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震災後、映画という夢の中だけにいることはできなくなった…鬼才・篠崎監督が吐露

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胸中を告白した篠崎誠監督
胸中を告白した篠崎誠監督

 テレビドラマ「ケータイ刑事(デカ)」シリーズなどで知られる鬼才・篠崎誠監督が23日、東京・テアトル新宿にて行われた、東日本大震災後の日本人の心の問題と向き合った最新作『SHARING』の初日舞台あいさつに、主演の女優・山田キヌヲ樋井明日香らキャスト陣と共に登壇し、熊本地震に触れながら、「社会の動きを無視して、映画という夢の中だけにいることが、もうできなくなりました」と映画作りをする意義が変わったことを口にした。

 東日本大震災の予知夢を見た人について調査している社会心理学者の瑛子(山田)は、自身も震災で亡くした恋人の夢を見続けている。一方、震災をテーマに卒業公演を準備する演劇科の大学生・薫(樋井)も、夢に繰り返しうなされていた。やがて巡り会い、夢や震災の受け止め方をめぐって激しく対立する2人を通して、震災や原発事故の影響下にある日本人の不安や葛藤を重層的にあぶり出す本作。『その夜の侍』の山田、『さよなら歌舞伎町』の樋井など、フレッシュなキャスト陣も見どころで、バンクーバー国際映画祭(2014)、釜山国際映画祭(2014)、東京フィルメックス(2014)、サンセバスチャン国際映画祭(2015)に出品されると高評価を受け、国内公開が待ち望まれていた。

 「たくさんのお客さまと一緒に本作を観ることができて、本当にうれしい」(山田)、「みなさんの感想がとてもに気になります」(樋井)と率直な気持ちを語った2人のあと、マイクを取った篠崎監督。「自分の監督デビュー作『おかえり』の編集中、1995年に阪神淡路大震災が起き、2001年の9.11テロの4日後に、ここ同じテアトル新宿で『忘れられぬ人々』の公開舞台あいさつをしました。そして今回、本作の公開準備中に熊本の震災。個人的なことですが、妻の実家が大分の湯布院で、いま映画の公開という気分にはとてもなれず、途方に暮れました。九州には友人も多く、胸が痛いです」と静かに胸中を打ち明ける。

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 続けて、「ぼくは元々、単なる映画好きのアンチャンに過ぎなかった。だけど、これまでの経験で、社会の動きを無視して、映画という夢の中だけにいることが、もうできなくなりました。大変な状況ですが、映画を作ることで、かろうじて世界とつながっていられる。映画は、ぼくの唯一の希望です」と語りかけると、会場から大きな拍手が起こった。

画像テキスト
『SHARING』初日舞台あいさつの様子

 「分身」が物語のテーマでもある本作には、登場人物と展開の異なるショートバージョン(99分)とロングバージョン(111分)の2つがあり、どちらかがディレクターズカットであるというような軽重はなく、互いに照らし合う構造になっている。今回はその両バージョンが公開されるほか、同じく震災を扱った篠崎監督の前作『あれから』も同時上映される。この日は、共演の木村知貴木口健太兵藤公美高橋隆大小林優斗鈴木一希吉岡紗良も出席した。(取材/岸田智)

映画『SHARING』はテアトル新宿にて5月13日まで3週間限定レイトショー公開(全国順次公開予定)

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