変わりゆく家族の変わらぬ愛情と絆

大好きなパパからトランジェンダーであることを告白された少女が、女性として生きる道を選んだパパの決断に苦悩する。実際にトランス女性の父親を持つマルー・ライマン監督の自伝的な作品。大人びた姉がわりとあっさり受け入れてパパとガールズ・トークに花を咲かせるのに対し、妹のエマは「今までのパパ」のままでいて欲しい。親である前にひとりの人間として、その選択を尊重して幸福を願うことは、まだ幼い少女には難しいのだ。そんなエマの心の変遷を丹念に汲み取りながら、変わりゆく家族の変わらぬ愛情と絆を柔らかに描く。エンディングに流れるABBAの「ヘイ・ヘイ・ヘレン」が、固定概念から解き放た親子の新たな門出を祝福する。