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東京2020を開催したことに…リアルに描写する『ナディア、バタフライ』

主演はリオ五輪の銅メダリストであるカトリーヌ・サヴァール。映画『ナディア、バタフライ』より
主演はリオ五輪の銅メダリストであるカトリーヌ・サヴァール。映画『ナディア、バタフライ』より

 東京2020オリンピックが今夏に開催予定だが、一足先に映画の中で実現していた。東京五輪で現役引退する女子競泳選手が主人公のカナダ映画『ナディア、バタフライ』だ。パスカル・プラント監督も元競泳選手なら、主演はリオ五輪の銅メダリストであるカトリーヌ・サヴァールで、東京ロケも行われた。第73回カンヌ国際映画祭にも選出された注目作が、第16回大阪アジアン映画祭(以下、OAFF)のコンペティション部門で日本初お披露目となる。

 同作の主人公は、カナダ代表の競泳選手ナディア。東京五輪を最後に、医学部に進学することが決まっている。晴れの舞台で絶頂を迎えた快楽と、緊張の日々から解放される安堵(あんど)。しかしすぐに押し寄せてくる虚無感と新たな人生への不安といったトップアスリートの素顔を、五輪開催中の東京の街をさまよいながら描くものだ。

 プラント監督は、北京五輪のカナダ代表候補にも名前が上がるほどの実力の持ち主だったが夢の舞台へは一歩及ばず、19歳で現役を引退して映画の道へ。以前から映像作品でトップアスリートがヒーローのように描かれることに違和感を持ち、彼らも一人の人間であることを、実体験を投影しながら脚本を執筆したという。

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 元選手だけにキャスト及び競泳シーンに抜かりはナシ。ナディア役のカトリーヌ・サヴァールは現役選手。2016年のリオ五輪で女子4×200メートルに出場し、銅メダルに輝いた。当初は脚本のコンサルタントとして本作に携わっていたそうだが、キャスト・オーディションに参加したところ演技の才能も兼ね備えていたようで主演に抜テキ。チームメートも皆、元&現役の選手で、彼女たちが見せる迫力のレースシーンは本作最大の見どころだ。

 舞台となる五輪シーンも、本家の知的財産に配慮しながらロゴやマスコットを作り上げ、限りなくリアルに再現しているところに敬意を感じる。残念ながらレースシーンの撮影は東京ではなく、プラント監督の地元モントリオールで行われているが、1976年のモントリオール五輪の競泳の会場となったオリンピック・プールで撮影されている。

 それだけ選手にとって五輪がいかに重要で、主演のサヴァールをはじめ選手たちがどれだけハードなトレーニングを積んでいるかを熟知しているプラント監督だけに、東京五輪が延期になったニュースを聞いた時には落胆したという。しかしプラント監督は、コロナウイルスがなかなか収束しない状況を鑑み「延期は最善の決断であったと理解しています」と言う。

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 そして今、開催の是非をめぐって日本の世論が揺れている非常なデリケートな問題であることも知った上で、プラント監督は「夢の実現のために人生を賭けている選手のために、今夏の開催を願っています。わたしは専門家ではありませんが、適切な感染予防対策を講じれば、収容人数を制限した縮小開催が出来るのでは? 世界の状況が急速に進化している今、開催するか否かの決断はもう数か月待つのが賢明ではないでしょうか」と元選手ならではのコメントを寄せた。

 ちなみに本作はコロナ禍の影響で通常開催が見送られ、オフィシャルセレクションのみが発表された第73回カンヌ国際映画祭「カンヌ2020」に、カナダから唯一選ばれた。そのカナダ映画が、アジア映画の映画祭と謳っているOAFFに選ばれるのは異例だが、日本が舞台になっていることや、日本ロケのスタッフに、OAFFの常連監督である『大和(カリフォルニア)』の宮崎大祐監督も参加していることから今回は柔軟に対応したという。(取材・文:中山治美)

第16回大阪アジアン映画祭のスクリーン上映は3月5日~14日に梅田ブルグ7ほかにて、オンライン座は2月28日~3月20日にて開催

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