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北朝鮮の人権問題に挑んだ衝撃の3Dアニメ!国内外から相次ぐ問い合わせ

韓国から救援物資風船が届くシーンも。中にはチョコパイや韓国の雑誌が入っていた。(『トゥルー・ノース(原題) / True North』より)
韓国から救援物資風船が届くシーンも。中にはチョコパイや韓国の雑誌が入っていた。(『トゥルー・ノース(原題) / True North』より)

 6月30日に閉幕したアヌシー国際アニメーション映画祭で、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の政治犯強制収容所を舞台にした清水ハン栄治監督の3Dアニメ『トゥルー・ノース(原題) / True North』(日本・インドネシア合作)が世界初公開された。今年の同映画祭はオンライン開催となったが、収容所を生き延びた脱北者たちからの証言に基づく衝撃的な内容はアニメ関係者の関心を高め、国内外からの問い合わせが相次いでいるという。

『トゥルー・ノース(原題) / True North』予告編【動画】

清水ハン栄治監督
3Dアニメ『トゥルー・ノース(原題) / True North』を制作した清水ハン栄治監督

 同作は、日本から北朝鮮に戻った在日朝鮮人一家が、いわれなき反逆罪に問われて収容所に送られ、10年以上をいかにして生き延びたのかが描かれている。同映画祭では近年、タリバン政権下のアフガニスタンの少女の過酷な人生を描いた『ブレッドウィナー』(2017)、カンボジアのクメール・ルージュ政権下の強制労働施設を舞台にした『フナン(原題) / Funan』(2018)など、実写で再現するのは困難な史実を基にした長編作品が増えており、アニメーションの可能性を広げている。

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トゥルー・ノース
北朝鮮は三代連座制で、親の罪で子供たちもある日突然、収容所に送られるという。(『トゥルー・ノース(原題) / True North』より)

 清水監督もドキュメンタリー作品を製作したことはあるが3D長編アニメーションは初めて。アニメを選択したのには理由がある。

 清水監督は「収容所の撮影は不可というのもありますが、体験者から話をうかがうと公開処刑に飢餓などリサーチの段階で3日間ぐらい食事が喉を通らなくなるくらいの残酷さで、そのまま実写にしたらホラーになってしまう。だけどアニメーションにし、さらに悲惨さだけではなく、その日々にもあった友情や愛情もクローズアップしてエンタメ性を高めれば、より幅広い人に作品が届くのではないかと思いました」と語る。

トゥルー・ノース
収容所では餓死や病死で家族が亡くなっていった。(『トゥルー・ノース(原題) / True North』より)

 本作が選ばれたのは、実験的かつ挑戦的な作品を集めた長編コントルシャン部門。内容もさることながら、制作の道のりもまさに挑戦的だった。企画を立ち上げたのは約10年前。物議を醸し出すテーマに難色を示されて製作費が集まらず、自主制作に踏み切った。“いかに資金を集めるか”から“いかに低予算で制作するか”へと考えを改めた結果、比較的物価と人件費が安価なインドネシアに移住し、そこを拠点にインドネシア、タイなど東南アジアの気鋭の若手アニメーターを起用した。

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トゥルー・ノース
建国の父・金日成首席生誕祭のワンシーン。(『トゥルー・ノース(原題) / True North』より)

 それ程までの強い思いで制作に挑もうと思ったのは、清水監督自身在日4世にあたり、もし1984年まで行われていた在日朝鮮人の帰還事業に自分も参加していたら収容所送りになっていたのではないか? というわだかまりがあるからだという。清水監督によると「一説には、帰還者の2割は不条理な“スパイ容疑”で収容所に入れられたと聞きました。パラレルワールドではないけれど、もしかしたら収容所に入れられてしまったかもしれない自分を、救いに行くような感覚で作品を作りました」。

トゥルー・ノース
帰還した在日朝鮮人一家の思い出の一枚。しかし在日だったことがいじめの対象になるシーンもある。(『トゥルー・ノース(原題) / True North』より)

 物語の設定は1995年から現在まで描いており、エンドロールには航空から確認された実際の収容所の写真も使用されており、改めて本作で描かれていることが今現在の問題であることをわれわれに突きつける。清水監督が取材をしたところ、国際社会からの批判もあり故・金正日体制時代は一時期、収容所は縮小傾向にあったが、金正恩委員長になってから拡大傾向にあるという。また、米国総務省の2018年の報告によると、収容されている人数は8~12万人だという。

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 清水監督は「自分には政治的にどうすればいいのかはわからないが、無実の人が強制収容されている人権的なことは言いたい。ただ収容所の存在が、北朝鮮が現政権を保ち続けている要で、この罰則があるからこそ人々の行動を抑制し続けられている。本作を通してこの人権問題を多くの方に知ってもらった結果、1つの暴力、1人の収容者、1つの収容所が減っていくきっかけになれば、この映画を作った意義があると思っています」と力を込めて語った。

 清水監督は日本はもちろん、世界公開を目指して動き始めている。(取材・文:中山治美)

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