二宮和也、家族の助けでこの仕事ができた『浅田家!』インタビュー

『浅田家!』

 映画『湯を沸かすほどの熱い愛』で高い評価を受けた中野量太監督の最新作『浅田家!』は、第34回木村伊兵衛写真賞を受賞した写真家・浅田政志の写真集「浅田家」「アルバムのチカラ」を原案にした、主人公・浅田政志と彼の家族の物語。家族全員を巻き込んでユニークな家族写真を撮る主人公を演じた二宮和也が、「監督が本当に見たいもの」を表現しようという思いで挑んだ本作について語った。

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重要なのは「一緒に何かを作ろう」という思い

『浅田家!』
撮影:浅田政志

Q:今回、浅田政志さんという実在の方を演じられましたが、どういう気持ちで挑まれましたか?

その人を演じる=その人に似ている、似ていないかというよりは、その人の周りや、周りで起こることを伝えるような役回りなので、実在の人を演じることに関してそこまで特別だという気持ちはなかったです。変な話、僕は浅田さんを演じていると思ってなかったんです(笑)。どちらかというと、家族というものに対しての向き合い方への意識の方が強かったかもしれないですね。

Q:脚本を読んだ際にはどんな印象を抱かれましたか?

方言があるんだなっていうのが一番大きかったです(笑)。津(三重県)の方言があるんだ、こういう人たちが出てくるんだ、東日本大震災が起こるんだという感じで、どちらかと言うと“目次読み”なんです。だからあまり文字を見ないというか、内容を見ないというか……。まず目次だけを追って大体の流れをつかむことが多いです。

Q:ストーリーを見ないんですね。

僕は基本的に監督にお会いして、お話をいただけた理由を伺って、そのお答えをいただいた時点で極端な話、物語自体が面白いか、面白くないかっていうのはあまり関係なくなるんです(笑)。実はそこにあまり重きを置いていなくて。「一緒に何かを作りたい」っていうことに関しての、気持ちの反応でしかないんです。「この話が面白そうだから出演したい」「自分が興味のある題材だから出たい」ということではなく、「この監督が自分に求めてくれているものは何だろう?」っていうのを、毎日現場で反応しながらやっていきたいと思った時に初めて動きます。これまでもそういったことが多かったかな。

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お芝居が上手い人に引っ張られて自分も上手くなる

『浅田家!』

Q:主人公・政志の“人間力”が非常に魅力的な物語ですが、二宮さんも兄役の妻夫木聡さんから「人たらし」と評されるなど、人を惹きつける魅力があります。

僕はあまり人との間に壁を作らない人間だから、そういう風に見えるのかもしれませんね。あとは若い人たちが大集合するような作品にあまり出演していなくて、昔からわりと年齢が上の方がたくさん出られている作品に出演することが多かったので、落ち着いてみえるのかな(笑)。自分より年下の方と接する時は「あの人いい人だったよ」っていろんな現場で言われたいから、気を遣っちゃうんです(笑)。今回はブッキー(妻夫木)も、平田満さん、風吹ジュンさん、(黒木)華ちゃんも、安心できるというか、落ち着く方たちばかりでした。

Q:出演を決めた理由の一つが、妻夫木さんとの共演だと伺いました。

そうなんですけど……僕は妻夫木さんのようにお芝居が上手な方に見つからないように生活をしてたんですけどね(笑)。上手な方と共演すると自分の粗(あら)が目立つので、あまり一緒にやりたくないっていうか、嫌だなって思っていました(笑)。

Q:妻夫木さんとは今回が初共演ですが、いかがでしたか?

バラエティーでは何度かご一緒していましたが、映画でもドラマでも共演したことはなかったんです。実際共演させていただくと、この言い方が合っているか分からないですが、いい意味で楽でした。お芝居が上手な方っていうのは助かります。自分も上手くなっているように見えるし、実際僕自身上手くなっていると思うんです。僕の持論なんですが、100m走を自分の母親と一緒に走るのと、(ウサイン・)ボルト選手と走るのではタイムが違ってくると思う。それと同じで、お芝居が上手な方と一緒にやると、必然的に自分も上手くなるんじゃないかと。

Q:引っ張られていくような感覚でしょうか。

僕は自分が引っ張るのは苦手なので、まだお芝居の経験が少ない方と共演すると自分がそっちに寄っていってしまう。でも今回みたいに上手な方ばかりが周りにいらっしゃると、自分も上手くなった気がして大見得を切れちゃうんですよね。

Q:実際の浅田家の方々ともご対面されたそうですね。

楽しかったですよ。ただ、僕がそこで見なければいけなかったのは、(家族の)関係性でした。普段このご家族がどんな風に会話しているのか、それを見ることができればよかった。僕らが作っているものは映画なので、その人たちの人となりを全てさらけ出すのはある意味よくないと思っていて、(フィクションである)映画だからこそ成立する家族、そこに本物のエッセンスをお貸し下さいっていう話なんです。だからそのまま似せる、というわけではありませんでした。浅田さんがお父さんやお母さんと話す時を観察していると、「本当に(ご両親が)好きなんだな」と見ていて分かるんですよ。義理のお姉さんがいる時といない時では微妙に話す内容や、立ち位置みたいなのが変わってくるな、とかね。そういうさまざまな面があると分かったうえで、政志というキャラクターを構築していく作業は、わりと人間味のあるものに落ち着きました。監督もこの家族の空気感をいろんな方に見てもらいたいという気持ちがあると思ったので、そのために頑張らなきゃと思いました。

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今の仕事をサポートしてくれた家族に感謝

『浅田家!』

Q:二宮さんご自身が家族に助けられたなと思うことはありますか?

