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生き難い現代の世俗に浸かり、声を荒げない大人のダンディズム

2014年8月21日 森 直人 グレート・ビューティー/追憶のローマ ★★★★★ ★★★★★

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グレート・ビューティー/追憶のローマ

冒頭、セリーヌの『夜の果てへの旅』の一節が引用されるように、本作に底流するのはニヒリズムである。しかし甘美で、優雅で、どこか明るい。その印象は主人公である初老の業界人の、ダンディズムという名の必死の覚悟が支えている。

先行作『甘い生活』『フェリーニのローマ』が都市文化の頽廃に対する風刺の領域にあったとすれば、本作はもはや崩壊美の中の彷徨だ。死に近い空虚を引き受ける佇まいが濃密な色気を漂わせる。

本作は確かにローマについての映画だろうが、実は筆者が「追憶」したのは加藤和彦、今野雄二といった亡き先人達だ。ソレンティーノ監督は、現代が奪いつつある生き方の美学にこそレクイエムを捧げたのではないか。

森 直人

森 直人

略歴:映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「メンズノンノ」「Numero TOKYO 」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況:YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。11月27日より、前田聖来監督(『幕が下りたら会いましょう』)の回を配信中。ほか、松浦祐也さん&カトウシンスケさん(『ONODA 一万夜を越えて』)、首藤凜監督(『ひらいて』)、大石規湖監督(『fOUL』)、𠮷田恵輔監督(『空白』)、春本雄二郎監督(『由宇子の天秤』)、ウエダアツシ監督(『うみべの女の子』)、沖田修一監督(『子供はわかってあげない』)、内山雄人監督(『パンケーキを毒見する』)、片山慎三監督(ドラマW『さまよう刃』)、横浜聡子監督(『いとみち』。月永理絵さんとのダブルMC)、松居大悟監督(『くれなずめ』。SYOさんとのダブルMC)、藤元明緒監督(『海辺の彼女たち』)、さかはらあつし監督(『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』)、池田暁監督(『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』)、前田弘二監督&脚本・高田亮さん(『まともじゃないのは君も一緒』)、岨手由貴子監督(『あのこは貴族』)、今泉力哉監督&冨永昌敬監督(脚本/『あの頃。』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

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