生き残ってしまった者の癒えない罪悪感

第二次世界大戦下のロンドンでイギリス人家庭に預けられたユダヤ系ポーランド人の少年。将来を期待される天才ヴァイオリニストだった彼だが、しかしデビュー・コンサートの直前に忽然と姿を消してしまう。それから35年後、兄弟同然に育った男性が彼の消息を辿ったところ、思いがけない真実を突き止める。戦中戦後の激動する時代を背景に、愛する者をホロコーストで失ったユダヤ民族の嘆きと哀しみ、そして生き残ってしまった者の癒えない罪悪感を浮き彫りにする。全体的に「音楽」と「ミステリー」に比重を置き過ぎたせいでテーマが霞んでしまった感は否めないものの、今までにない角度からホロコーストの悲劇を描いた作品として興味深い。