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代理母出産は15万円、見た目が悪いと5万円値引き マレーシアの衝撃の事実を映画化

第63回カンヌ国際映画祭

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(左)ウー・ミンジン監督、(右)プロデューサーのエドモンド・楊
(左)ウー・ミンジン監督、(右)プロデューサーのエドモンド・楊 - Photo:Harumi Nakayama

 早稲田大学大学院国際情報通信研究科・安藤紘平研究室とマレーシアのグリーンライト・ピクチャーズが合作した映画『ザ・タイガー・ファクトリー』が第63回カンヌ国際映画祭・監督週間部門に選ばれ、ウー・ミンジン監督とプロデューサーで同研究科に留学中のエドモンド・楊がインタビューに応じた。

 同作品は、日本へ行くことを夢見るマレーシアの19歳の女性ピングが、渡航費欲しさに闇の代理母業に手を染める社会派ドラマ。昨年末にマレーシアで実際に起こった、代理母出産業の元締めが逮捕されるという事件をベースに、ウー監督と楊が共同で脚本を執筆した。ウー監督は「その元締めが、自宅から10分と離れていない所に住んでいた人で本当にビックリしました。その実話に、日本へ不法就労に向かう人たちの実話を交錯させた物語にしたんです」と説明する。

 脚本執筆の過程で闇業者をリサーチしたところ、驚くべき事実が次々と明るみになったという。代理母で出産すれば、報奨金約15万円。しかし、有色人種や見た目が悪いと5万円に値引きさせられるという。ウー監督は「それでも、マレーシア人の平均月収が約3万円なので、彼らにしてみれば大金を手にできるワケです。マレーシアでは教育もなく、身分の低い人たちはきちんとした職に就くことが難しいという社会背景もあります。だから不法入国費約20万円を闇業者に支払ってリスクを負っても、日本へ向かう人たちもいるのです。日本へ行けば、一か月約20万円は稼げると信じていますからね。また子どもを買う方にしても、面倒な公的手続きをせずに養子を得ることができるのだから、特に海外からの需要が絶えないようです」と顔をしかめる。

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 そうした、マレーシアで起こっている“今”をとらえるために手持ちカメラでピングを追うなど、観客により臨場感を与えるようなも撮影手段をとった。参考にしたのは、ベルギーのダルデンヌ兄弟による『ロゼッタ』や『ロルナの祈り』、ルーマニア映画『4ヶ月、3週と2日』といったカンヌ国際映画祭でも高い評価を得た秀作たち。「でも僕は、是枝裕和監督や河瀬直美監督の作品が本当に大好きで、どれだけ影響を受けて作品を作って来たことか。彼らのようなリアリスティックな映画作りを目指したいんです」と熱く語る。

 撮影はマレーシアで約2週間かけて行い、編集作業を日本で行った。約300万円の製作費は、日本とマレーシアで半々ずつ出資しているという。ウー監督は『マンデー・モーニング・グローリー』(英題)でベルリン映画祭フォーラム部門、『ウーマン・オン・ファイアー・ルックス・フォー・ウォーター』(原題)がヴェネチア国際映画祭ホライズン部門と、マレーシアで初めて世界三大映画祭に参加したことになるという。

 一方のシンガポール出身の楊も、監督作『金魚』が昨年のヴェネチア国際映画祭の短編コンペティション部門に選ばれるなど世界が注目する逸材だ。楊は「僕らは同じ東南アジア出身で、ウー監督が米国で、僕がオーストラリアと共に西洋で映画製作を学ぶなど環境が非常に似ている。おまけにウー監督は川端康成など日本文学に造詣が深く、川端文学にインスパイアーされた『金魚』のアイデアも、ウー監督によるものなんです。今回の『ザ・タイガー・ファクトリー』は共同脚本でしたが、お互いが執筆した脚本をチェックし合うことも。良い刺激を与え合っている関係なんです」と語る。

 ちなみに、ウー監督の夫人は日本人。楊も今秋に留学期間を終えるが、そのまま日本に残って映画製作を行っていきたいという。そんな二人が今、企画しているのが、日本とマレーシアと舞台にしたオムニバス映画。楊が日本を、ウー監督がマレーシアでの撮影を担当する予定だという。日本を拠点に、異文化交流の輪が広がって行きそうだ。(取材・文:中山治美)

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