表現の場末に、私たちは確かに居たのだ。

堂々巡りの地獄を彷徨うミュージシャンとマネージャー。まるで『嗚呼!おんなたち・猥歌』の内田裕也と安岡力也の様な夢追い人ふたり。30歳で出会った女と男。監督いわく、テーマは「青春の終焉」。2018年(平成30年)から始まった「夢の終わり、の始まり」はコロナ禍の令和まで延長されていく。
監督・脚本・出演をこなす異能の才人、大野大輔としても出色の出来。『ウルフなシッシー』のシニカルな笑いを超えた哀切が身に染みる。共同脚本を務めた『幕が下りたら会いましょう』(監督:前田聖来)とも主題を共振させつつ、主演の早織と大野が(時に正視できぬほど)素晴らしい。やたら生々しい「一回性の生」が強烈に刻まれている。