ラナ・ウォシャウスキー監督の「私の物語」

衝撃を狙わず、愚直なほどの正直さに徹した内容に筆者は好感を持った。ネオことトーマス・アンダーソンが、かつて伝説的なソフト『マトリックス』を発表したゲームデザイナーとの設定からしてパロディックな構造だが、自作の呪縛に苛まれている点など、メタレベルな視座からの監督の自己言及性が全編を覆う。
ティファニーという別名を与えられたトリニティーを巡って『めまい』式展開を見せつつ、「救世主の再定義」との主題に沿って上がってくるのはジェンダー論的な更新だ。それは監督が「本当に語りたかったこと」の20年越しの実現かもしれない。そしてシリーズ恒例、日本アニメのオマージュ大会は『鬼滅の刃 無限列車編』まで伸びた!