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デヴィッド・リンチの名作『ブルーベルベット』を追ったドキュメンタリー、撮影秘話明かされる

『ブルー・ベルベット・リビジテッド(原題)/ BLUE VELVET REVISITED』より
『ブルー・ベルベット・リビジテッド(原題)/ BLUE VELVET REVISITED』より

 デヴィッド・リンチ監督の代表作の一つである『ブルーベルベット』(1986)の撮影現場を追ったドキュメンタリー映画『ブルー・ベルベット・リビジテッド(原題)/ BLUE VELVET REVISITED』(ドイツ、スロベニア、アメリカ合作)が、第19回全州国際映画祭で上映され、8日のトークショーにピーター・ブラーツ監督が登壇した。

 『ブルーベルベット』は、野原で人間の片耳を発見した青年ジェフリー(カイル・マクラクラン)が、事件を追ううちに女性歌手ドロシー(イザベラ・ロッセリーニ)と出会い、異常な世界に巻き込まれていくさまを描く物語。ドロシーの情夫を演じたデニス・ホッパーの怪演が話題となり、リンチは第59回アカデミー賞監督賞にノミネートされた。

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撮影の裏側を明かすピーター・ブラーツ監督 撮影:土田真樹

 その撮影現場を追った本作は、ブラーツ監督が1988年に発表した60分のテレビ用ドキュメンタリー(『ノー・フランク・イン・ランバートン(原題)/ No Frank in Lumberton』)を再編集したもの。テレビ版が放映されたのはドイツ国内のみだったため、より多くの世界のリンチファン、映画ファンに届けたいと願いを込めて86分尺に編集された。

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 もともとリンチ監督の『イレイザーヘッド』(1976)が大好きで映画学校を目指したというブラーツ監督。憧れの鬼才との初対面が実現したときの様子を「リンチと5度ほど手紙のやり取りをして、彼に会いに行ったんだ。ところが、待ち合わせに現れた彼は『ブルーベルベット』のシナリオを渡し、オフィスで翌日に会う約束をするとさっさと帰ってしまった」と回想。「しっかりとシナリオを読み込んでオフィスを訪れると、僕を『ドイツから自分のドキュメンタリー映画を撮りに来た映画学徒』だとリンチがプロデューサーに紹介してくれて、すんなりと撮影許可が下りた」と言い、リンチが決定権を持っていたことにより交渉はスムーズに進んだ。

 ブラーツの目に、リンチはどのように映ったのだろうか。「『エレファント・マン』(1980)や『砂の惑星』(1984)をヒットさせた売れっ子監督であるにも関わらずとても紳士的で優しい人。映画学徒に過ぎない僕にもフレンドリーに接してくれて。彼が撮影現場で怒ったのは2度ほど。それも5秒ぐらいで元のリンチに戻ってしまい、その表情をカメラに収められなかったのは残念だったよ」と3か月間の撮影を懐かしそうに振り返っていた。

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 完成した作品は、当時の撮影現場を撮影したフィルムとモノクロ写真で構成されている。「実は映像には音声が入っていないんだ。もちろんカセットに録音してはいたけれど、それだけじゃ足りないわけで、効果音を追加し、サウンドトラックをタキシードムーン(サンフランシスコのバンド)につけてもらい、映画のチャプターも音楽に合わせて構成しているんだ」と音楽へのこだわりをアピールした。

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ヒロインを演じたイザベラ・ロッセリーニ

 なお、リンチ本人の反応といえば60分のテレビ版を観ているようで、「当時のリンチの恋人だったイザベラ・ロッセリーニからは『よかった』と手紙をもらったんだけど、リンチからは連絡がなかった。それから20年後くらいして知り合いから『リンチがよかったと言ってた』と伝え聞いた」という。

 会場を埋めたファンは「ミュージックビデオのよう」だと本作の映像美を絶賛。劇映画を撮る予定はないのかの質問に、ブラーツ監督は「僕はリンチやフェリーニに影響を受けているからね。自分が撮りたくても出資を集めるのはなかなか難しいんだよ。だけど、もし撮れるのなら、音楽の中で泳いでいるような映画がいいなと思っている」と意欲を見せていた。(取材・文:土田真樹)

第19回全州国際映画祭は12日まで開催

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