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ゲイとBL好き女子の恋愛を描いた良作!『彼女が好きなものは』って?

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神尾楓珠と山田杏奈 撮影:尾藤能暢

 ゲイであることを隠して生きる男子高校生・と、BL(ボーイズラブ)好きの女子高校生・紗枝との交際を描く映画『彼女が好きなものは。本作はセクシュアルマイノリティーの苦悩に真正面から向き合い、観る者の心を揺り動かす骨太な青春映画として完成した。もがきながらも、お互いのことを知っていこうとする純と紗枝。彼らの葛藤や輝きを体現し、「たくさんのことを考えるきっかけをくれた」という神尾楓珠山田杏奈の言葉から『彼女が好きなものは』の魅力を探る。(取材・文:成田おり枝)

描かれるのは、ゲイとBL好き女子の恋愛?

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神尾楓珠 - (C) 2021「彼女が好きなものは」製作委員会

 「腐女子、うっかりゲイに告る。」のタイトルでドラマ化もされた浅原ナオトの青春小説「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」を実写映画化した本作。自らのセクシュアリティーを自覚する一方で、世間でいう普通とされる幸せの形をあきらめきれずに悩む主人公・純役を神尾が担った。

 神尾は、純を演じることに「不安もあった」と打ち明ける。「当事者の方がどのように受け止めるかもわからないし、最初はきちんと演じ切れる自信もありませんでした。でもせっかくいただいたお話なので、挑戦してみたい」と意欲が湧いたのは、「脚本を読んで、ものすごく真摯にセクシュアルマイノリティーの葛藤に向き合っていると感じた」からだという。

 「紗枝といるとき、彼氏の誠さんといるときなど、純は対峙する人によって自分をさらけ出している度合いが違う。その違いを意識していました」と繊細な表現にもトライしたことを明かした。

 紗枝を演じたのが、山田。紗枝は純がゲイであるとは知らず、彼に恋をする。“世間でいう普通な幸せ”がほしかった純は、彼女の告白を受け入れて2人は付き合い始めるが、紗枝はある日、純と年上の彼氏とのキス現場を目撃してしまう。BLをファンタジーとして享受しながらも、恋人がゲイだったという現実に直面し、彼女はツライ恋を経験することになるのだ。しかし山田は脚本を読んだとき喜びを感じたという。

 「紗枝は、純がゲイであることをまっすぐに受け止めるんです。私は、そういった紗枝の姿が大好きです。脚本を読んで、こんなにまっすぐな紗枝を演じられるんだと思うとものすごくうれしかった」

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山田杏奈 - (C) 2021「彼女が好きなものは」製作委員会

 純はゲイであることを周囲に隠し、紗枝もBL好きであること隠して生きている。そんな彼らが自分をさらけ出していくところは最大の見どころでもある。

 「紗枝は純がゲイだとわかっても自分の感情だけでそれに対処しようとするのではなく、純の立場になって『自分には何ができるのか?』と考えていく。そして純と紗枝に、人間同士としての繋がりができていく。その過程がすごくすてき」と恋愛を超えた2人の関係に、山田は大いに魅力を感じたという。

「普通って何?」という葛藤に共感

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神尾楓珠 撮影:撮影:尾藤能暢

 純や紗枝が周囲に隠し事をしているのは、自分が普通ではない、みんなと違うと感じているからだ。純が「普通に生まれたかった!」と訴える場面も印象的だが、実際にゲイであることが学校でバレると、純はあらゆる誤解や偏見に苦しむことになる。多様性の時代と言われながら、自分とは違った価値観を受け入れるには根強い壁があることが、リアリティーを持って描かれている。神尾と山田は、本作を通して「普通って何?」と考えることが多かったと振り返る。

 神尾は「『何が普通か?』ということに正解があるわけではなくて。みんなの共通認識で、普通としてくくられているものが、なんとなく当たり前になっている状況。そこからはみ出したら、普通ではないという目で見られてしまう。普通ではないと受け取られてしまった人が、そのことで偏見の目で見られるのはおかしい。僕自身、本作に携わって普通についての考え方が変わりました」と明かす。結婚をして子どもが生まれて、家庭生活を営む……「普通の幸せがほしい」と純が望む場面もあるが、神尾は「幸せの定義を決める必要はないんじゃないか」と幸せについても、いろいろと考えを巡らせるようになったと明かす。

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山田杏奈 撮影:撮影:尾藤能暢

 その言葉を受けた山田も“普通”の定義に疑問を持ったことを明かした。

 「普通って、誰が作っているんだろうと思いました。よく枕詞で、『普通は……』と言ってしまうことってありますよね。それは自分を安心させるための、保険で言っているのかもしれません。ひとりでいても幸せな人もいるし、誰かといて幸せを感じる人もいるし、本当にそれは人それぞれ。誰にとっても生きやすい世の中になればいいな」

共演者も豪華!主人公を取り巻く人々の視点って…?

