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「何食べ」山本耕史、逆転の発想で勝利 「原作キャラに似てない」からのスタート

山本耕史
山本耕史 - 写真:杉映貴子

 2019年に連続ドラマ化され、西島秀俊演じる弁護士“シロさん”と内野聖陽ふんする美容師“ケンジ”のほろ苦くも温かい恋模様が大きな反響を呼んだ「きのう何食べた?」。そんな二人と同じく、山本耕史演じる小日向大策と、その恋人ジルベールこと井上航(磯村勇斗)との関係も、物語に深みを与えていた。特に小日向は原作でも人気が高く、実写化が発表された際にはネット上では賛否を含め、さまざまな意見が飛び交った。演じた山本も「この役は僕じゃないんじゃない?」と思ったというが、ドラマがスタートすると、原作ファンから多くの賛辞を受けるまでになり、『劇場版 きのう何食べた?』での活躍も期待する声が多数聞かれた。そんな小日向というキャラを、山本はどのように構築していったのか? 話を聞いた。

【動画】インタビューの模様

「原作のイメージと違う」を逆手に取ったアプローチ

『劇場版 きのう何食べた?』より山本耕史演じる小日向大策(C) 2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 (C) よしながふみ/講談社

 本作は、累計発行部数840万部(電子版含む)を突破したよしながふみの人気コミックを実写化したドラマの劇場版。料理上手で倹約家の弁護士・筧史朗(通称シロさん/西島)と人当たりのいい美容師・矢吹賢二(通称ケンジ/内野)の、京都旅行に端を発した切実な問題が描かれる。

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 山本が演じた小日向は、原作では大柄で無骨、“ガチムチ”がトレードマーク。そんな小日向のオファーを受けた山本は「これまで実在の人物を含め、いろいろな役を演じてきましたが、漫画原作に限っては、作品のファンの愛が強いという印象があったので、やや構えるところもありました」と率直な胸の内を明かす。

 過去にも山本は漫画原作の実写化を経験したが、アプローチ方法は「作品によりますよね」と語る。続けて山本は「例えば、僕がやらせていただいた吸血鬼(映画『彼岸島』(2010))など、すごくビジュアル的に特徴があるキャラクターだったら、グッと寄せていくアプローチ方法もあります。でも、本作のようにいわゆる普通の人の場合は、演じる俳優がキャラクターのイメージに近いかどうかで、やり方は変わると思う」と場数を踏んだゆえの持論を展開する。

 山本自身「原作を読んで『えっ、これって僕じゃないんじゃない?』って思ったんです。一般的に世間の方が僕に抱いているイメージとは違いますよね」と、自身のパブリックイメージと小日向は対局に位置する感覚があったという。実際、本作の映像化が決まった際、山本と小日向のイメージが違うという声もファンから上がっていた。

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 しかしこうした声があったからこそ、大胆にアプローチできたとも。「原作のイメージだと、僕よりピッタリな俳優さんはたくさんいらっしゃると思います。そういう方が演じると『ビジュアルはこうだ』とか『声はこんな感じだ』とか制約も多いと思うんですよね。でも、逆に僕のように『イメージと違う』と言われると、思い切ったことができる」と逆説的な発想で臨んだ。

 山本は、原作の小日向のキャラクターに寄せるというアプローチではなく、人物のテイストを理解しつつ、自分なりの解釈で小日向を演じようと決心した。「最も簡単なのは、体を大きくしてビジュアルを寄せること。でも台本を読んでいても、あまり小日向の身体的な“ガチムチ感”を強調しているシーンはなく、この作品での僕の役割は、原作の小日向に寄せることではなく、小日向という人間の本質をしっかりと捉えることだと考えました」

 ドラマ版で最初に山本がアプローチしたのが、普段の小日向のテンションの設定。「(磯村勇斗演じる)航くんといるときの小日向って、すごくデレデレで甘い感じですよね。そこが引き立つキャラにするためには、普段の小日向は、航くんといるときと、一番遠い雰囲気にしたいと思ったんです」

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 そこから、正月に放送されたスペシャルドラマで山本は、小日向がタンクトップを着て体格の良さを強調するシーンを提案するなど試行錯誤はあったものの、ビジュアル的な部分には頼らない役づくりを心掛けた。

 一例として、必要以上にジッとシロさんを見たり、ケンジと相対するときも、やや湿り気のあるねっとりとした芝居を軸に持っていった。山本は「原作の小日向さんってどちらかというと、清々しくて爽やかなイメージだったので、原作とは全然違いますよね」と笑うが、この小日向像は視聴者からも大きな反響があった。山本自身にも「ほかの役を演じていても小日向さんに見える」という声が届いているようで「嬉しい半面、それはそれで困るんですけれどね……」と苦笑いを浮かべるが「すごく反響の大きい作品。改めて出演させてもらえてありがたかったです」と感謝を述べていた。

先輩との芝居は引っ掻き回し、後輩にはさりげないアドバイス

『劇場版 きのう何食べた?』より西島秀俊、内野聖陽、磯村勇斗らと(C) 2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 (C) よしながふみ/講談社

 幼少期から舞台、テレビドラマ、映画の現場を経験している山本だが、本作では年齢が上の西島、内野、そして年下である磯村と、中間に位置する立ち位置での現場だった。「内野さんは昔から何度もお仕事をしていて気心が知れている関係でした。一方の西島さんは本作が初めてのお仕事で、最初はすごくきっちりした真面目な方なのかなと思ったのですが、実際はすごく砕けた方で、お兄ちゃんみたいな感じでした。だから二人の前では『とにかく笑わせて、引っ掻き回してやろう』みたいな思いで演じていました」

 一方、磯村に対しては「(ドラマでの)彼のクランクインの日が、内野さんと西島さんも含めた4人の中で思い切りしゃべり倒すというシーンだったので、ものすごいプレッシャーだろうな」と思ったという。そんななか、磯村が最初に提示した芝居が「ちょっと沈んだ芝居だった」と感じた山本は「トーンのチューニングを少しだけ明るくするといいかも」と声を掛けると、内野も「それが見てみたい」と呼応。磯村もすぐに修正し、より魅力的なジルベールが現れたという。「僕が偉そうに言うのもおこがましいですが、適応力もあり、堂々と演じていました」と山本は磯村を称賛していた。

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 「きのう何食べた?」の現場は、スタッフ、キャストが「良いものを作ろう」という思いのもと、一丸となってアイデアを出し合った現場だったという。「僕は台本を読んだとき、多くが想像していることと逆のことをやりたくなってしまう」と役者としての嗜好を述べると「まずテストなどでそれを試すんです。それで監督が『ダメ』と言ったら戻しますが、そのままやらせてもらえると、『ここまではやって大丈夫なんだな』と演技の幅が広がっていくんですよね」と語る。

 こうした一例として山本が挙げたのが、西島演じるシロさんと、小日向が初めて会ったシーンだ。「ドラマ版で、小日向とシロさんが出会ったとき、スマホの“ふるふる機能”を使って連絡先を交換するシーン。実は台本になく、動作を含めてかなり自由にやらせてもらったのですが、カメラさんを含め面白がってくれて……」

 こうしたスタッフ・キャストの随所に見られる遊び心が「きのう何食べた?」が多くのファンに愛される作品になった要因なのかもしれない。(取材・文:磯部正和)

山本耕史、実写ならではの小日向さんを演じた『劇場版 きのう何食べた?』インタビュー » 動画の詳細
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