ワクワクとハラハラ、歓びと涙、躍動感あるアクション!

映画の原初的な愉楽が詰まった驚異の傑作。ヴィーガンを公言するホアキン・フェニックスが製作総指揮に名乗りを挙げたが、『動物農場』や『ベイブ』に通じる風刺性も装備しつつ、この無双の名優は母豚GUNDAの表情――「非・演技」の凄さに嫉妬・感嘆したのではないかと思ってしまう。
ドキュメンタリーと銘打ちつつ、実は綿密な「演出」を凝らしたミニマリズム表現。いくらでも加工し盛れる映像の時代に、コサコフスキー監督は諸要素を削ぎ落とす事で動きや些細な音への集中を高めた。キュアロンが『ゼロ・グラビティ』から『ROMA』に旋回した様な、今のデジタル技術を駆使し、映画史の初期型への遡行を試みる流れにある大きな成果。