感を表明してきた。

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 スピルバーグが設立した制作会社アンブリン・エンターテインメントの広報は「スティーヴンはストリーミングと劇場上映の違いを痛切に感じています。このことが(理事会で)議題に上がったとき、他の人々が賛同してくれれば、彼は喜ぶでしょう」コメントしている。アカデミーも「賞のルールに関する話し合いは部門間で進んでおり、理事会は4月の会合でこの件について検討することになるでしょう」としている。

 今年のオスカーレースで持ち上がったNetflixへの不満としては、1.Netflixはオスカーキャンペーンにお金をかけすぎている(一部では『ROMA/ローマ』の5,000万ドル=約55億円に対し、作品賞を受賞した『グリーンブック』は500万ドル=約5億5,000万円とも)、2.Netflixは興行収入を発表しない、3.『ROMA/ローマ』が劇場のみで公開されたのは3週間のみで(それ以降はストリーミングでも配信された)、公開から90日間は劇場でしか上映しないというルールを尊重しない、といったものがある。(1ドル110円計算)

 Netflixはこれまで、劇場で公開する作品は同日にストリーミング配信も開始してきたが、『ROMA/ローマ』では方針を変更し、ストリーミング配信開始に3週間先んじて劇場公開を行った。現行のルールでは、アカデミー賞作品賞にノミネートされるためには、劇場で独占上映するのは1週間だけでいい。多くの映画館チェーンはNetflix作品の上映を拒否しているため、『ROMA/ローマ』の上映は独立系の映画館がメインとなったが、13週にわたって上映されて推定380万ドル(約4億1,800万円)の興収を上げたと伝えられている。

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 Netflixはアカデミーのルールに則っただけでなく、『ROMA/ローマ』をアメリカで100館以上、世界では500館以上(40か国以上)で公開するなど劇場上映にかなり力を入れていたが、映画文化を破壊するとして反発する人々は少なくない。ほかのアカデミーの理事は「Netflixがほかの映画スタジオと同じように振る舞うつもりならば、何らかの基準を設けなければなりません。現行のルールは、こんな未来が来るとは想像もしなかったときに作られたものですから」と語っている。Netflixの『13th -憲法修正第13条-』で第89回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたエヴァ・デュヴァネイ監督は、Netflix締め出しの動きに反発し、「理事会にはアカデミーの通常のメンバーは出席できないため、違う考えの監督たちもいると知ってほしい」とTwitterで訴えている。

アルフォンソ・キュアロン
アルフォンソ・キュアロン監督は『ROMA/ローマ』で三つのオスカーを獲得した - Mike Baker / (c) A.M.P.A.S.

 『ROMA/ローマ』のアルフォンソ・キュアロン監督は昨年、シネマトゥデイのインタビューに応じ、「僕は常に劇場公開の守護者だ。劇場公開は、どんな映画にとっても、どんなフィルムメイカーにとっても重要なこと」と自身の立場を明確にしながらも、「劇場公開とバランスを取れるのであれば、ストリーミングは素晴らしい可能性になると思う。Netflixが素晴らしいのは、多様性を信じてくれること。今、映画館での体験というのは、ほとんどの国でハリウッド映画だけになっているから」と指摘。「『ROMA/ローマ』を世界中の映画館で公開できてうれしく思っているし、(配給会社が敬遠しがちな)“白黒でスペイン語でメキシコのドラマ”としては一番いい扱いを受けたと思う」と続けた。

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 アカデミー賞で『ROMA/ローマ』が作品賞を受賞できなかったのは、Netflixのこれ以上の躍進は映画業界に混乱をもたらすと恐れた人々が多かったからという説は根強くある。キュアロン監督はアカデミー賞で3冠に輝いた後、「Netflixと組むと決めた後、友人や他のフィルムメイカーに、まるで僕が何かを裏切っているみたいに『一体何をやっているんだ?』と言われたりした。だけど、それは変わったと思う。今は多くの人々が、この映画は普通ならメインストリームの映画しかできない方法で、世界の観客に届いていると認めていると思う」とVarietyに語っていた。果たしてアカデミーはNetflixの作品に対し、どういう決断を下すことになるのだろうか?(編集部・市川遥)

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