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柳楽優弥、真のプロフェッショナルは「孤独」

柳楽優弥
柳楽優弥 - 撮影:高野広美

 Netflix映画『浅草キッド』で、伝説の浅草芸人・深見千三郎のもとに転がり込み、笑いの修行に明け暮れた若き日のビートたけしを熱演した俳優の柳楽優弥。「果たして自分にたけしさんを演じ切れるのか、プレッシャーと同時に怖さを感じた」という柳楽が、役づくりの難しさを振り返るとともに、プロフェッショナルを追求した本物だけが抱える“宿命”について語った。

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 本作は、ビートたけしが自ら作詞・作曲した同名楽曲と自叙伝を基に、『陰日向に咲く』『青天の霹靂』の劇団ひとりが監督・脚本を手がけた青春映画。昭和40年代の浅草を舞台に、大学を中退し、ストリップとお笑いの殿堂「浅草フランス座」に転がり込んだタケシ(柳楽)は、数多くの人気芸人を育てた深見千三郎(大泉洋)に弟子入り。個性豊かな仲間たちと切磋琢磨しながら、やがてその才能を開花させていく。だが、テレビの普及によって演芸場の客入りは減る一方、タケシは苦渋の決断を下すことになる。

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大ファンだからこそ演じることに怖さを感じた

 マネージャーから届いた新作の企画書。目を通してみると、浅草で下積み生活を送る若き日のたけしのオファーだった。今や映画監督、俳優としても世界的評価を受ける超大物の青春時代を演じるとあって、さすがの柳楽もひるんだという。「え! たけしさん役ですか? という驚きから始まって。大好きすぎてなかなか冷静に受け止められず、数日間考え込みました。果たして自分に演じ切ることができるだろうか……プレッシャーと同時に怖さも感じてしまった」と当時の心境を振り返る。

 柳楽のたけしに対するリスペクトは、主に映画を通して育まれたものだ。「僕が主演した『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)の撮影の時に、役の参考にしようと思って『ザ・ワールド・イズ・マイン』という漫画と『スカーフェイス』、そしてたけしさんが監督・主演した『その男、凶暴につき』を持参したんですが、毎日擦り減るくらい観ていました。映画の中で醸し出すたけしさんの狂気みたいなものがすごくかっこ良くて……今回は素のたけしさん役なのでぜんぜん違いますが、こんなチャンスは滅多にないので、挑戦するしかないという結論に至りました」と出演の経緯を明かした。

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技術を要した役づくりに悪戦苦闘!

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『浅草キッド』より

 役づくりは想像以上に苦労したという柳楽。感情表現だけでなく、たけしの独特の動きや口調、深見師匠から叩き込まれたというタップダンスなど、技術を要する作業が多かったからだ。「クランクイン前の準備段階として、約4か月にわたってタップダンスと漫才の練習に明け暮れ、たけしさんの喋り方から細かいクセまで、(芸人の)松村邦洋さんに徹底的に指導していただきました」。だが、身も心も完璧にたけしに成り切って撮影に挑んだにもかかわらず、「自分がどんな風に見えているのか」全く想像できず、不思議と手応えを感じられなかったという。

 「劇団監督って、特に褒めてくれるわけでもなく、割と淡々とされているので、『はい、OK』と言われても『これで大丈夫だったのかな』とちょっと不安になることもあって。だから余計に、監督に認めてもらいたくて必死に食らいついたのを覚えています。でも、試写を観て驚きました。監督の手の中で転がされていたというか、完全にコントロールされていたことに気付かされたんです」

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 完成作品を観て、改めてひとり監督の手腕に唸らされたという柳楽。今では映像の中に映し出される若き日のタケシにかなり手応えを感じているようだ。

真のプロフェッシナルだけが持つ孤独感

 深見と若き日のタケシとの愛にあふれた師弟関係に「グッときた」という柳楽。「カッコいい先輩のそばにいて、その背中を見たいし追いかけたい。ダメな時は『違うだろ、バカヤロー!』って言ってくれたら、後輩としてどれだけ心強いか」と憧れを口にする。「僕も31歳になって、後輩もたくさん出てきているんですが、今、振り返ってみると、先輩たちからいろんな場面で優しさを受けてきたんだな、とだんだん思えるようになってきて。次は自分が後輩にその背中を見せる番なので、僕なりにかっこ良くありたいなと思いますね」としみじみ語る。

 ただ、どんなに素晴らしい師弟関係を築いても、真のプロフェッショナルを目指す者同士、ある“宿命“が待っていると柳楽は持論を述べる。「たけしさんを演じていて感じたのは、心から慕っていた深見師匠が亡くなられたあと、人一倍“孤独”を感じていたんじゃないかなと。もうなにをやっても、本気でバカヤローと言ってくれる人がこの世にいないわけじゃないですか。深見師匠もたけしさんに去られて、同じような思いをされたかもしれないし。今のたけしさんを見ていると、どこか孤独を背負っている感じがあるというか……。でもそれがまた、かっこ良かったりするんですよね」

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世界的なスーパームービースターを目指したい

 本作は、Netflixの配信サービスによって日本を飛び出し、なんと世界190カ国で配信される。これに対して柳楽は「僕はすごくラッキーだなって思います。今回の作品は、ハリウッド映画のように世界の人に向けて作った作品ではないと思いますが、興味を持って選んでいただければ、インド人も、イタリア人、フランス人、アメリカ人も、世界中の人々に観ていただくチャンスがある」と声を弾ませる。

 「こういう機会がどんどん増えていけば(日本映画も)ますます国際レベルに成長していくと思うし、自分も俳優として世界を意識していかなければって思いますね。たけしさんみたいな『世界に通用する“スーパームービースター”を目指している』って周りの人に言うと、みんなキョトンとするんですが(笑)、Netflixが台頭したように、この先、何が起こるかわからないですから!」

 浅草で出会った師匠と弟子の魂の触れ合い……日本特有の人情が絡む本作が、世界の国の人々の目にどう映るのだろうか。期待で胸が膨らむばかりだ(取材・文:坂田正樹)

Netflix映画『浅草キッド』は全世界独占配信中

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