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「俺の家の話」長瀬智也&宮藤官九郎、名コンビの歩みを振り返り!

(C)TBS

 テレビドラマと映画で、お互いの節目節目に組んできた俳優・長瀬智也と脚本家・宮藤官九郎。最新作となる連続ドラマ「俺の家の話」が、22日から放送スタート。同作は、4月1日にジャニーズ事務所を退所する長瀬にとって、大きな節目の作品。TOKIOのメンバーとして、幅広い分野で活躍してきた長瀬だが、俳優としての力を最も引き出してきたのが、宮藤の脚本や監督・演出作品と言っても過言ではない。そこで、宮藤作品で引き出されてきた長瀬の俳優としての魅力と共に、稀代のコンビの軌跡を振り返ってみた。(天本伸一郎)

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「IWGP」で長瀬のワイルドな魅力がさく裂!記念すべきコンビ第1作

 1993年の連ドラ「ツインズ教師」で俳優デビューした長瀬は、1996~2005年まで連ドラとSPドラマが放送された青春ドラマ「白線流し」シリーズや、山田太一脚本の1997年の連ドラ「ふぞろいの林檎たちIV」などで、実直かつ無骨な青年や正統派の二枚目を演じていた。そして、2000年の主演ドラマ「池袋ウエストゲートパーク」で、長瀬は初めて宮藤脚本作に出演することになる。当時の宮藤は、演劇界では注目されていたものの、映像業界ではまだ単発の深夜ドラマを数本手掛けた程度の実績しかなく、初のゴールデンタイムの連ドラ脚本全話を一人で手掛けるというのは、大抜擢だった。

 同作は、石田衣良の人気小説を原作としつつも、キャラクター設定を大胆にアレンジ。長瀬をはじめ、窪塚洋介佐藤隆太山下智久妻夫木聡など勢いのある若手俳優たちによる青春群像が、堤幸彦らの遊び心に溢れた演出と相まってカルト的な人気を博し、2003年には続編SPドラマも放送された。本作で、正義感が強く仲間の面倒見がよい主人公の真島誠を全力で演じた長瀬は、そのワイルドな魅力を開花。バラエティー番組などを見て感じていた長瀬の豪快でスケールの大きい印象をイメージして書いたという宮藤の脚本により、三枚目的なユーモアも加味された主人公は人間味にあふれ、長瀬にとっても二枚目アイドル俳優といったパブリックイメージを打ち破る転機の作品となった。また、本作のプロデューサーだったTBSの磯山晶は、以降も長瀬と宮藤と組み、最新作「俺の家の話」に至るまで、数々の名ドラマを生み出していくことになる。

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長瀬、宮藤の監督デビュー作で同性カップルを好演

「真夜中の弥次さん喜多さん」DVD:2,800円/Blu-ray:3,800円(税抜)発売中 発売元:アスミック・エース 販売元:TCエンタテインメント(C)2005YAJI×KITA

 同作は宮藤にとっても名刺がわりとなり、初の映画脚本を手掛けた2001年の映画『GO』でも各映画賞の脚本賞を受賞するなど、人気脚本家として活躍。舞台演出も手掛けていた宮藤は、2005年に『真夜中の弥次さん喜多さん』で映画監督デビューすることになり、その主演に選んだのが長瀬だった。原作は、十返舎一九の滑稽本「東海道中膝栗毛」を基に、しりあがり寿が独自の世界観で描いた漫画。長瀬演じるワイルドな弥次さんと中村七之助演じる薬物中毒の喜多さんがお伊勢参りをしようとするロードムービー的なコメディー時代劇で、長瀬は同性カップルという難役に挑んだ。宮藤は、本作で組むまで長瀬とじっくり話したことはなかったそうだが、原作の絵柄をいい意味で裏切るためと、全力の直球の芝居で喜多さんへの愛情を表現できる役者として、長瀬しかいないと直感したという。

高い評価を受けた「タイガー&ドラゴン」「うぬぼれ刑事」

「タイガー&ドラゴン」DVD-BOX:20,900円/Blu-ray BOX:31,200円(税抜き)発売中 発売元:TBS 販売元:ポニーキャニオン(C)TBS

 同年2005年には、SPドラマを経て連ドラ化された「タイガー&ドラゴン」でも、長瀬が主演、宮藤が全話の脚本を務めた。「池袋ウエストゲートパーク」の長瀬と「木更津キャッツアイ」の岡田准一という、宮藤&磯山プロデューサーコンビの代表作に主演した二人がダブル主演を務め、長瀬がヤクザから落語家に転身しようとする山崎虎児、その師匠の息子で落語家を廃業した谷中竜二を岡田が演じた。毎回の劇中の出来事が落語の噺と交わる巧みな構成の1話完結のコメディーである同作は、ドラマとしての完成度が非常に優れており、第43回ギャラクシー賞のテレビ部門大賞を受賞するなど高い評価を受けた。

