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これってブレイク!? 攻め続ける俳優デビュー48年の原田美枝子

原田美枝子
原田美枝子

 菅田将暉とダブル主演の映画『百花』(公開中)で第70回サンセバスチャン国際映画祭(スペイン)に参加した原田美枝子が、現地で語った。本作は川村元気監督が、本映画祭で日本人初となる最優秀監督賞を受賞する高評価を得たが、原田は「ここは上映後に観客が花道を作ってわたしたちを見送ってくれると聞いてはいたのですが、皆さんが心から作品を感じてくれたと思ったらうれし涙を止められなくて。まさか自分が泣くとは思いませんでした」と振り返った。

【動画】記憶を失っていく母と過去の記憶と向き合う息子『百花』予告編

 同作は、『モテキ』(2011)や『君の名は。』(2016)などのプロデューサーで知られる川村の長編初監督作で、自身の同名小説が原作。祖母の実体験をベースに、認知症になった母と、その息子が、過去の記憶と向き合うことで親子の愛を取り戻していく物語。原田は同じく川村原作の『世界から猫が消えたなら』(2016)に出演しているが「川村さんがどれくらいすごい人か知らなかったんです」と笑う。

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 原田は川村監督の印象について「頭もいいし、勉強もしているし、人の見極め方も優れている。撮影の初めは何をしたいのかわからなかったのですけど、途中から自分が思っていることよりもっと先のことを見ているんだなと思って。その時から『お任せます』となりました」と言う。

 本作出演への運命を手繰り寄せたのは原田自身だ。原田は認知症になった母親が“15の時から女優をやっている”と、娘の人生と自分の人生を混同して語り始めたことから、「ならば映画を撮って本当の女優にしてあげよう」と短編ドキュメンタリー映画『女優 原田ヒサ子』(2019、Netflixにて配信中)を自主制作。劇場公開もされ、その公開初日に川村監督が観賞に訪れ、後日、『百花』のオファーを受けたという。

 原田は「母が認知症になったことをマイナスと捉えるのではなく、母からもらったギフトのように感じています。映画を考える時間とか、母を通してみる最悪な自分にとか(苦笑)。何より母の姿を見ながら認知症になるとは? 人生の最後とか? 体は老いていくけど心はどうなるのか? などを考えるきっかけになりました」と語る。

 今回のサンセバスチャン国際映画祭でも黒澤明増村保造深作欣二ら日本映画界のレジェンド監督たちと仕事をしてきた原田の経歴が注目されたが、自主制作をしたことで日本でも改めて映画人・原田への関心も高まっている。今年8月に大分で開催された湯布院映画祭では「凛として」と題した原田特集が組まれ、『女優 原田ヒサ子』や勝新太郎監督のテレビドラマ「新・座頭市 (第二期)第10話『冬の海』」が上映された。

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 第35回東京国際映画祭(10月24日~11月2日開催予定)では黒澤明賞の選考委員のほか、Nippon Cinema Now に『百花』、ガラ・セレクションに『そして僕は途方に暮れる』(2023年1月13日公開)、同映画祭と国立映画アーカイブとの共催企画「長谷川和彦とディレクターズ・カンパニー」内で『青春の殺人者』(1976)の上映と、プチ原田特集だ。

 原田は「自分にとって旧作は“過去は過去”。ただ湯布院映画祭で勝さんの傑作と言われる『冬の海』をスクリーンで観てフランス映画みたいで、改めて、勝さんって天才なんだと衝撃を受けました。黒澤さんや勝さんたちが映画作りで大事にしていたことは、どの時代でも誰にとっても大事だと思うので、それは伝えていきたいなと思いますね」。 

 さらに今年はNHKの連続テレビ小説「ちむどんどん」にも出演しており、家族からも「ネットを開くと年中、お母さんが出てくる。ブレイクしてない?」と言われるという。原田は「これがブレイクって言ういうこと? と思いました(笑)。この1年でいただいた仕事はここまで続けてきたからこそ出来る役で、しかも女の人がありきたりなところに収まっていく役でもない。自分が通ってきたことを伝えられたり、そういうことを伝えられる役があると言うのがありがたいです」と噛み締める。

 俳優デビューしてから48年。「もっと上に行ったらどんなものが見えるのだろう? どんな人に会えるのだろう? の繰り返し」だったと言う。“生きる映画界のレジェンド”では終わらない。並々ならぬ好奇心で、原田はこれからも攻め続けてくれるに違いない。(取材・文:中山治美)

『百花』予告【2022年9月9日(金)公開決定】 » 動画の詳細
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