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ベネチア映画祭で受賞の『ヒミズ』園子温監督、福島第一原発事故がテーマの映画を企画中

第68回ベネチア国際映画祭

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マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)のトロフィーを手にしている園子温監督
マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)のトロフィーを手にしている園子温監督

 第68回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で主演の染谷将太二階堂ふみマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞した映画『ヒミズ』の園子温監督が現地時間10日深夜、日本メディア向けに喜びの会見を行った。

映画『ヒミズ』場面写真

 園監督は授賞式に参加するよう呼ばれたものの、どの賞を受け取るかまでは知らされていなかったそうで「そりゃまぁそれなりの賞をいただけるんだろうとは思ってました。(新人俳優賞と聞いて)すごく役者を大事にして作っているつもりなので、そういう賞をいただけてうれしいです。また古谷実氏が最初に作った物語なくしてはあり得なかったので、漫画にも感謝しています」と冷静に語った。

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 同作品は、「行け!稲中卓球部」で知られる古谷実の同名コミックを映画化したもので、親に見捨てられた中学生・住田(染谷)と彼を支えようとする茶沢(二階堂)が生きる意味を問う青春物語。これまでの園作品同様、二人はオーディションによって選ばれた。自分たちではどうすることもできない境遇に追い詰められ、行き場のない感情を激しくぶつけ合う若い二人の熱演は129分間の作品を引っ張っており、審査委員長のダーレン・アロノフスキー監督は「激しい感情を見事に体現していた二人の演技は非常に素晴らしい。心から感銘を受けた」と絶賛していた。園監督も「この二人でやれたからこその企画だと思うし、今となってはこの二人のキャスティング以外あり得ないですね」と作品を支えた二人の若き才能を讃えた。

 一方、園監督自身も、『愛のむきだし』がベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞受賞、『冷たい熱帯魚』がベネチア国際映画祭オリゾンティ部門選出、『恋の罪』(11月12日公開)がカンヌ国際映画祭監督週間選出と確実に国際的な舞台で知名度を上げ、注目が高まっており、世界中の映画ファンから新作が待ち焦がれる存在となっている。次回作については複数の企画があるそうで、そのうちの一本がすでに発表されている、ノルウェーで実際に起こった怪奇事件を描く『ローズ・オブ・ケオス:ザ・ブラッディ・ライズ・オブ・ザ・サタニック・メタル・アンダーグラウンド』で初の英語での撮影となる。また『ヒミズ』は震災後の世界を描き、被災地でも撮影を行っているが、今度は福島第一原発事故をテーマにした作品も企画中だ。すでに脚本執筆にもとりかかっているという。

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 園監督は「『ヒミズ』で被災地に行き、やっぱりどこかにあのまま撮影して終わりというワケにはいかず引きずっている部分もあるし、このままじゃ終われないという気持ちがある。『ヒミズ』は自分でもちょっと驚いた作品かな。これまでオウム真理教の事件とか何かが起きても撮る気はなかったのに、今回いきなりすぐさま作品に取り入れた。それだけ自分の中で大きく受け止めているということですね。ただそれは良い意味も悪い意味もあって、悪い意味では自分が社会派の監督になってしまう恐れ。それはダメだと思っているんですけど(苦笑)。良い意味では新しいチャレンジだと言うこと。ただ政治的な映画は作りたくなく、反核などのメッセージを入れたくはない。どういう風に撮るかはこれからの課題です」と説明する。

 ひとまずは帰国する前にフランス・パリに立ち寄り、『恋の罪』が参加しているエトランゼ映画祭で現地時間11日夜、舞台あいさつを行う。同映画祭はカンヌやベネチアよりも早くに園監督の才能に着目し、特集上映を行うなどして園作品を欧州に発信してきたゆかりの映画祭。古くからの友人たちと受賞の喜びを分かち合う予定だ。

 園監督は「僕の目的は遥か遠いところにあって、日本の監督が到達し得なかったところに行きたい。国際映画祭は僕の広大な野心のために必要な場所だと思ってます。世界中の映画祭で認知されて、そこから外国映画を撮ってみたいというのがありますから、そのステップとして重要なんです。映画祭でもっと大きい賞も獲りたいと思います」とさらなる意気込みを語っていた。(取材・文:中山治美)

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