老いは怖いもの？理想の最期を考える
映画たて・よこ・ななめ見！
ジブリで宮崎駿監督の出待ちをしちゃうほど映画大好きな村本大輔と、映画に関しては素人同然の中川パラダイスが、あらゆる角度からブッ飛んだ視点で映画トーク。今回のテーマは、映画『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター役で知られるアンソニー・ホプキンスが、アカデミー賞主演男優賞を受賞した映画『ファーザー』。老いによる思い出の喪失をリアルに描いた映画に、生涯独身を宣言している村本の反応は!?（取材・文：森田真帆）
今回の映画は、5月14日公開の『ファーザー』です。
世界中で上演された舞台を映画化したヒューマンドラマ。年老いた父親が認知症を患い、次第に自分自身や家族のことも分からなくなり、記憶や時間が混乱していく。原作を手掛けたフロリアン・ゼレールが監督と脚本を担当し、『羊たちの沈黙』などのアンソニー・ホプキンスが父親、『女王陛下のお気に入り』などのオリヴィア・コールマンが娘を演じ、『SHERLOCK／シャーロック 忌まわしき花嫁』などのマーク・ゲイティスや、『ビバリウム』などのイモージェン・プーツらが共演する。
リアルすぎて老いていくのが怖くなった！
中川パラダイス（以下、中川）：怖かったわぁ。なにこの映画。ホラー映画よりも怖い。
村本大輔（以下、村本）：アンソニー・ホプキンスの演技やばすぎたわぁ。認知症になる実体験ができた気がする。
中川：年取るのが急に怖くなった。今までは認知症のおかんとかおとんを介護する映画があったけど、実際に自分が認知症になったら、こんなに切なくて苦しいんやろなぁって、めっちゃ思ったわ。
村本：伏線回収系のサスペンスかと思ってたら、いやほんまにボケとっただけかーい！ ってゆーな。
中川：途中の段階は分からんかったけど、そういうことなんや！ と思った。そんで思ってん。あと40年でこうなるんやっていう。ボケるってほんまに怖いわ。これアカデミー賞主演男優賞受賞ってさ、つまりあのお父さんを演じてる人はボケてないんやもんな。実際ボケてない人があそこまでボケた演技すんだからすごいわ。
村本：黒田征太郎って知ってる？ その人、82歳やねんけど若い彼女がいてさ。82歳で黒田さんみたいな人もいるし、この映画の主人公みたいにボケちゃう人もいるわけやし、オレはじいさんになったらどうなんねやろって思ったね。
中川：脳トレしてたらボケへんのかな？ 黒田さんはアーティスティックやから右脳とか使いまくってんちゃう？
村本：やっぱセックスしまくらなあかんの違う？
中川：それ考えたら、何かを諦めた瞬間にボケが始まるのかもしれへんな。でもさ、坂田利夫師匠とかずっとやってるけどボケてはるやん。今はコロナ禍っていうこともあって、舞台とか控えてるのもあるかも知らんけど、前は認知症の状態でも舞台に上がってましたよ。
村本：ほんまのボケもあるってことや（笑）。みんなわざとだと思ってるけど、坂田師匠はほんまやからな。
中川：セリフ飛んだりするけど、周りの人がツッコミ入れてなんとかしてる。ツッコミ入れて「え？」って顔したら、今忘れてたんやなってなんねん。坂田師匠独身やから、四六時中一緒におって会話する人が少なかったとかもあるかも。一番僕がいいと思った、行き着いた答えは、周りから「ボケた」って言われたら、自分でもそのことを認められるようになりたいね。まぁ、でもそれに気づけんから認知症なんかな。
老後どうしたい？
村本：今回しっかり考えたね、パラ。
中川：考えたよ。だって怖いもん。普段、嫁からも「あんたがボケても介護なんかせんからな！」みたいなこと言われてるねん。僕はボケたら終わりやっていう恐怖心があるから、ボケたくないし人に迷惑かけたくないって思ったね、今回。
村本：さっきニュース見ててさ、見守りカメラってのがあって、函館のヘルパーが介護してるおばあちゃんの財布からお金とったん。それを仙台で見てた息子さんが通報したと。そういうシステムあったらいいよね。オレは誰もおらんから、老後はファンの人10人くらいに介護してもらおうと思ってんねん。
中川：僕たちのファンなんてみんな同い年くらいやん。そんなん老老介護になるよ。
村本：「さっき介護しましたよ？」ってお互い忘れてるみたいな（笑）。そうやわー、オレのファンなんてみんなババアになるやん。忘れてたわ！
