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『タイタニック』こだわりに満ちた舞台裏エピソード10選

20th Century-Fox / Photofest / ゲッティ イメージズ

 1912年に起きた豪華客船タイタニック号の沈没事故を映画化した、ジェームズ・キャメロン監督の超大作『タイタニック』(1997)。妥協なき映像作りで知られるキャメロンは、どのようにして“20世紀最大の海難事故”を映画化したのか? 柔軟な発想とこだわりに満ちあふれた、映画の舞台裏の10のエピソードを紹介。これを知れば、また違った視点から映画を楽しめるだろう。

『タイタニック』から24年…レオナルド・ディカプリオの現在

映画史に残る名セリフは現場で生まれた

『タイタニック』を代表するシーンのひとつが、ジャック(レオナルド・ディカプリオ)が船の船首で「オレは世界の王者だ!」と叫ぶくだり。キャメロンがアカデミー賞の授賞式で叫んだことでも知られるこのセリフは、現場での即興で生み出された。このシーン、脚本上では、セリフをいうのはジャックの親友ファブリツィオのみ。しかし撮影中にジャックのセリフを追加することにしたキャメロンは、悩んだ末「大きく腕を広げて、オレは世界の王者だと叫んでくれ」と指示。BBC Radio で撮影を振り返ったキャメロンによると、ディカプリオはベタなそのアイデアに戸惑っていたそうだが、おかげで映画史に残る名シーンが誕生した。

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古典的トリックで切り抜けた出港シーン

海辺に作られたタイタニックのオープンセットは、海を背にした船の右舷側のみが作られた。このセットは冒頭の出航シーンにも使われたが、セットが完成した後で、実際に接岸されていたのは左舷側であると判明した。そこでキャメロンは、画面に映る看板などの文字を反転して作製。俳優たちにも利き手を逆に演技するよう指導し、撮影後に映像を左右反転させる古典的なトリックで切り抜けた。

幻に終わったレプリカを使った海上での撮影

20th Century-Fox / Photofest / ゲッティ イメージズ

タイタニック号の航海を体感してもらうにはどんな手法が最適か、キャメロンとクルーは多くの撮影法を検討した。特にキャメロンが惹かれていたのが、大型タンカーの甲板にほぼ実寸大のタイタニックを再現して海上で撮るという計画。しかし、CGによる海の表現が実用的になったことから、撮影しやすく安全な陸地にセットを建て、海を合成することにした。沈没シーンは精巧な外観のレプリカを大西洋に沈める案も出されたが、建造費2,500万ドル、完成までに2年半かかることが判明して却下された。

逃げるジャックとローズは吹き替えだった

Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

船が沈みはじめた終盤で、銃を手にしたキャル(ビリー・ゼイン)をかわしたジャックとローズ(ケイト・ウィンスレット)が、廊下で押し寄せてくる海水から逃げるシーンがある。この時カメラに向かって走るふたりは、スタントダブルが演じていた。スローモーションで表情もはっきり映っているが、これは合成による差し替え。水を流す前の廊下を走るディカプリオとウィンスレットの映像から顔を切り抜き、スタントマンの映像に貼り付けたのだ。

ジャックの画才はキャメロンゆずり

画家として豊かな才能を持つジャック。しかし演じるディカプリオはそこまでの画才は持っていなかったようだ。ローズの裸婦画やスケッチブックの絵を描いたのはキャメロンで、画面に映り込んだ手も監督本人のものだった。学生時代に美術を学び、低予算映画の美術デザインやSFXでキャリアをスタートしたキャメロンは、絵のプロフェッショナル。 ABC News によると、そんなキャメロン画伯のローズの木炭画は、2011年にオークションに出品され、およそ16,000ドル以上(約176万円・1ドル110円計算・落札価格非公開)で落札されたという。

平衡感覚を奪われた過酷なスタント

船が氷山に衝突し浸水していく中盤以降の撮影には、最大90度(垂直)まで角度を調整できる、25メートル四方の甲板のセットが使われた。45度まで傾けるとスタントマンがすぐに落ちていってしまうため、主に使われたのは5度~25度前後。それでも傾斜したセットで撮影に臨んだキャストやクルーは、平衡感覚を失い錯覚に悩まされた。この甲板では、二人のスタントが落下時に骨折するなど、アクシデントも発生した。ハードなアクションで知られるキャメロンだが、それまで現場で大きな事故を起こした経験はゼロ。これ以降、スタントマンはワイヤーでつられることになり、危険なカットはCGキャラクターが使われた。

巨大ミニチュアによる沈没シーンの舞台裏

船のロングショット用に、数種類のミニチュアが用意された。そのスケールは 1 / 20 から 1 / 4 と大きく、最大の見せ場である沈没シーンで使われた中央部から船尾までの船体後部のミニチュアは長さ約18メートル。撮影用に専用のプールも作られた。プールの水深は8メートル弱のため、何度もカメラを止めミニチュアを切断しながら撮影された。

製作費オーバーでギャラ返上

Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

キャメロンこだわりの撮影によって、予算は超過し公開時期もサマーシーズンからクリスマスにずれ込んだ。その間スタジオ側から一部シーンの削除を迫られたキャメロンは、代わりに前払い分の監督料と初公開時の利益配分を辞退した。その額は千数百万ドルとも報じられている。そうまでして当初の内容にこだわった理由についてキャメロンは、スタジオの意向に沿って働くだけの人間ではないことを示したかったと語った。

完璧主義者キャメロン唯一のミス?

自他ともに認める完璧主義者のキャメロン。タイタニック号を正確に再現するため、ネジの頭の角度にまでこだわった彼が認めたミスが、クライマックスの夜景だった。天体物理学者ニール・ドグラース・タイソンは、海に浮かんだローズが眺める星空は、当時の事故現場から見える星と位置が違うと指摘。2012年に公開された3D版で修正された。

キャメロンが大ヒットを確信したシーン

映画の仕上がりに満足していると語ったキャメロンが、特に手応えを感じたのが、船体が沈みきるシーンだった。船尾の手すりにつかまり寄り添うジャックとローズ越しに、船がゆっくり海中に飲み込まれていくカットを目にしたとき、これは当たるぞ! と確信したことを The Hollywood Reporter に振り返っている。キャメロンらしい壮大なスケールで捉えたドラマチック&スペクタクルな映像が、『タイタニック』を世界歴代興行収入3位(公開当時は1位)の大ヒットに導いたのだ。(神武団四郎)

参考文献:Cinefex日本版

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