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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編、高すぎる期待を超えたクオリティー:レビュー

(C) 吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 大ヒット中の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。テレビアニメが全話で映画並みのクオリティーの高さを見せ、劇場版も引き続きufotableが制作しただけに、そのハイクオリティーを維持するだろうということは想像に難くなかった。しかし、実際に映画として公開されるとなると、期待と共に上がってしまったハードルを超えられないのではないかとの懸念と元々高かったクオリティーを、劇場版としていかに超えていくのかという点には多少の不安があった。しかし、完成した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に、そんな懸念は無用だった。改めてストーリー自体の面白さ、そして、その魅力を最高の形で映像化してみせたufotableのスタッフや声優たちの確かな力と映画ならではの大スクリーンと迫力の音響とで力強い作品に仕上がっていた。(天本伸一郎)

劇場版「鬼滅の刃」キャラ一覧【画像】

 原作は吾峠呼世晴による人気コミック。劇場版の物語が開幕後すぐに見られるのは映画オリジナルのシーンで、鬼殺隊当主・産屋敷耀哉とその妻が、亡くなった隊士たちの墓参りをする。この冒頭シーンの背景美術のすごさに、まず圧倒される。スクリーンいっぱいに静かな美しさを漂わせる木々の緑や滝などの自然が広がる一方、斜面の大地には無数の墓石が立ち並ぶ異様な光景に、鬼殺隊隊士の過酷な運命を感じさせる。この冒頭だけで、テレビアニメ以上のクオリティーを確信でき、作品世界にひきこまれる。

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 そして、主人公の鬼殺隊隊士・竈門炭治郎が、鬼の妹・禰豆子の入った箱を背負いつつ、仲間の我妻善逸と嘴平伊之助と共に、鬼の被害が怪しまれている無限列車に乗り込む。テレビアニメの最終回におけるラストの描写が繰り返された後、その続きとなる劇場版の物語が本格的に始まる。炭治郎たちは、先に列車に乗り込んでいた鬼殺隊の最高位である柱の一人、炎柱の煉獄杏寿郎と合流。鬼たちの祖である鬼舞辻無惨の配下の鬼の最高位である十二鬼月の下弦の壱、眠り鬼の魘夢との、走る列車内という限定された空間での激闘が描かれることになる。

 見どころとなるポイントをいくつかあげると、まずは魘夢による夢の世界に引き込む血鬼術。その特殊な攻撃により、禰豆子以外の炭治郎たち4人の夢の世界が描かれる。それぞれが望むことや想い出を魘夢が利用した夢の中のエピソードが、各人の個性や背景を反映した上で描かれる。夢だと気付かずにいるのも危険だが、夢だと気付いても、もう叶わぬ幸せの光景が広がる世界に留まりたいという葛藤に駆られてしまう。この攻撃に打ち勝つには、厳しい覚悟や強い意志が求められ、これまでの鬼とは全く違う怖さや残酷さがある。夢の中だけに、炭治郎の家族や言葉を話す禰豆子の姿が久々に観られたり、伊之助と煉獄による善逸のイメージが意外な姿での共通認識があったりなど、感動的なシーンから笑えるエピソードまで、様々な見せ場がある。

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 もちろん現実の戦いも、これまで以上の激闘が描かれる。疾走する列車内という縦に長く横幅の狭い限定された空間で、約200人もの乗客を守りながら戦うことになる。そこでは、それぞれの剣技ならではの特性が活かされた戦い方を見せ、新たな表現やスクリーンでこそ映える演出も堪能できる。夢を見せるだけではない血鬼術を持つ、これまでで最大の強敵・魘夢を相手にした炭治郎と伊之助の本格的な共闘、善逸が禰豆子への有言実行を見せる戦いぶりなど、盛り上がるポイントは満載だ。

 そして、本作最大の見どころとなるのが、やはり炎柱の煉獄杏寿郎の戦い。テレビアニメで煉獄の登場はわずかだったため、この劇場版で初めて本格的に、その戦いぶりやキャラクターが描かれた。真っ直ぐで熱い性格ゆえに、一見変わり者に見えるが、面倒見がよくて温かく優しい煉獄。炎の呼吸を使う圧倒的な剣技はもちろん、統率力、状況判断力、行動力にも優れ、隊士として目指すべき柱という存在や使命の大きさを、その背中で炭治郎たちに指し示す。剣士としての柱の戦いは、水柱の冨岡義勇、蟲柱の胡蝶しのぶも、テレビアニメの「那田蜘蛛山編」で見せていたが、敵との戦力差や圧倒的な強さゆえに、わずかしかその剣技を披露する機会がなかった。しかし、200人もの乗客を守りながら強敵と戦うことになる煉獄は、その剣技をたっぷりと見せ、柱というものがどれだけ強く、秀でた存在であるかを、これまで以上に実感させる。炭治郎にとって煉獄の存在は、大きな成長を促し、以降の物語の中でも、戦い続けていく上での大きな心の支えとなるのだが、それも今回の劇場版を観れば納得できる。そして、声優陣の皆がテレビアニメ以上の熱演をみせているが、煉獄を魅力的にしているのは、それを演じた日野聡の力も、もちろん大きい。その大きなグリグリ目を見開いた表情と共に、感情がわかりにくいストレートな癖のない話し方で、最初は不思議キャラのようにも思えるが、次第にその内面の熱さや人間としての大きさが、声ににじみ出てくるように表現している。

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 他にも、箱に入っている時の小さな禰豆子が動き回る姿の可愛らしさやユーモアあふれるシーンなど、印象深い点をあげればキリがない。いくつかの山場があり、その度に感動や興奮がある。原作が1億部も売れているだけに、物語の展開を知っている観客も多いだろうが、この劇場版には圧倒的な好評と感動の声が寄せられている。観客の満足度の高さ、観客層の幅広さ、ブーム自体の盛り上がりなどを見ても、さらなる興行記録が期待できそうだ。

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