一番は、家族がこの仕事をサポートしてくれたことだと思います。今思えば、中学校1年生の子供が毎日六本木に行って仕事をしているって、親はかなり不安だったと思うんです。親が送り迎えをしてくれていましたけど、帰りの時間も不規則で、毎日僕が帰って来る度に本当にホッとしていたような記憶があります。携帯を持つ前は途中で電話もできなかったし、仕事が長引いて帰りが遅くなったりしたら親は寝られなかっただろうなぁ。携帯は中3の頃に持たされた気がしますけど、今と違って地下では通じなかったですし(苦笑)。だから地下でも通じるように、途中から携帯とPHSの複合機を使っていました。懐かしいですね! そんな風に忙しい中サポートしてくれたことは本当にありがたいし、助けられたなと思います。

Q:虹のTシャツを着た家族の写真を撮影するシーンでは、涙の芝居が印象的でした。

僕はいつもキャラクターの感情論で走っていってるので、泣けるものは泣けるし、泣けないものは泣けないんです。もちろんやってみないと分からないんですが、そこはハッキリしている気がします。ただ(泣ける場合でも)我慢できるので、泣かないこともできます。あのシーンは泣くパターンと泣かないパターンを撮ったんですが、最初のテイクで泣かなかったのは、確か監督から特に指示がなかったからだったと思います。でも、なんか苦しいなって思って。2テイク目で監督から「泣いてほしい」とオーダーがあったので、そこはすぐ涙が出た気がします。感情をどこまで振り切れるかっていうことですし、ずっとお芝居で感情が入っている状態だから、泣いて下さいって言えば泣けるってことになるのかな。ずっと(役として)生活していた期間でもあったので、そういうアンテナがあったんじゃないかなと思います。

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中野監督の求めるものを高い精度で表現したい

『浅田家!』

Q:初タッグとなる中野監督の印象はいかがでしたか?

僕がこの映画に出演させていただいた理由の1つです! ある映画賞で僕は最優秀主演女優賞の発表をさせていただく立場だったんですが、華ちゃんが『リップヴァンウィンクルの花嫁』でノミネートされていたんです。結果、最優秀主演女優賞は(宮沢)りえさんで、その時の作品が中野監督の『湯を沸かすほどの熱い愛』だったんですが、僕はタイトルが難しいから(笑)『リップヴァンウィンクル』の読み方ばかりを練習していて、そちらに気を取られ過ぎて、確か『湯を沸かすほどの熱い“夏”』ってタイトルを言い間違えてしまったんです。本当に申し訳なくて、その後すぐに中野監督にお手紙を書いて謝りました。そしたら監督から「全然大丈夫ですよ」とお返事をいただいて、「よかったら僕の映画に出て下さい」って言ってくださったんです。だから僕は今回、監督からのご指示通りにやり切ろうというのを、最初から一貫して決めて臨んだんですよ(笑)。

Q:撮影現場では監督のリクエストに躊躇することなく、すぐさま応えていたと伺いました。

監督がどういうものを見たいのかっていうことを、なるべくパーセンテージを上げていかに具現化していけるかということにすべての焦点を絞っていたんです。僕の場合、長く撮影しているとどうしても甘えが出てくるものだから。例えば、「僕はこう思うんですけど」って言いがちになるのは、あまり難しいことはやりたくなくなって、自分のできる範囲だけで芝居をやっていこうとするからだと思っていて。引き受けた以上、俳優は監督の言うことを全部できる人たちだし、そういう俳優さんを監督も集めているわけですよね。なので、監督から言われたことで自分にはできないと思うようなことがあると、「僕はこう思う」ってなりがちですが、それは一切なしにしようと。できないかもしれないけど、とりあえず1回やってみよう、可能な限り精度を高くもっていこうと思ったんです。

Q:プロフェッショナルの思考ですね。

こういうやり方が僕は初めてだったから、難しかったです。これまではなんとなく濁したりしていたので(笑)。今回は「よし! やってみよう!」と思ったけど、やっぱり難しかったですね。もちろん、自分にとっては思いがけないオーダーもありましたが、今回はそうやるって決めていましたし、監督が意図していることを最大限にやって、なおかつ監督の思っている以上のものを提示したいなと思っていたので。そこまでいけたかは分かりませんけど(笑)。

Q:そうした挑戦への不安はありませんでしたか?

それが果たして僕にできるのか? と思いましたが、そう決めてしまったからしょうがない(笑)。僕はこれまでずっと名前を言い間違えられてきた人生なんですよ。ジャニーさんにもずっと「かずや」って言われてきましたし。うちの事務所には亀梨和也もいますしね(笑)。だから名前だけは言い間違えないようにしようってずっと思って生きてきたのに……本当にすみませんでしたという内容を監督の手紙に書きました。それとは別に出演させていただきたいなと思ったのは、お話の内容的に主人公1人だけがいい意味で突出したものではなかったから。家族の話ではあるけど、人との繋がりだったり、皆で頑張っていくものだったりもしたので、皆でディスカッションして生まれていく作品というよりは、監督の撮りたいもの、撮りたい画が決まっていて、それにどこまで皆が近付けるかっていうことなのかなと思いました。

Q:皆でディスカッションされる時間はあまりなかったのですか?

現場ではありましたよ。でも僕はずっと下を向いていました(笑)。基本的にどの作品でも僕は(ディスカッションには)参加しないで、まずはやってみないとなと思うので。その時やってみて意外と走れるなと思ったら、走っちゃうし。でも今回はそれよりも監督の真意は何だろうとか、監督が本当に見たいものは何だろうと、監督が何か言われるその言葉の先のものを考える日々でしたね。(構成:編集部・吉田唯)

映画『浅田家!』は10月2日より全国公開

映画『浅田家!』オフィシャルサイト

(C) 2020「浅田家!」製作委員会

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