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ヒーローはなぜ赤い?仮面ライダーとアメコミはどう違う?作り手が徹底討論!

『破裏拳ポリマー』 - (C) 2017「破裏拳ポリマー」製作委員会

 「仮面ライダー」「スーパー戦隊」「ウルトラマン」シリーズなどで監督を務め、自らもスタントマンとして活躍したヒーロー界のレジェンド・坂本浩一と、さまざまなヒーローを含む玩具を手掛け、誰もが子供の頃に親しんだおもちゃのワクワクの想像主・野中剛が、ヒーローとはなんぞやという根本的なことから、日本とアメリカのヒーローの違い、はたまたヒーローはなぜ赤い? という疑問までを徹底討論! 作り手側から見るヒーローとは?(編集部・小山美咲)

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そもそもヒーローって何!?定義はあるのか?

写真左から坂本浩一監督、野中剛

Q:ヒーローとは何だと思いますか?

坂本浩一(以下、坂本):正義や大義名分は別として、見ていて否応なしに高揚感がわくもの。理屈ではなく本能でこみ上げてくるものあるものがヒーローだと思っています。

野中剛(以下、野中):付け足しで、あこがれられる存在であること。“ああなりたい”と思われるものではないでしょうか。

Q:ご自身にとってのヒーローとは?

坂本:9歳の頃にジャッキー・チェンの映画を初めて劇場で観て「この人みたいになりたい」と思ったのがきっかけで、体操や格闘技を始め、16歳でこの業界に入り、すべてジャッキーの影響でここまで来ています。僕にとってはヒーロー以上の神様みたいな存在です。

野中:「ジャイアントロボ」の主人公・草間大作ですね。大作少年はジャイアントロボがあって初めてヒーローとして成立するんです。ヒーローとは「あこがれられる人」と言いましたが、あこがれられる対象として、その人自身が強いとか正しいとかだけでなく、その人だからこそすごいことをやれているという事実を含めてあこがれかな。兜甲児(「マジンガーZ」の主人公)でもいいですけど(笑)。操縦者の方ですね。

ウルトラマンとウルトラセブン

Q:“ヒーロー”の定義はあるのでしょうか?

坂本:例えば仮面ライダーや戦隊ヒーローって子供たちが“こうなりたい”ってあこがれる存在。一方、ウルトラマンは“なりたい”よりも“見たい”という子供が多いと思うんです。自分も努力すればなれるのではという存在と、崇められるタイプのヒーローがいると思いますが、あこがれの対象であることは共通していますね。

野中:ヒーロー映画としては「無条件で誰かを助けたり、他人のために頑張るというのが物語の展開として絶対条件のはず」という意見を聞いたことがあります。

坂本:たしかにアメコミの作品は、『スーパーマン』や『スパイダーマン』など、人を助けるシーンが一種のクライマックスになっていますね。

野中:それにより、この人が正しいと全員が共感し、あこがれにつながっていくのかなと。もちろんダークヒーローと呼ばれる自分の私利私欲や復讐のために活動するヒーローも多くいますが、それでも今言ったような部分がないとヒーローとは言えないのではという気がしますね。

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日本の特撮ヒーローものとアメコミ作品はここが違う!

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』 - Marvel Studios / Photofest / ゲッティ イメージズ

Q:ただ、日本の特撮ヒーローは、誰かを“助ける”というよりも悪を“やっつける”というイメージがあります。

野中:先に悪者がひどいことをする場面を見せつけることで、そっちを倒せばこっちを守ったことが成立する構図ではあります。今の戦隊やライダーは閉じた世界で物語が展開することが多く、一般人が巻き込まれるシチュエーション自体が少ない。

坂本:世の中の表現方法の自由度がいろいろと変わってきていますからね。

野中:日本では先に怪人が○○作戦とかを実行しないといけない。痛い思いをした子たちが怪人を倒すことで助かるっていうところまでが一つのパッケージ。

坂本:そう考えると、日本とアメリカのヒーローは少し違うのかもしれません。アメリカのヒーローは人々を助けるシーンが見せ場となっていて、スパイダーマンも制御不能になったモノレールを止めようとしたり、スーパーマンも橋から落ちる車を止めるシーンがあったり……。

野中:アメコミ映画のラスボスが直接人々を先に苦しめることってあまりない。それが日本の特撮ヒーローものとはちょっと違うのかもしれません。

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仮面ライダーにスーパー戦隊、ウルトラマン…それぞれ違いはある?

Q:お二人は日本のあらゆるヒーロー作品に携わってきています。それぞれに特徴や違いはあるのでしょうか?

坂本:あるシチュエーションと台本がある上で、何を一番見せたいかという部分にこだわるので、仮面ライダーだから戦隊だからこうしなくてはというのは意識していません。作品のテーマの中で話が解決に行き着くためにこのヒーローが何をすることが一番かっこよく見えるのか、というのが重要なファクター。オートバイに乗ってやってきたり、キックで決めたりしたら仮面ライダーっぽいというお決まりのパターンはありますが、そこを意識するのではなく、テーマにマッチした一番の盛り上がり方をする演出をねらっています。

野中:僕のメインフィールドは、ヒーローそのものやスーツ、アイテム群、乗り物などのデザインなのですが、“テクノロジーの根源”を考えます。例えばメタルヒーローシリーズは、戦隊ものに比べるとリアル路線という大枠の決め事がありました。(画像:宇宙刑事ギャバン×海賊戦隊ゴーカイジャー)戦隊はわりと荒唐無稽のデザインでもOKだけど、メタルヒーローはもう少し理詰めというか実在し得るものの発展型というか。戦隊だと動物の顔がピストルにがばっとついていても平気だけど、これがウルトラマンになるとややこしくなって、M78星雲のテクノロジーとは? という(笑)。ウルトラマンでも逆に地球坊援軍が持っている武器はテクノロジックなもの。デザインのもとにある技術や文化を意識しながら作ることで差別化を図っているんです。

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ヒーローはなぜ赤い?

