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大ヒットドラマの名コンビ!土井裕泰監督、脚本家・野木亜紀子と映画初タッグで激しい議論も

小栗旬&星野源共演『罪の声』より
小栗旬&星野源共演『罪の声』より - (C) 2020 映画「罪の声」製作委員会

 『いま、会いにゆきます』『映画 ビリギャル』などのヒット作を手掛けてきた土井裕泰監督。最新映画『罪の声』(10月30日公開)では、大ヒットドラマ「空飛ぶ広報室」や「逃げるは恥だが役に立つ」などで度々組んできた脚本家の野木亜紀子と共に、実在の事件をモチーフにした塩田武士のミステリー小説の映画化に挑んだ。演出家として30年近いキャリアを誇る土井監督が、野木と組むからこそ可能になる表現について語った。

【動画】『罪の声』特報

 映画『罪の声』は、かつて日本中を震撼させた実在の未解決事件をモチーフにした塩田武士の同名小説に基づき、フィクションとして事件の真相に迫っていくミステリー。複数の大手食品会社を標的にした劇場型犯罪から35年後、その未解決事件を追う新聞記者・阿久津英士(小栗旬)と、幼少期に自身の声が事件に使われていたことに気付いてしまったテーラー店主・曽根俊也(星野源)を軸に展開する。

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罪の声
小栗&星野に演出中の土井監督

 モチーフとなった事件をリアルに記憶しているという土井監督は原作小説について、犯人が脅迫テープに使った子どもの声に着目してフィクションの物語を作り上げるという発想に、強く惹かれた。そして、「事件を知らない若い人たちにも、面白く見てもらいたい。そのために入口はわかりやすくしても、見終わった時に単純な謎解きのミステリーではない、もっと深いテーマをそれぞれ受け取ってもらえるような作品にしなければいけない」ということを自分に課した上で、制作に取り組んだ。

罪の声
星野演じるテーラー店主・俊也は、幼少期の自身の声が犯人の脅迫テープに使われていたことを知る……

 演出としては特に「『罪の声』というタイトル通り、音としての“声”というものを意識的に使ってストーリーを動かそうと思いました。間違いなくそれが、映像作品ならではの強みでもありますから」と“声”の表現に気を配った。「例えば新聞記者の阿久津は、ひたすら取材して回り、その人たちの声を聞き続けることで手懸りを得ていく。俊也が見つけた幼少時の自らの声が入ったカセットテープをはじめ、いろいろな声がさまざまな人の人生をリンクさせ真相を導き出してゆくことを、象徴的に描けたのかなと思っています」

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 ただ、今回の物語には「主人公が真相に向かっていく現代の話と、35年前の事件そのものの描写と、証言者たちそれぞれの回想など、多くのレイヤーが積み重なってできている。それらをどのように整理し、どう組み直してゆくのか、とても一筋縄ではいかない作業になるな」との難しさも感じた。そのため、脚本家の野木と那須田淳プロデューサーたちと共に、長時間の打合せが繰り返された。「原作者の塩田さんの考えたフィクション部分は手を入れることができても、実際の事件の事実を基にした部分には手を入れられない。何を残して何を省くかということに関しても、それぞれの思いや主張がある。時制を入れ替えたりなどの、小説とは違うこの映画においての文脈を生み出さなければならない。そんなことをひとつひとつ検証しているうちに、いつの間にか夜が明けてたりして」

 その打合せでは、「野木さんは割と率直にものを言う方なので、僕も率直に言ったほうが伝わりやすい」と、かなり激しい意見交換が行われた。しかしそれも、野木とドラマ「空飛ぶ広報室」「重版出来!」「逃げるは恥だが役に立つ」で組んできたからこそで、「やっぱり野木さんにも曲げられないところがある。でも意見が合わなくても、逆にそれがちょっと安心できるんですよね。そこには野木さんの中で筋の通ったものがあるから、それを信じて委ねてみようという気持ちにさせてくれる。原作のスピリットを守りながら、映像作品として再構築する上手さも分かっていますし。僕が最初に野木さんと会ったのは7年以上も前ですが、根本的な部分はずっとブレていない感じがします」と信頼関係の深さを窺わせる。

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 そんな野木脚本の魅力について土井監督は、「すべての登場人物に愛情をもって、人間を描ける作家だということ。ただ話を進めるための駒でなく、登場させるからには一人一人に理由がある。それに、人間のベーシックなものを描くという基本が、きちんとできた上で、その人たちが生きている社会やそこで起きている問題などを、背景に透かしてみせることができる。SNSなど今の“世間”のツールや気分みたいなものを物語に取り入れるのもうまい」と語る。

罪の声
小栗&星野バディ感は野木脚本ならでは

 『罪の声』の中で特に野木らしさを感じたのは、「阿久津(小栗)と俊也(星野)が、事件の鍵を握る人物を探して、関西から中国・四国地方に向かうところでしょうか。曽根が自らの機転で重要な手懸りを得たり、阿久津が瀬戸大橋の袂でプライベートな話を吐露したり」という部分をあげる。それは、「主人公の二人に奇妙な友情というか共感のようなものが生まれてくるプロセスを描きたい」という狙いに沿って、野木が書き上げた映画オリジナルのエピソード。そこには「二人の距離がグッと縮まるわけですが、極力説明ゼリフを減らし、生身の人間の言葉、肉声として、どれだけちゃんと伝えられるかということ」といった、脚本作りをする上での重要なポイントがあり、野木の力が存分に発揮されているという。

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罪の声
土井監督

 野木以外にも多種多彩な脚本家と組み、演出家として名実共に進化を遂げてきた土井。組んできた顔ぶれは、井上由美子大石静岡田惠和北川悦吏子宮藤官九郎坂元裕二野島伸司野沢尚遊川和彦ら1990年代以降に日本のテレビ界で活躍してきた名脚本家が名を連ねている。オリジナルドラマが主流の1990年代前半に演出家デビューした土井は、「幸運だったのは、まだ若い時にいろんなプロデューサーが引っ張ってくれて、そうそうたる方々に出会わせてもらえたこと。作家さんそれぞれに、人間や社会を見る独特の視点があって、仕事をする度に発見がありました。その時に鍛えられたことが、いまも筋肉として残っていて、自分の財産になっていると思っています」と振り返る。

 同じ脚本家と組むことの多い演出家もいるが、「何度組んでも絶対同じようにはならないし、二回目、三回目の方が、ハードルがあがっていると感じることもある。野木さんともオリジナル作品をやってみたいし、また仕事をさせていただきたい方はたくさんいます。その一方で、新しい人たちと出会いたいという気持ちも、同じくらいある」との意欲を口にする。演出家として円熟期を迎えつつあるが、「年をとってくると自分をアップデートしていくことに億劫になるけれど、まだまだ自分自身が変化したいという衝動もある。積み上げてきたものを一旦壊して、毎回ゼロから始める勇気みたいなものを持ち続けたいと思っています」と、その姿勢は変わらず挑戦的。来年1月にはドラマ「カルテット」に続いて脚本家・坂元裕二とタッグを組む映画『花束みたいな恋をした』の公開を控えている。(取材・文:天本伸一郎)

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