小林啓一は間違いなく、未知なる「今」を観ている。

いくらリサーチしたってこんな台詞書けるもんじゃないだろ。オタク、それもBL好き男女の思考回路に則っためくるめく言葉の洪水。オタク的術語ともいうべき耳馴染みのない単語の嵐。そっち系門外漢なら冒頭十数分は置いてけぼり確実だが、かなりの頻度でズドンズドンと発射される名言にいつしかのめりこまさせられていく(主役ふたりの非BLな妹たちが弛緩しつつ吐き捨てる言葉も、多くの観客にとって作品世界を相対化する手助けをしてくれる)。全編を貫く長回しは「オタクvsひと足先にリアルな性に目覚めた肉便器」とのバトルで頂点を迎えるが、そこでオタクは敗北せずさらなる名言を吐くのが素晴らしいじゃないか。傑作!