孤高の映画作家の静謐な狂気と美

2013年7月27日 森 直人 シャニダールの花 ★★★★★ ★★★★★

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シャニダールの花

「世界の崩壊」を描く映画はハリウッドのエンタメ大作から、『ニーチェの馬』(監督:タル・ベーラ)のような異端のアート映画まで多数撮られ続けているが、本作ほどシュールな美しさに満ちた怪作は類がなかろう。人間(女性)の胸に咲く腫瘍のような花というモチーフは、ボリス・ヴィアンの小説『日々の泡』(『うたかたの日々』)を彷彿とさせつつ、まったく独自の静謐な狂気をたぎらせる。監督の石井岳龍は、「石井聰亙」名義で活動していた初期の『狂い咲きサンダーロード』や『逆噴射家族』の破壊的なアクションが今も人気だろうが(タランティーノも大好きらしい)、聰亙時代の後期作品『水の中の八月』や『ユメノ銀河』といったスピリチュアルでトリッピンな夢幻性を経て、改名後の『生きてるものはいないのか』や本作で、ますます孤高の映画作家としての凄味を増しているように思える。そんな彼の新作に、綾野剛や黒木華といったフレッシュな俳優陣が集まることは、日本のインディペンデント映画における大いなる希望だ。

森 直人

森 直人

略歴:映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「メンズノンノ」「Numero TOKYO 」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況:YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。9月19日より、原一男監督&島野千尋プロデューサー(『れいわ一揆』)の回を配信中。ほか、行定勲監督 feat.東紗友美さん(『窮鼠はチーズの夢を見る』)、足立紳監督(『喜劇 愛妻物語』)、荒木伸二監督 feat.SYOさん(『人数の町』)、城定秀夫監督&平井珠生さん(『アルプススタンドのはしの方』)、田中圭監督(『島にて』)、内藤瑛亮監督(『許された子どもたち』)、諏訪敦彦監督(『風の電話』)、想田和弘監督(『精神0』)、深田晃司監督(『本気のしるし』)、豊島圭介監督(『三島由起夫vs東大全共闘』)、入江悠監督(『AI崩壊』)、タナダユキ監督(『ロマンスドール』)、岩井澤健治監督&大橋裕之さん(『音楽』)、片山慎三監督(『岬の兄妹』)と『パラサイト 半地下の家族』を語り尽くす特番、森達也監督&河村光庸プロデューサー(『i 新聞記者ドキュメント』)、小林啓一監督(『殺さない彼と死なない彼女』)、竹内洋介監督(『種をまく人』)、渡辺紘文監督&雄司さん(『普通は走り出す』など大田原愚豚舎の世界)、瀬々敬久監督(『楽園』)、今泉力哉監督(『アイネクライネナハトムジーク』)、二ノ宮隆太郎監督(『お嬢ちゃん』)、大森立嗣監督(『タロウのバカ』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

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