『破裏拳ポリマー』 - (C) 2017「破裏拳ポリマー」製作委員会

Q:ヒーローの“色”について意見を聞かせてください。ヒーローはなぜ赤なのでしょうか?

坂本:正義のイメージというよりは、子供が一番反応する色が赤だと思うんです。信号機も赤は“止まれ”だったり、強い印象を与えるのが赤。戦隊の赤がリーダーになっている理由の一つにそこがあるのでは。

野中:それは世界共通の認識だと思います。おそらくヒーローの始祖であるスーパーマンが生まれたときに、すでに赤・青・黄色の三原色が使われている。(画像:スーパーマン)さらに一番面積の多いマントは赤。それ以降もスパイダーマンなど赤を基調としたヒーローは生まれています。(画像:スパイダーマン)スーパー戦隊のルーツである秘密戦隊ゴレンジャーのアカレンジャーはたぶんもともとあった、赤いマフラーや赤いマントという構成要素によるヒーローデザインというのがベースになっていて、それを赤、青、黄色にばらして……とできていったんだと思うんです。その中で一番強い色が真ん中になるというのは自然なことだったのではないでしょうか。(画像:スーパー戦隊

坂本:日本だけであれば赤色のイメージをゴレンジャーの影響と考えるけど、世界的な傾向があると思うと、やはり赤が持つ特色なのかもしれませんね。

Q:一方でヒーローには“青い”イメージもあります。

野中:これは逆に日本的男の子っぽさなのではと思うんです。

坂本:日本は青のイメージこそゴレンジャーからきているのかもしれません。クールでちょっと斜に構えたキャラというか。アメリカは国旗の色が青を基調としているので、キャプテン・アメリカは青いじゃないですか。(画像:キャプテン・アメリカ)その国によって例えばアメリカだと緑が怪獣の色。ハルクやシュレックもそうですし、モンスターは緑が多いんです。アメリカのポスターを見るとゴジラも緑。日本ではそうじゃない。緑が怪獣というのがアメリカのお国柄で、青がクールなヒーローというのが日本の戦隊が植え付けたイメージなのかもしれません。

野中:日本では赤が女の子の色と言われた頃もありました。そのルーツってランドセルしかないんですよ。なぜか男子は黒、女子は赤のランドセルを買うのが当たり前で逆はありえないという時代もありました。

坂本:昔の魔法少女ものも、主人公は赤いイメージでしたね。『魔法使いサリー』のサリーちゃんも赤い服。

野中:今でこそ赤を女子カラーとは言わなくなったけど、日本にはそういう時代もあったなと。だけどもともと強い色だという意味で石ノ森先生らが男児向けのキャラクターにも積極的に使っていくわけですね。

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正義と悪、色の表現いろいろ

『バットマン vs スーパーマン』 - Warner Bros / Photofest / ゲッティ イメージズ

Q:ヒーローのデザインに傾向はありますか?

野中:いかにもヒーローっぽい、これが正義側だと視聴者に思わせるデザインにする場合と、わざとそうじゃない色を出していく場合があります。例えば、仮面ライダー響鬼みたいに紫っぽくて普通であれば悪役に見えるキャラクターがそういうねらいでとヒーローのこともある。画像:仮面ライダー響鬼(写真奥))それはバットマンと似た考えで、スーパーマンが正義を体現したような三原色なのに対し、当時のDCコミックスは復讐の鬼と化したダークサイドヒーローとしてバットマンを作り出しました。(画像:バットマン

坂本:悪と正義の表現に関して言うと、悪の方の合成で使う光線の色は紫が多いんです。紫のヒーローもいますが、悪者が発する光線は青とかよりは紫が多いんです。

野中:アメリカで働いて驚いたのが、紫が完全にガーリーな色だということ。戦隊にも紫色のキャラがいたり、ロボットの一部分に紫が使われたりすることがありますが、女の子っぽいので変えたいと言われたりする。アメリカの玩具やアパレルのデザインはピンクから紫までが完全に女の子向けなんです。日本だと紫はピンクとは別の色と意識するのをアメリカだと一気に紫までがガーリーな色として捉えられることが多い。でもやっぱり日本のヒーローものに限って言うと、どこかまがまがしさをかもしだす色ですよね。

坂本:戦隊ものにはゲキバイオレットや、キョウリュウバイオレットなど少ないながら紫のヒーローがいますが、初めからレギュラーにはあまりなりません。追加戦士として出てくることもありますが。やっぱり紫は悪サイドに使うことが多い気がします。

『破裏拳ポリマー』 - (C) 2017「破裏拳ポリマー」製作委員会

 そんな二人が監督、キャラクターデザインとしてタッグを組んだのが映画『破裏拳ポリマー』(5月13日公開)。「科学忍者隊ガッチャマン」などを生み出してきたタツノコプロによるSFアクションヒーローアニメをベースに、元ストリートファイターの探偵・鎧武士が正義の使者・破裏拳ポリマーとなり、悪と戦うさまをクールかつコミカルに活写する。ヒーロー要素を軸にいわゆるバディーものとしての親しみやすさと本格アクションの魅力とが調和した、誰もが楽しめる作風に仕上がっている。

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