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【ネタバレ注意】『TENET テネット』解説&考察:迷子にならないためには

お前わかった?

 日本でも大ヒット中のクリストファー・ノーラン監督の新作『TENET テネット』。全編にわたって謎がちりばめられ、1度観ただけでは理解しきれない本作のすべてを解説することは難しいが、迷子にならないためのヒントや、そのラスト等を考察する。(『TENET テネット』のネタバレを含むので鑑賞後にお読みください)
文:神武団四郎

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赤色と青色の意味は?

映画の中で、正常な時間軸=順行は赤、逆行は青で表示されている。この色分けで思い浮かぶのが、少年時代ノーラン監督が最も影響を受けた『スター・ウォーズ』シリーズ。同作では、正義のジェダイが青でシスは赤と設定されていた。ちなみに、主人公の“名もなき男”が高速ヨットで大海原を滑走するシーンは、宇宙を飛び回るXウィングをイメージして組み立てられた。セイターの高速ヨットの色は青だった。

映画会社のロゴ
ワーナー・ブラザースの“WB”ロゴは青地に黄文字がデフォルトだが、本作では赤一色。続くノーランの製作会社シンコピー・フィルムズ(SYNCOPY)のロゴは黒字に青と、本作のテーマカラー赤と青で塗られている。ちなみに『ダークナイト』はダークブルー、『インセプション』はモノクロ、『インターステラー』はセピア、『ダンケルク』ではグリーンなど、ノーラン監督は作品ごとに色やトーンを使い分けている。

逆行装置の部屋
逆行装置(回転ドア)は、赤でマーキングされた順行と青の逆行との両スペースが、ガラスで仕切られた部屋(=検証窓)に設置されている。赤側から順行者が回転ドアに入れば逆行になり(タリンで銃を持ったセイターが逆行するくだり)、青側から逆行者が入ると順行に戻る(オスロで黒い防御スーツの逆行男が装置に入り赤側から順行で走り出る)。

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逆行装置の仕組み

回転ドアを使うためにはルールがある。

ルール1:入る際は逆行(もしくは順行)する自分を検証窓から見たまま装置の中に入ること。でないと出られなくなる。

ルール2:逆行している時は、自分で肺に空気を取り込むことができなくなる。そのため外気の中にいる時は酸素ボンベが必要。酸素マスクをしていれば、それは逆行しているサインだ。装置の置かれた部屋が密閉されているのは、周囲の空気ごと逆行(順行)するため。

ルール3:装置に入ることで、順・逆ふたりの自分が同時に存在してしまう。過去の自分と直接ふれ合うと粒子の対消滅が起こるため、接触する可能性がある時は、防御スーツなどで全身を覆うことが必要。

ルール4:熱力学の作用によって熱の反転が起きる。そのため燃えさかる炎は冷気になってしまう。

時間の流れ

『TENET テネット』で描かれている現象は、タイムリープのように時間軸A点からB点へジャンプするのではなく、時間を遡ること。劇中では時間経過の描写は省かれているが、1週間前に戻るには、1週間逆行し続けなければならない。これさえ押さえていれば迷子になりにくいはず。なお目的の時間に着いても、再び装置に入らないと順行に戻れない(逆行し続ける)。

逆行装置はどこにあるのか

1)オスロのフリーポートにあるロータス社の施設。名もなき男とニールがたどり着く部屋だ。ちなみにロータスはセイターの会社で、RotasはSatorの回文。

2)タリンのフリーポート。セイターが、キャットを人質に名もなき男にケースの中身の隠し場所を迫った場所。オスロより装置の規模が大きい。

3)アイヴス率いるプリヤの私設部隊の拠点である大型船ヴァイキング号。最終決戦に向かう名もなき男たちが逆行する(順行に戻る)。装置の形状は3つの扉が並び、左右ではなく上下に回転するスロットマシンタイプ。床がガラス張りになっており、ここから逆行(順行)する自分を確認できる。

4)スタルスク12の廃墟と化した建物の中にある。こちらも3つの装置がガラスで覆われた通路の先に併設されており、大量の兵士が次々に逆行(順行)していた。

時間の挟み撃ち作戦とは

・セイター:高速道路
輸送車からプルトニウム241が入ったケースを奪った名もなき男とニールのBMWの前方から、セイターのアウディが接近。キャットを人質にケースを受け取りベンツに乗りかえて走り去った。セイターは逆行装置を使って未来の情報を知り計画を実行。ケースが空だと知ると、名もなき男を拘束して情報を得た後、過去に行きケースの中身を入手した。

・主人公たち:戦場
クライマックスの合戦は、腕に赤いマーキングをした順行チームと、青い逆行チームが時間軸の前後から挟み込む。すでに敵の攻撃を体験した青チームの情報をもとに、赤チームが攻撃地点を見極める。

セイターの兵との最終決戦に挑むアイヴス率いるプリヤの私設部隊。彼らはアルゴリズムを奪取するため、大爆発を基点に、赤チームが10分間前から、青チームが10分後から作戦を展開。前後からの10分間(Ten)の挟み撃ちという文字通り“TENET”作戦だ。アイヴスと名もなき男の使命は、戦いに紛れて地下核実験場に潜入し、アルゴリズムを奪還すること。

主人公たち:名もなき男とニールの壮大な作戦

インドで名もなき男の前に現れたニールは、すでに彼の飲み物の好みを知っていた。その後も彼は、名もなき男の要望を楽々と遂行する。実はこの作戦は、未来の“名もなき男”が考えたもの。ニールは、“過去のボス”をサポートしていたのだ。つまりセイターの野望を砕くミッション自体が、ニールと未来の名もなき男による大がかりな挟み撃ち作戦といえる。ではニールは未来でミッションを受けて逆行してきたのか、それとも、過去に逆行してきた名もなき男にリクルートされたのか、その素性は明かされない。もし未来から来たとすれば、キャットに関係があるという考察も。ニール役のロバート・パティンソンが、わざわざ髪を染めていることも関係あるのだろうか?

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セイターが現在と未来をつなぐ役割を得た理由

セイターが行っていたのは、未来で作られた、世界各地にちらばる9つのアルゴリズム(数値を物質化したオブジェ)を集めること。パーツを集め数値化すると人類が滅亡の危機に瀕するため、開発者はそれらをプロトニウムに偽装し核施設に隠していた。

アルゴリズムを狙う未来人がセイターに目を付けたのは、核施設を数多く保有していたソ連が崩壊する時期に、彼がプルトニウムを掘り出す仕事をしていたから。未来人から送られてきた契約書と金塊を目にしたセイターは、富と権力を独占するため仕事仲間を殺害。イギリスに渡り新興財閥として成功を収めた。

ラストのニールの運命

アルゴリズムを奪還した名もなき男とアイヴスを、間一髪で救出したニール。しかしその後も、ニールにはまだ仕事が残っていた。その数分前、地下核実験場で名もなき男がアルゴリズムを奪うのを手助けした謎の男性がほかならぬニールだったのだ。鍵開けが得意な彼は、名もなき男と別れを告げた後、過去に行って、名もなき男を阻んだケージの鍵を解除。彼をかばうように銃で撃たれてしまう。

ラストシーンの意味

すべてが終息した後、フィクサーであるプリヤは事情を知りすぎたキャットを始末すると考えた名もなき男。彼はキャットとの別れ際に携帯を渡し、気がかりなことがあったらメッセージを残すよう伝えた。その記録を聞いた名もなき男は、時間を逆行してキャットを襲う前にプリヤを暗殺した。

映画『TENET テネット』は全国公開中
(C) 2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved

※初出時の情報の一部に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。

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