中川：僕は施設に入りたいわ。ヘルパーさんとかの安心感あるし、慣れてる人多いやろし。子供に面倒見てもらうのは、大変やろなーって気持ち。どうせ迷惑かけるなら、慣れてる人に迷惑かける方がいいかなって思う。
村本：ハリウッド映画とかでも出てきそうやけど、家族団らんでさ、孫たちに見守られながら老衰していくのあるやん。誕生日祝われながら家で死ぬっていう……それがいいよな。
中川：そんなん結婚せな実現せんやん（笑）。
村本：あ、ほんまや！ 確かに……。どうしよーーー（叫）！！！
中川：20年後、ああなってるかもっていう恐怖感よ。
村本：まぁね。いつか死ぬの怖くなくなるんかなー。
中川：身体中痛くなったりしたら、もう死ぬほうがましって思うんじゃない？ もうええわってなりそう。
村本：漫才するしかないな。もうええわ！ って言って死ぬねん。
中川：もう無理ー！ って言って、そのまま飛び降りるわ。
村本：そしたら、ありがとうございましたって言えやー！ っていうわ（笑）。
村本の老後が心配
村本：うちのおとんも最近体壊してから急に老けてね。もうオレもパラダイスも59歳くらいで癌で死ぬんじゃない？ ボケる前に（笑）。
中川：この映画観るとやっぱり病気で死にたいって思ってしまう。そんくらい強烈やった。でもなぁ、癌が大きくなったら神経圧迫して痛みも常に出るやろし。進行を抑えるためにしんどい薬とか飲まなあかんし大変やで。
村本：オレはもう老衰一択や。眠るように死にたい。
中川：いや、みんなそうやねん、求めてんのは！ 村本さんみたいな風に言ってる方が苦しんで死ぬと思うわ。
村本：腹上死がいい！
中川：なんか家族持ってない村本の老後が本当に心配になったわー。ファーザーじゃなくて、映画『ロンリー』っていうのになりそう。
村本：いやいや『コメディアン』でええやろ！ でも娘と娘の彼氏とちょっと言い争いになるのはしんどかったなぁ。オレはそうなるのが嫌やねん！ 親戚とかから散々「誰がお父さんの面倒見るねん」とか言われ続けたら子供はたまらんやろ。「お前はなんのために生まれてきたのか？ 私を介護するためだ」とかなるやん。田舎あるあるで、結婚した子供は親に実家の横の土地買って、そこに新婚で住まわされるっていう。車も買ってあげて……はい、次は私たちの番ね！ っていう。
中川：たしかになぁ、親からしたらそのつもりで育ててた子供が18歳くらいで、オレはお笑い芸人になる！ って東京行かれたら、親からしたらどこで間違えたんやーってなるもんな（笑）。
村本：三男は「自衛隊になる」って言って今自衛隊になってるけど、親父は「国守るよりオレ守らんかい」って思ってるやろな（笑）。次男は瓦屋で人柱になってくれてるよ。挙げ句の果てに、長男のオレはアメリカ行くって言ってねんから（笑）！
中川：せめてお金だけでも。
村本：コツコツと仕事しよ。アメリカに行っても、この連載死ぬまで続けてよ。じーさんなってもばーさんなっても。「これはこの前観たんじゃねーかい？」なんて。シネマトゥデイさん、あと50年はこの連載続けてー！
※記事内容には個人の意見が含まれています。
『ファーザー』5月14日公開
映画『ファーザー』公式サイト
(C) NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020
ウーマンラッシュアワー・プロフィール
2008年に結成された、村本大輔と中川パラダイスによるお笑いコンビ。2011年「ABCお笑い新人グランプリ」最優秀新人賞受賞、2012年「THE MANZAI 2012」決勝進出、2013年NHK上方漫才コンテスト優勝など数々の賞に輝き、4月に東京進出。「THE MANZAI 2013」で見事優勝し、3代目王者に輝いた。
村本大輔
1980年生まれ。福井県出身。自分でも「ネットに書き込まれるうわさはほとんどが事実です！」と認めている、自称・ゲス野郎芸人。だがその一方で、ジブリ作品やピクサーなどの心温まるアニメが大好きで、映画『あなたへ』で号泣するほどのピュアな一面も持ち合わせる大の映画好き。水産高校に通っていたため（中退）、お魚系や海洋ネタにも意外に詳しい。
中川パラダイス
1981年生まれ。大阪府出身。これまで10回もコンビ解散している村本と唯一トラブルもなくコンビを続けている広い心の持ち主。2012年に入籍し、現在1児の子育てを満喫中のイクメンパパでもある。映画に関しては、「王道なものしか観ない」というフツーレベル。
