サスペンスに多様な感情と問題提議が盛り込まれている

米オクラホマで暮らす失業中の石油採掘員の主人公は、フランスのマルセイユで殺人容疑のため収監された娘を救うことが出来るのか、というサスペンス映画の形をとりつつ、そこにさまざまな感情と問題提議が詰め込まれている。親と子について、移民や異文化について、愛について、主人公は異国の地で行動しながら、自分がそれまで当然だと思っていたことが、別の場所ではまったく通用しないことを知り、初めて自分が無意識のうちに持っていた傲りと偏見に気づく。そんな無骨だが真摯な主人公が、マット・デイモンによく似合う。映画の最後の主人公の言葉が、すべてのドラマを集約して胸に響く。