一見静かだが、実はとても野心的

ひとつの農場を舞台に豚の母親と子豚たちの様子を静かに追う、一見のどかで詩的なドキュメンタリー。ナレーションもなく、動物中心の映画にありがちな、動物をかわいく見せようとする演出もない。それでも観る者は、子供がある程度成長しても、まだ気にかけている母親の様子に、心をなごませてしまう。だからこそ、結末がずしんと響くのだ。生涯ヴィーガンを貫いているホアキン・フェニックスがエグゼクティブ・プロデューサーを務めているのも納得。筆者はもともとベジタリアンだが、今作を見て考え直す人は多いのではないか。「かわいい」と言いつつ、その動物を食べている人間の矛盾を突く野心作。