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MONOS 猿と呼ばれし者たち (2019):映画短評

MONOS 猿と呼ばれし者たち (2019)

2021年10月30日公開 102分

MONOS 猿と呼ばれし者たち
(C) Stela Cine, Campo, Lemming Film, Pandora, SnowGlobe, Film i Vast, Pando & Mutante Cine

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

暴力と恐怖が無垢な若者たちの心を蝕む

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ジャングルに囲まれた南米の山岳地帯、武装組織に所属する8人の若者。本部の指示に従ってアメリカ人女性の人質を監視し、厳しい訓練の合間にささやかな青春を謳歌する無邪気な彼らだが、しかしある事件をきっかけに各人の自我が芽生え、やがて戦闘の勃発とともに仲間同士の信頼関係が崩れていく。暴力と恐怖に支配された社会では、無垢な少年少女もその影響から逃れられず、大人と同じように暴力と恐怖で他者を抑えつけようとする。長きに渡るコロンビアの内戦の歴史を背景にしているそうだが、しかしあえて場所も組織も時代も特定しないことで、同じようなことが世界中のどこでも起きうることを示唆する。ヘルツォークを彷彿とさせる力作。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

人類の本質は民主主義に向いているのか疑問も!?

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

暴力的な大人によって戦闘に駆り出される少年兵は哀れだし、本作で猿と呼ばれる若者にも同情の余地あり。呼び方からして失礼だし! 厳しい訓練に明け暮れ、無線で繋がった組織に従うだけの若者がある事件をきっかけに自我に目覚め、集団が徐々に崩壊。各人の善悪基準で突き進みながら、凶暴性を発揮したり、家族愛に目覚めたり、優しさを失ったり。極限下にある人間の選択にそれぞれの人間性がのぞく。文明の代弁者と思われる人質の決断も然り。「蝿の王」を思わせる寓話的な物語で、暴力的な本質を持つ人類に民主主義が本当に最適なのか疑問も湧く。アメリカを筆頭に揺らぎ始めている民主主義に未来はあるの?

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

あらゆるものの色が濃い世界が、恐ろしく、美しい

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 空が青く、炎が赤く、植物は緑色。あらゆるものの色が濃い。社会から隔絶され、南米の山岳地帯で子供たちだけで生きる8人は、大人によってある組織の一員として洗脳されており、命じられた規則を守って暮らしているが、その規則に破綻が生じたとき、ただの生き物になる。南米の密林なのでまずは生き抜くことが最優先であり、人数が少ないので「蝿の王」のような政治性を持つ余裕もなく、子供なので衝動を制御しようとする意識はまるでなく、子供たちはただ動物的なものになる。すると彼らの目に、世界はますます色が濃く、小さなものが細部まで鮮明に見えて、樹木の葉に宿る朝露がみずみずしく輝く。その世界は恐ろしいが美しくもある。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

何もかもが凄い

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

眩暈がする圧巻の映画体験。南米コロンビアの山岳と密林にマジックリアリズムの“土着と前衛の血”が煮えたぎる。ゲリラ組織に属する8人の少年少女兵は、たまに来るメッセンジャー(元FARC司令官が演じる)に監視されつつ米国人女性の人質を見張る。全体の支配状況が明示されるわけではないが、権力構造の寓話の隅々まで内戦の歴史のリアルが詰まっている。

監督はブラジル出身のA・ランデス(80年生)。筆者が最初に連想したのは『蝿の王』並びに『ハンガー・ゲーム』だが、まるで「G・ローシャ党」の末裔が手掛けた未分化な思春期のティーンムービー。異才ミカ・レヴィの音楽は、蚊の音など強調される現実音とも絡まり超呪術的!

この短評にはネタバレを含んでいます
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