マット・デイモン&ベン・アフレックはやっぱりすごかった!『最後の決闘裁判』最速レビュー

 名作『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の脚本でアデミー賞脚本賞を受賞し、無名の俳優から一夜にしてアメリカンドリームを手にしたマット・デイモンベン・アフレック。トップスターの道を歩み続ける2人が、24年ぶりに脚本でタッグを組んだのが、名匠リドリー・スコット監督の歴史大作最後の決闘裁判だ。長い時を経て、ハリウッドの最強コンビを魅了した物語は、フランス史に残るスキャンダルに隠された残酷な現実と、謎をめぐるミステリー大作だった!

ハリウッド最強コンビ24年ぶりのタッグ!

ハリウッドを代表する仲良しコンビ! マット・デイモン&ベン・アフレックFrazer Harrison / Getty Images

 マットが10歳、ベンが8歳のころから親友同士で、高校時代から演劇の舞台に立ってきた2人。俳優を夢見て青春をすごした彼らの名を一躍広めたのが、1997年公開の青春映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』だ。マットがハーバード大学在学中に書いた草稿を基に2人で仕上げた脚本は、紆余曲折を経て映画化。アカデミー賞(脚本賞)を受賞すると共に、心に傷を負った天才青年ウィル(マット)と彼を広い世界へ送り出そうとする親友チャッキー(ベン)を演じた2人は、俳優としてもブレイクを果たした。

 その後、数多くの話題作でキャリアを積み、プロデューサーとして、映画監督としても才能を発揮したマットとベン。しかし、オスカー受賞から24年、2人が脚本家として共にクレジットされることはなかった。そんな彼らを魅了した物語こそ、『最後の決闘裁判』の原作となる、史実であるノンフィクションだ。

自らの脚本で主演を務めたマット・デイモン

 原作のベースとなった事件は、中世フランスで性的暴行被害を訴えた女性の夫と、女性を暴行した罪で訴えられた容疑者による命がけの戦い。信じられないことだが、この時代は決闘の勝ち負けによって有罪無罪が確定する裁判も存在していたのだ。この決闘は、フランスで合法的に行われた最後の決闘として、歴史書に記録されている。

 マットとベンは、ただ史実を追うのではなく、男たちの歴史に記されていない、女性の目線を取り入れた3幕構成の物語を構想。夫と容疑者の物語を2人で書き、当時、社会的に立場の弱い妻・女性の目線で描く第3幕では女性監督のニコール・ホロフセナーに脚本を依頼。三者三様の目線から紐解く、共同作業でしか成しえない物語を生み出した。

世紀のスキャンダル!衝撃の歴史ミステリー

夫の敗北=火あぶり……勇気を振り絞って訴えを起こすマルグリット

 「決闘裁判」とは、解決が見えない争いの決着を決闘に委ねる裁判のこと。神が正しい者を勝利に導くという考えに基づく制度で、大ヒットファンタジー「ゲーム・オブ・スローンズ」でもその様子が描かれている。ドラマでは代理闘士の戦いが中心だったが、『最後の決闘裁判』では、妻のマルグリットを暴行された騎士ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)と、彼の旧友で容疑者のジャック・ル・グリアダム・ドライヴァー)が決闘に臨む。

 数々の戦場を渡り歩くカルージュは騎士として国王に忠誠を誓っているが、直属にあたる領主ピエール伯には、その実直で不器用な性格のせいかうまく立ち回れず嫌われるばかり。一方、色男で教養もあるル・グリは領主に気に入られ、出世街道まっしぐら。カルージュは父から受け継ぐはずの地位や土地までル・グリに奪われたうえに、妻まで暴行されてしまい自尊心はボロボロだ。女性の尊厳を問うはずの裁判は、彼女の望まぬ決闘へと発展し男たちの地位や名誉をめぐる代理戦争の体を成していく。

ル・グリ役のカイロ・レン俳優アダム・ドライヴァー。世紀のミステリーが三者三様の視点で描かれる

 しかし事は、彼らの殺し合いだけに済まない。夫が負ければマルグリットも偽証の罪に問われ、裸で吊るされ火あぶりの刑に処されることになる。その刑罰は、数十分かけて罪人をじりじりと焼き殺すという残酷なものだ。当時、女性への性暴力は極刑に値したが、家の評判が重んじられた時代にあって、被害者は口をつぐむことがほとんどだった。特に結婚した女性は、後見人である夫を通さねば訴えを起こすこともできなかった

