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トム・クルーズは何がスゴいのか?進化し続ける大スター

数々の逸話があるトム様。
数々の逸話があるトム様。 - Lionel Hahn / Getty Images

 『トップガン マーヴェリック』の大ヒットで、今また注目を集めているトム・クルーズ。彼は一体何がそんなにスゴいのか。トムのただ者じゃないエピソードを振り返る。

とにかくカッコいい年代順トム・クルーズ【フォトギャラリー】

 そのスゴさを証明するのが、トムの休日の過ごし方。トムには休日がない。『トップガン マーヴェリック』のプレスツアーで、休日には何をしているのかと尋ねられたトムは「僕は休日を取らない」ときっぱり。「今日が僕の休日だ。なぜなら撮影していないからね」。そのうえ、撮影も彼にとって仕事ではない。「僕にはオフの日はないんだ、ラッキーなことに。僕は撮影のセットで生きて世界中を旅することは、僕がずっとやりたかったことだから、仕事じゃない。僕は夢を生きているんだ」。そうきっぱり断言するスターが、彼以外にいるだろうか。

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 そんなトムだが、実は幼い頃からの苦労があった。7歳で難読症だと診断され、イジメにもあい、何度も転校しているのだ。難読症(dyslexia。失読症、識字障害などとも訳される)とは、知的能力や理解力には異常がないのに、文字の読み書きが困難な症状のこと。俳優になったばかりの頃もこの症状のため脚本を読むのが難しく、セリフを覚えるためにテープに録音してもらっていた。トムは後に、1987年に結婚した最初の妻、女優ミミ・ロジャースの紹介で入信したサイエントロジーの教授法“勉強の技術”を実践することで、やっとこの症状を克服したと多くのインタビューで語っている。努力によって自分を変えていくこと。それが、現在のトム・クルーズを作ってきたのに違いない。

 そのストイックな姿勢が『トップガン』の頃から変わっていないことは、同作の共演者ヴァル・キルマーが彼の自伝「I’m Your Huckleberry(原題)」でも書いている。撮影中のヴァルやほかの共演者たちは、毎晩、お祭り騒ぎを楽しんだのに、トムはそれに参加したことがなかったそう。その理由をヴァルはこう書いている。「それは、トムが、撮影第1日から、一つの目標を持っていたからだと思う。それは映画史上最高のアクション・ヒーローになることだ。彼の決意は称賛に値するが、もっと素晴らしいのは、彼がその決意を実現したことだ」。

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 この『トップガン』の頃から、もう一つ、トムが貫いているのは、“スタントは自分でやる”という姿勢。『トップガン マーヴェリック』でも超過激な重力に耐えて戦闘機を操縦して話題を集めた。これまでも『ミッション:インポッシブル』シリーズで、上空7,620メートルから落下したり、時速400キロ以上で飛ぶ機体のドア外部にはり付いたりする姿を披露している。

 また『トップガン マーヴェリック』効果で、飛行機パイロットとしての腕に注目が集まりがちだが、トムはバイクや自動車のドライバーの腕もセミプロ級。ドリフト走行は、元レーサーで現在はスタントドライバーのポール・ダレンパックの指導を受け、2011年にはカリフォルニアのレースウェイで本物のF1マシンを運転している。

 しかも、トムが自身でやっているのは体力系スタントだけではない。『ハスラー2』でビリヤードの名手にふんするために1日12時間もビリヤードを練習したり、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』では古典文学を音読して発音を鍛えたり、『ワルキューレ』ではドイツ人将校を演じるためにドイツ語を学んだりと、努力の人なのだ。

 さらに俳優トムだけでなく、敏腕プロデューサーとしても活躍していることにも注目だ。今でこそ、人気スターがプロデュース業に進出するのは当たり前になったが、トムはその先駆者的存在。トムが製作業に興味を持ったのは、『トップガン』の頃。同作のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーは、当時トムに映画の製作面について熱心に質問され、それに答えたと語っている。トムは1993年にポーラ・ワグナーと共同で自身のプロダクション、クルーズ/ワグナー・プロダクションズを設立し、『ミッション:インポッシブル』でプロデューサー業に進出。以後、俳優トム・クルーズの進むべき道を、彼自身がプロデュースし続けている。

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 トムの共演者たちへの心配りとしてプレゼントするケーキも有名。彼はカリフォルニア州のドアンズ・ベイカリーのホワイトチョコレート・ココナッツ・バンド・ケーキ、別名“クルーズ・ケーキ”を頻繁に友人たちへプレゼントしている。『トップガン マーヴェリック』の共演者たちが撮影中に贈られたのもニュースになったが、このケーキは現在の出演者だけでなく、かつての共演者たちにも毎年の誕生日に贈られ続けている。ケーキは共演時にはまだ子役だった、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のキルスティン・ダンスト、『宇宙戦争』のダコタ・ファニングにも。ダコタはタイム誌のインタビューでこのプレゼントについて「11歳の時から届いている。18歳までかな、21歳までかな、と思っていたけど、まだ届いている。トムはすごく優しい」と語っている。仕事熱心なだけではなく、こういう心遣いができるのも、トム・クルーズのスゴさだろう。

 そんなトムが現在企画中なのが、宇宙で撮影する映画。タイトルやストーリーは未発表だが、NASAと宇宙開発企業SpaceXの全面協力により宇宙で撮影が行われる予定と発表されている。監督は、トムと『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『バリー・シール/アメリカをはめた男』で組んだダグ・リーマン。昨年9月にロシアが世界で初めて、映画の宇宙ロケを実施したため、こちらの企画は“世界初”ではなくなったものの、本年1月には、この企画の製作に参加する会社の一つ、英国のSpace Entertainment Enterpriseが、2024年12月までに映画などを撮影できる宇宙ステーション・モジュールを建設すると発表。トム・クルーズ主演で宇宙ロケと来れば、それだけで楽しみ。唯一無二の存在にして規格外な男トムは、60歳を迎えた今も、果敢に新しい挑戦を続けている。(文・平沢薫)

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