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嵐莉菜「他の人と違う」と悩んだ過去 初主演映画で自身を投影

嵐莉菜
嵐莉菜

 クルド人の少女が自分の居場所(アイデンティティ)に葛藤し、成長していく姿を描いた映画『マイスモールランド』(5月6日公開)で、17歳の主人公サーリャを演じているのが、本作で俳優デビューを果たした嵐莉菜(18)だ。5か国のマルチルーツを持ち、「わたしにしかできない」という強い思いを抱いて、複雑なキャラクターをみずみずしく体現した彼女が、かつての自身の悩みや、役への深い共感について明かした。

【動画】嵐莉菜が英語&ドイツ語であいさつ!

 本作は是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」に在籍する新鋭・川和田恵真実監督が、長期にわたる取材をもとに脚本を書き上げたオリジナルストーリー。生活していた地を離れて家族とともに来日し、幼い頃から日本で育ったクルド人のサーリャは、現在は埼玉の高校に通い、大学進学を目指す受験生。しかし、一家の難民申請が不認定となり、在留資格を失ったことでサーリャは過酷な現実に直面していく。

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『マイスモールランド』より嵐演じる主人公サーリャ (C) 2022「マイスモールランド」製作委員会

 「もちろん、置かれた状況は全く違いますが、日本人として普通に生活したいのに見た目で“外国人”だと判断されてしまう。それはわたしも幼少期から葛藤してきたサーリャとの共通点で、彼女に強いつながりを感じました」と話す嵐には、日本とドイツにルーツを持つ母親と、イラン、イラク、ロシアのミックスで日本国籍を取得している父親がいる。

 「日本生まれで日本育ちなのに、初対面の方に『どこから来たの?』と聞かれたりすると『ここはわたしの母国なのに、そうは見てもらえないんだな……』と思って、以前はすごくつらかったですね。どうしたら、そういうふうに聞かれなくなるんだろうと、ずっと考えていました。中学生の頃は校則も厳しくて、髪や目の色を疑われたりするのが悲しかった。今は仕事でストレートパーマをかけているんですけど、もともとはクセ毛なので、当時は『巻いているの?』と確認されたりして」と振り返る。

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 多感な時期だけに、相手に悪気がなくても心は傷ついてしまう。「自分でも他の人と違うという思いはあって、みんなと一緒でありたかった。でも、無理やり一緒にするというのも、自分のことを否定されているような気がして……」と長い間、悩んでいたが、今では「外国人かと聞かれても、むしろ興味を持ってくださっているんだと前向きな気持ちになれています」と明るく笑えるほどに吹っ切れるようになった。

難民申請が不認定となり、在留資格を失ったことでサーリャと家族は追い詰められていく (C) 2022「マイスモールランド」製作委員会

 本作のオーディションで、嵐と話をした川和田監督は「そうした葛藤を理解できる彼女になら、この複雑な環境にいるサーリャをまかせることができる」と確信。当初の脚本では反抗的な少女として描いていたサーリャを、嵐本人に近いキャラクターに寄せていった。「幼少期のエピソードやセリフの言い方など、わたしに合わせてくださったところも多かったおかげで、とても演じやすかったです。シーンによっては、素の表情を自然に出せたところもありました。それでも演じ方が分からなくなって、何回も撮り直したシーンもあって。現場ではすごく焦ったり、どう直せばいいかを考えたりして大変でしたが、OKが出たときはホッとしました。すべてが刺激的な体験でしたね」と嵐。本作が初監督となる川和田監督と、演技初挑戦の彼女は“初めて同士”。現場では活発な意見のやりとりが行われた。「監督が『何でも聞いて!』と言ってくださったので、遠慮なく聞いていました(笑)。監督との話し合いで、サーリャのことをとてもイメージしやすくなりました」と、フレンドリーなコミュニケーション環境を作ってくれた監督に感謝している。

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 撮影前のワークショップで忘れられないのは「監督と一緒に、クルド人の女の子に会いに行った」ことだ。「家庭訪問だったので、ご家族の方たちとも話をして、お手製のクルド料理をいただきました。楽器も演奏してくださって、楽しい時間を過ごして……。それだけに、みなさんが直面している状況について聞いたときは、胸がしめつけられるように苦しかったです。高校生の女の子は、サーリャと同じように『大学進学がどうなるか分からない』と言っていて。訪問の後、台本を読んでいるときに、彼女のことを思い出して泣いてしまいました。演じている最中も、ずっと頭の片隅にみなさんがいました」。嵐にとって、台本の中の物語と、実際のクルド人家族の存在が重なったことは、「これは絶対に、わたしが最後までしっかりサーリャを演じなければいけない」と決意を新たにさせる大きな出来事だった。

 全編を通して、今回が初めてだとは信じられないほど、堂々とした自然な演技を見せている嵐。特に撮影前に監督から「出し切ってください」と言われたクライマックス・シーンでは、渾身の演技を披露。「カットの声がかかった後、周囲を見たら、監督も、周りのスタッフの方々も泣いていて。監督が『ありがとう』と言ってくださったときは、一番嬉しかったです。演技をすることができて本当に良かった」と強く実感した瞬間だった。

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 現役高校生である嵐は、ルックスやジャンルに捉われず新しい時代をサバイブしていく多様な女の子のロールモデルを発掘する講談社主催のオーディション「ミスiD 2020」でグランプリ、ViVi賞をダブル受賞。2020年から女性向けファッション誌「ViVi」で専属モデルとして活動している。「中学2年生のときに事務所に入って、本格的にお仕事を始めたんですけど、初めはモデル業のことしか頭になかったんです。でも、事務所の先輩である中条あやみさんや、同年代の人たちが出演した作品を観ていて、いつか自分も演技の仕事をやってみたいなと思うようになりました。でも、まさかこんなに早く夢が実現するとは想像もしていませんでした」と素直な喜びを語る。

 本作は第72回(2022年)ベルリン国際映画祭でジェネレーション部門へ正式招待。多くの観客に深い感銘を与え、日本初となるアムネスティ国際映画賞スペシャル・メンションを授与された。「正式招待をしていただけたことだけでもありがたく、今も考えると、まだドキドキしています(笑)。国境を超えて、作品を評価してもらえるって、本当に光栄なこと。演技は自分じゃない人になれるところに、すごく魅力を感じているので、これからも機会をいただければ、いろんな役に挑戦してみたいです」と前に広がる未来に目を輝かせた。(取材・文:石塚圭子)

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