終わらない旅の過程、繊細な揺らぎを描く

『追憶と、踊りながら』の俊英監督ホン・カウ(75年生)の長編第2作。移民としての自身の実体験を反映させた自伝的内容だ。両親の遺灰を埋葬するため30年ぶりに祖国ヴェトナムを訪れた主人公キット(ヘンリー・ゴールディング)。出会い系で知り合ったハンサムな黒人青年ルイスとの甘い時間を楽しみつつ、キットは大都会へと変貌を遂げた“異国のような祖国”を彷徨う。
「ホーム」を見失った者によるアイデンティティの探索。経済成長が著しいホーチミンと、古き良き情緒を残すハノイの街並みが素晴らしい。都市空間の個性と重層性が、まるでテーマパークを巡る観光客のように、本質的な異邦人としてのキットの心象を際立たせる。