 己の地位と名誉をかけて決闘に挑むカルージュと、自らの無実と正義を押し通すル・グリ。そして、決闘に酔う男たちを横目に、理不尽に受けた暴力を訴えることと引き換えに命をかけなくてはならないマルグリット。証言者によって事件の様相は全く異なり、まさにリドリー・スコット版『羅生門ともいうべき物語が展開する。3幕構成によって、女性を男の所有物のよう見ていた時代に生きる男たちの名誉と意地の世界と、マルグリットが生きる現実との乖離はより克明となり、女性の権利や人権をそっちのけにして物事が進むという展開は、#MeToo運動に揺れる現代にも通じるテーマを浮き彫りにしていく。女性監督のニコール・ホロフセナーを脚本に加えたマットとベンの客観的視点は、さすがである。

豪華キャストの演技合戦!

放蕩領主のピエール伯をベン・アフレック(右)が好演!

 主演のマットは、人懐っこい笑顔を封印して、勇猛だが荒々しく身勝手な一面を持つ騎士カルージュを熱演。ル・グリ役のアダム・ドライヴァーは、『スター・ウォーズ』のカイロ・レン役から一変、女性好きで世相に明るい色男を時に雄々しく、時にチャーミングに演じる。

 カルージュの妻マルグリット役を務めるのは、ゲームの世界が舞台のアドベンチャーコメディー『フリー・ガイ』でキュートなヒロインを演じたジョディ・カマー。カルージュの目からは従順な妻、ル・グリの目からは抑圧からの解放を望む女性、そして勇気を振り絞って戦う悲劇のヒロインと、章ごとに全く違う表情を見せている。

 そして、カルージュとル・グリの運命を翻弄する領主ピエール伯役を務めるのはベン・アフレック。ブロンドヘアーとヒゲで放蕩領主を嬉々として演じるベン。ビジュアルのインパクトもさることながら、再び主演と脇役として支え合うマットとベンの姿に『グッド・ウィル・ハンティング』を思い出すファンも多いはずだ。

巨匠リドリー・スコットが描くフランス残酷史!

登場人物の表情を捉える仮面が半分に割れたカブト。スコット監督の美意識は細部にわたる

 このころのフランスは、わずか11歳で即位した国王のもと、国内の権力争い、他国との長引く戦争、伝染病の流行により、人々は現代を彷彿するかのような混乱の時をすごしていた。騎士が誇りをかけて殺し合い、美女が炎に焼かれるかもしれない決闘は、すさんだ生活を送る人々にとってまたとない娯楽として、国を巻き込む騒動となっていく。

 『グラディエーター』をはじめ、数々の歴史大作映画で、重厚で迫力ある戦いを美しい映像でエモーショナルに描き、世界中から称賛されてきた巨匠リドリー・スコット監督は、この陰鬱とした時代の空気を、マット・デイモン主演『オデッセイ』でも組んだ撮影監督ダリウス・ウォルスキーと共に幻想的な映像で再現。雪が舞い、霧に覆われた中世フランスの美しい景色や、豪華絢爛な城に貴族たちの衣装デザイン、血で血を洗うスペクタクルに満ちた合戦シーンなど、83歳にしてなお先鋭的なビジュアルセンスが冴え渡る。

 そして何より、馬上の槍試合からはじまる決闘シーンの迫力がすさまじい。重厚な鎧に身を包んだ騎士同士が、剣からオノまで、あらゆる武器を駆使して戦う姿が徹底したリアリティーで描かれており、長編デビュー作『デュエリスト/決闘者』以来、男たちの決闘を描いてきたスコット監督にとっても屈指の名対決と言えるだろう。なぜ、この事件を最後に決闘裁判は開かれなくなったのか。全く違う視点で描かれる事件の真相とは。神に運命を委ねた決闘の決着は。史実に隠された濃厚なドラマから片時も目が離せない。(編集部・入倉功一)

映画『最後の決闘裁判』は10月15日より全国公開
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