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注目若手俳優たちがずらり - (C) 2021「彼女が好きなものは」製作委員会

 純と紗枝を取り巻くメンバーにも、豪華なキャスト陣が顔を揃えた。純の心の支えとなるクラスメイトの亮平にふんしたのは、前田旺志郎。神尾はその演技力について太鼓判を押す。

 「旺志郎くんには場を盛り上げるにぎやかさがある一方、その場の空気を読んでアドリブを繰り出すこともあって。本当にすごいです」

山田もそのハマりっぷりに驚いたことを明かす。

 「亮平も旺志郎くんもとても明るい人で、当て書きのよう。ぴったりでした」

 また、純に牙を向ける小野役には、本作が映画初出演となる三浦りょう太(りょうはけものへんに寮のうかんむりなし)。神尾は三浦を天才と言い切る。  

 「りょう太は天才! 最初は硬くなることもありましたが、どんどん小野に近づいていって。僕は今、ドラマ『顔だけ先生』でも先生と生徒役でりょう太と共演しているんですが、本当に天才なんじゃないか」

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今井翼 - (C) 2021「彼女が好きなものは」製作委員会

 また純の苦悩に寄り添う恋人・誠役として、今井翼が参加。神尾は頼りがいのある先輩として、今井にかなり助けられたことを明かした。

 「本当にまっすぐで真面目な方。純として対峙していても、今井さんが逃げも隠れもせず、役に真正面から向き合っていることがものすごく伝わってきました。ベッドシーンもありましたが、脚本を読んだ段階ではどこまでどうするのかわからない部分もあって。そんなときにも、今井さんが思い切り向かってきてくれたので、とてもありがたかったです。撮影以外の時間にもたくさん話しかけてくださって、僕の緊張を解きほぐしてくれました」

『彼女が好きなものは』はなぜ良作なのか?

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神尾楓珠 撮影:撮影:尾藤能暢

 自己否定ばかりしていた純は、紗枝と出会い、傷を負いつつも殻を破っていこうとする。お互いを思いやりながら、自らの生き方を切り開いていこうとする2人の姿がまぶしくてたまらない。映画を観たあとには「自分は知らぬ間に誰かを傷つけていないだろうか?」「自分はどう生きたいのだろう?」と考えるきっかけをくれるような作品だ。本作が良作たるゆえんは、そういった力を持っているからこそ。神尾と山田も、本作を通して「たくさんのことを考えた」と告白する。劇中の印象的なセリフから、彼らがどのような影響を受けたのかを聞いてみた。

 神尾は「世界を簡単にしたくない」という純の言葉が深く心に残っているという。「言語化できなかったことをバシッと表現してくれたような気がしました。本当は見なければいけないものから見て見ぬふりをしていたり、目を逸らしてしまったりすることがあります。それでも、深く考えるのは大事なこと」とこのセリフによって自らの価値観が広がっていったという。

 山田は、生きづらさを抱えた純を思いながら、紗枝が「理解できなくても想像したい」と発する一言が印象に残っているという。「純の苦悩を見ていると、簡単に『私は理解している』とは言えません。それはとても重い言葉だから。でも理解はできなかったとしても、彼の痛みを想像することはできる。紗枝の力強い意志が、ものすごくすてきで、私もそうありたいと思いましたし、想像することを疎かにしたくはないです」と熱い思いを語った。

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山田杏奈 撮影:撮影:尾藤能暢

 想像することで、きっと壁を乗り越えていける。そんな希望を伝えてくれる本作との出会いは、彼らにとっても大きなものになった様子がインタビューからも伝わってきた。「価値観が広がるきっかけや生き方について考えるきっかけが、この映画にはきっとあるはず」と神尾が力強く語ると、山田も「映画を観たあとに『自分はこういう考え方をしていたんだ』と奥底にあった気持ちが表れてくる。周囲の人だけでなく、自分にも優しくなれるような作品」と心を込めて力強く語っていたのが印象的だった。

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神尾楓珠と山田杏奈 撮影:撮影:尾藤能暢

映画『彼女が好きなものは』は12月3日より公開
公式サイトはコチラ>> 劇場情報はコチラ>>

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