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カンヌが涙…イギリスの巨匠ケン・ローチ、胸を引き裂く映画の作り方を明かす

第69回カンヌ国際映画祭

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今回も俳優の発掘力がすごい! - ダニエル役のデイヴ・ジョーンズ、ケン・ローチ監督、ケイティ役のヘイリー・スクワイアーズ
今回も俳優の発掘力がすごい! - ダニエル役のデイヴ・ジョーンズ、ケン・ローチ監督、ケイティ役のヘイリー・スクワイアーズ - Dominique Charriau / WireImage / Getty Images

 現地時間13日、第69回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されている映画『アイ、ダニエル・ブレイク(原題) / I, Daniel Blake』の会見が行われ、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督(79)が映画を作る際に指針としている言葉を明かした。プレス向けの上映でも多くの人の涙を誘った本作。会見でローチ監督が紹介されると、これまでで最も長く熱烈な拍手と「ブラボー!」という喝采が送られた。

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 ローチ監督が今回題材にしたのは、現代イギリスにおける貧困、そして社会保障支出の削減を進めるために政府が使ってきた「働き者と怠け者(給付受給者は怠け者で、ちゃんと働く人が不利益を被っている)」というレトリックがもたらしたもの。ニューカッスルを舞台に、心臓発作を起こして医師から大工の仕事を続けられないと診断されるも役所には働けると見なされたダニエル・ブレイク59歳の奮闘が、ひょんなことから彼が手を差し伸べることになる若きシングルマザー・ケイティの姿とともに映し出される。

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 社会の底辺で生きる人々の過酷な日々をただ突き付けるだけでなく、その中に存在するユーモアも切り取ってきたローチ監督とあって、本作にも、型通りの行政側と率直なダニエルの問答などコミカルなシーンがたくさんある。ローチ監督は「苦しんでいる人について書くとなると、よく人は彼らをいつでもみじめに書きがちだけどそれは事実じゃない。どこにだって笑い、ばかばかしさ、温かさがある。それがリアルな人々の生活だ。そうじゃないかい?」とそうした要素を省くと本質がつかめないと説明する。

 その一方で、観客の心を有無を言わせず、ほとんど暴力的といってもいいほどに揺さぶるシーンがある。「その映画にふさわしいトーンを見つけるというのは本当に大切なことで、本作について言えば、ストーリーがとても力強いと感じた。本質的ではない動きはなしで、完全に明白で簡素にし、カメラの前の人々の本質をつかむことから、何物も観客の気をそらせることがないようにした。状況を飾りたてずシンプルに描写する。それが僕たちがしたことだ」。

 「ベルトルト・ブレヒト(ドイツの劇作家)が残した言葉がある。僕がとてもいい言葉だと思っていて、僕たちを何度も導いてくれたものだ。『一番シンプルな言葉で十分だとずっと思っていた。わたしが状況を説明するだけで、それは人々の胸を引き裂くから』。これこそ僕たちがしようとしてきたこと。ただ状況を説明するだけで、それは人々の胸を引き裂くだけでなく、人々を(その状況に対して)怒らせるから」。

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 ローチ監督によると、キャラクターの会話がアドリブのような自然な感じで聞こえることは必要だが、実際、脚本はとても正確に書かれており、脚本と完成した映画とではほぼ同じ。劇中に登場するフードバンクで働く人々は実際にそこで働く人々で、そうしたことからもリアリティーを感じられるようにしたのだそう。ニューカッスルのスタンダップコメディアンで、本作が映画初出演となった主人公ダニエル役のデイヴ・ジョーンズは、少しずつ脚本をもらいながら順撮りした撮影について「実際に生きていると、明日のことはわからない。脚本を少しずつもらうから、ダニエル・ブレイクという役柄を本当に生きているようだった」と振り返っていた。(編集部・市川遥)

第69回カンヌ国際映画祭は現地時間5月22日まで開催

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