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山田洋次監督、障害を持つおいの『男はつらいよ』を映画館で楽しみたいという言葉でろうあ者用の字幕プリントを作った

第24回東京国際映画祭

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映画への思いを語った山田洋次監督
映画への思いを語った山田洋次監督

 28日、六本木ヒルズをメイン会場に開催されている第24回東京国際映画祭にて、「視聴覚障害者のための『映画』の在り方を考える」シンポジウムが行われ、バリアフリー上映会で『幸福の黄色いハンカチ デジタルリマスター』を出品している山田洋次監督が、映画製作への思いやバリアフリー映画の関係について語った。

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 山田監督がバリアフリー映画に関心を持ったのは、親戚に生まれつき障害を持ったおいがいたのがきっかけだったという。「彼に『おじさんの撮った寅さん(『男はつらいよ』)を、映画館で楽しみたいんだ。なんとかしてほしいなあ』と言われ、そうか、そういう問題があるんだ」と気づいた山田監督。「ヒロインがろうあ者の『息子』を作ったとき、僕はなんとかしておいっ子に観てもらいたいと思って、ろうあ者用の字幕プリントを作った」。これが契機となって、監督の作品には字幕プリントが作られるようになったと明かした。

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 『幸福の黄色いハンカチ』に関しては、ある目の不自由な方との印象的な思い出がある。「その方は、目が見えないのに『映画館で映画を観るのが大好き』とおっしゃる。『周りの人のざわめきを聞きながら、画面を想像して、一緒に感動できるんです。でもラストシーンは難しい。音楽だけがあって、セリフのない場合が多いから。そういうときは、隣りの人に今どうなってるの? って聞くんです』と。だから僕が『じゃあ、この映画のラスト、高倉健さんの見上げた先に黄色いハンカチがたくさんあったけど、見えなかったでしょ?』と言うと、『いいえ、わかりました』って。『だって、風のなびく旗の音がしたでしょ。たくさんの旗がひらひらはためく音がして、ハンカチがいっぱいひるがえっているのがわかって、とっても感動した』。それを聞いて、最後は言葉がなくなるというのは、映画の特徴のひとつなんだな、映画は映像の芸術なんだな、と改めて感じた」と感慨深げに振り返る姿も。

 長い間、日本の映画製作技術にかかわってきた監督は、3月11日の東日本大震災以降、「科学技術の進歩イコール人間の幸福、と考えていた価値観が崩れた気がしてならない」と説く。「障害を持つ人たちのバリアを低くするために科学技術が進歩するなら、諸手を挙げて賛成したい。これからも進歩し続けてほしい」と情熱的に訴えた。しかし、「僕はフィルムが大好きで、ずっとフィルムで撮ってきた。今、来年の映画の準備をしているんですが、スタッフには『いいか、人類最後のフィルム製作をするんだからな』と言っている」と寂しそうな心情も見せる。「フィルムとデジタル、どっちが優れているとかいないとか、僕もまだ正確には言えない。ただ、フィルムの歴史が終わる。今僕たちは、映画の転換期にいる。それだけは確かです」と現在の映画制作に対する監督の思いを語った。

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 『幸福の黄色いハンカチ』は、1977年に山田洋次監督がメガホンを取った、日本映画史に燦然(さんぜん)と輝く名作。第1回日本アカデミー賞など、その年の映画賞を独占した。情緒豊かな人情味あふれるストーリーは、いまだ観客の心を捉えてやまず、2010年にデジタルリマスター版としてよみがえった。(取材・文:尾針菜穂子)

第24回東京国際映画祭は10月30日まで六本木ヒルズをメイン会場に都内の各劇場などで開催中

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