「うぬぼれ刑事」DVD:22,800円/Blu-ray:28,800円(税抜)発売中 発売元:TBS 販売元:TCエンタテインメント(C)TBS

 次に長瀬と宮藤が組んだ2010年の連ドラ「うぬぼれ刑事(でか)」は、脚本家としての宮藤にとって初の刑事ドラマで、連ドラを手掛けて10年目と10作目の節目にもあたる。長瀬演じる恋愛体質でうぬぼれの強い刑事が、犯人の女性に一目惚れしながら事件の真相に迫り、逮捕か、罪を見逃す代わりに結婚を迫るという1話完結のコメディーで、最終話まで本名が明かされない主人公は、毎回全力で一目惚れし、全力でふられることになる。本作の脚本により第29回向田邦子賞を受賞した宮藤は、チーフ演出家としても1~2話と最終話の演出を務めており、脚本・演出の双方で、俳優としての長瀬の魅力を最大限に引き出している。

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この2人でしか生まれない痛快ロックムービー

「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ 通常版」DVD:3,800円(税抜き)発売中 発売元:アスミック・エース 販売元:東宝(C)2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. / Otonakeikaku Inc. / KDDI CORPORATION / GYAO Corporation

 宮藤の映画監督第4作、2016年の『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』で長瀬が務めたのは、地獄農業高校軽音楽部顧問で、ロックバンド“地獄図”(ヘルズ)のリーダーである主人公の赤鬼・キラーK。事故で亡くなるも、なぜか地獄に落ちてきてしまった高校生(神木隆之介)を、現世に戻すため指導することになる。『スクール・オブ・ロック』(2003)のような痛快な音楽映画を作りたかった宮藤は、同作主演のジャック・ブラックに匹敵する存在感があり、芝居と音楽の双方ができる主役は、長瀬しかいないと考えたという。互いに音楽好きでバンドを組んでいる二人にとって念願のロックムービーで、内容的にも役柄的にも、互いの存在がなければ実現不可能だった作品だろう。

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ジャニーズ退所直前の重要な一作「俺の家の話」

 こうして約5年周期で組んできた長瀬と宮藤の最新作が、連ドラ「俺の家の話」。長瀬が演じるのは、能楽のある流派の宗家の長男として生まれながらも、17歳で家出してプロレスラーになった主人公・観山寿一。父が脳梗塞で倒れたことから、その介護と後を継ぐためにレスラーを引退するも、父が介護ヘルパーの女性と婚約して遺産を譲ると宣言したため、騒動が巻き起こる。長瀬と西田敏行が、「うぬぼれ刑事(でか)」に続いて親子を演じるだけでなく、過去作を連想させるような設定、戸田恵梨香永山絢斗桐谷健太荒川良々平岩紙三宅弘城ら宮藤&磯山コンビのドラマに出演してきた俳優陣がメインキャストを務めており、長瀬&宮藤&磯山トリオの集大成的作品であることを感じさせる。

 宮藤は「池袋ウエストゲートパーク」が、幅広い評価と自身の手応えの双方を得ることができた最初の作品であることから、その主人公を演じた長瀬が自らの基準の一つとなっていることや、長瀬は連載漫画の主人公のような存在でもあるため、何度でも描きたいと思わせてくれる俳優であることを公式コメントや以前のインタビューなどで語っている。そして長瀬も、自らのターニングポイントとなる代表作で組んできた宮藤は、多くを語らずともお互いのやりたいことがわかり合えて、自分の思いを最も発散でき、常にワクワクさせられる存在であることを、これまでのインタビューなどで明かしている。

 硬軟織り交ぜさまざまな役柄を演じてきた長瀬だが、主に宮藤作品によって引き出された、熱い心を持ち全力で生き抜こうとする愛すべき“バカ”という役柄は、ハマリ役の一つとなった。長身で思い切りのいい芝居ができる長瀬には、国際的にも活躍できそうなスケールの大きさがあり、俳優としてさらなる活躍を期待したいが、今後については裏方として新しい仕事の形を創り上げていくことが発表されている。「俺の家の話」は、磯山プロデューサーが長期にわたって相談してきた長瀬本人の思いも詰まっていて、宮藤とも現時点の長瀬の最高傑作を作ろうと話し合って生まれた作品であることを公式コメントで明かしており、俳優・長瀬の記念碑の一つとして見逃せない作品だ。

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