キーポイントとなるのは、“青さ”

望ましくない現実の自分と、それを啓蒙する、こうありたい自分の分身のせめぎ合い。こういうアイデンティティの物語は、若い世代にこそアピールするものだろう。
社交的な分身の姿に、オドオドした自分の情けなさを感じてしまう主人公のドラマは、ファンタジーとして面白い。が、『ファイト・クラブ』というひと世代前の傑作に衝撃を受けた人間には、青さも鼻につく。
それでもこの映画が憎めないのは、ジェシー・アイゼンバーグという“青さ”を体現できる役者の好演があるから。淡色のジャケットを着て、あたふたしている彼の姿がとにかく面白く、見方を変えると青年版『未来世紀ブラジル』のようにも思えてくる。