ものを言えぬ時代の恐怖は他人事ではないかも。

一人の将校の命を150人の政治・思想犯の命で償う。第二次大戦中、ナチス・ドイツ支配下のフランスで起きた暴挙だが、ヒトラーからの命令がトップダウンで淡々と進むのが非常に恐ろしい。監督は、誰もが明らかに「おかしい」とわかっているのに異を唱えられない薄ら寒い空気感を丹念に描いている。レジスタンスの象徴として有名なギィ・モケだけでなく、死刑リストに名を連ねた人々、非力さに苦悩する副知事や保身に走るナチス将校やその愛人らの心情を交えて多角的に事件を見つめる演出で戦争の理不尽さを伝える熟練の手腕に脱帽。映画で描かれる体制や政治が今の日本とかぶり、ものを言えぬ時代が迫っている恐ろしさを覚えた。