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6才のボクが、大人になるまで。 (2014):映画短評

6才のボクが、大人になるまで。 (2014)

2014年11月14日公開 165分

6才のボクが、大人になるまで。
(C) 2014 boyhood inc. / ifc productions i, L.L.c. aLL rights reserved.

ライター8人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.4

中山 治美

グレなくて良かった

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

 親の大人の事情に振り回される子供の成長物語だ。ただ我々は、「痛快!ビッグダディ」で゛事実は小説よりも奇なり゛を知っている。それでも子供は逞しく成長するということも。
 それに比べると本作は類型的な話だ。だが、同じ俳優を起用し続けたことで、観客を彼を見守る共犯者として巻き込むことに成功。誰もがグレずに成長して良かったと、親のような心情になるだろう。
 もちろん実情は分からないが、後半は彼の表情に俳優としての自覚が芽生え、我々を魅了するようになる。ドキュメンタリーしかり、カメラに捉え続けていると人間は無意識に演じるようになる。本作はそれを12年かけて実証した、壮大な実験作とも言えるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

ささやかだからこそ愛おしい平凡な家族の日常風景

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 とある平凡な家族の12年間に渡る歩みを描く物語が、そのまま演じる役者たちの12年間の記録でもある。テレビドラマやシリーズ映画ならいざ知らず、単独の劇映画としては前代未聞の試みだ。
 イラク戦争やオバマ政権誕生など、時代の移り変わりを背景に綴られる一家のささやかな日常風景。両親の離婚や再婚、子供たちの思春期や反抗期の訪れ。ごくありきたりであるからこそ、現代社会に生きる庶民の生活記録として、人種や国境を越えた普遍性が備わっている。
 親世代と子供世代。見る者の年齢や立場によって感情移入できるポイントも少しずつ違ってくるはず。映画における表現方法の可能性を広げる一本としても見逃せない作品だろう。

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清水 節

それでも不確かな愛を信じ健気に生きる12年間を切り取った傑作

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 思い出してほしい、6歳から18歳までの無限ともいえる歳月を。みるみる姿を変え、自我に目覚め、親たちは修羅場をくぐり、世の中は移り変わる。12年という実時間を、ノンフィクションではなく劇映画の中に採り入れるというコペルニクス的転回によって、かつてない豊穣な家族のドラマが誕生した。少年の視点で描かれる、父の身勝手、母の奮闘。オバマを選んでも好転しない社会背景と相俟って、近づいたかと思えば遠ざかる幸福のありよう。もう一人の主人公、それは時の流れ。シーンの繋ぎ目に情感が宿る。屈託なき笑顔の少年が陰りを秘めた青年へと変容し、それでも不確かな愛とささやかな希望を信じる姿を切り取った映画史に残る試みだ。

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山縣みどり

作り過ぎず、なのにしっかり練られた傑作

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

6才の少年メイソンの成長を12年間に渡ってカメラに収めた物語は、映画手法に一石を投じる傑作だ。R・リンクレイター監督は、一組の男女を9年スパンで18年追った『ビフォア』シリーズの手法をさらに拡大させたのだが、主演のエラー・コルトレインはじめとする出演者の容貌の変化が観客に大きなインパクトを与える。しかし、それ以上に素晴らしいのがしっかり練られた脚本と編集だ。離婚した両親の間を行き来するメイソンが親友との別離や初恋、失恋の痛みを知り、徐々に大人になる過程は誰もが経験することだから観客の共感度も高いはず。ひとつひとつが大事件ではないからこそ、人生の単純な一コマにこそドラマがあるのだと納得。

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平沢 薫

どの瞬間も等しく尊い

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

時間というものの不思議。それをフィルムに定着させようとする、映画というものの不思議。主人公の男の子がみるみるうちに変化していき、それが実際に12年間という歳月を費やして撮影されたものだということを知ってはいても、目の前に映し出される映像のそれぞれのシーンの色調や質感がまったく同じに見えるので、まるで数日間で撮影されたひと続きの時間のように見える。どの瞬間も、等価で、並列している。それを、言葉ではなく、この映画を見ることで、体感することができる。リチャード・リンクレイター監督は、処女作「バッド・チューニング」以来ずっと、それを描いてきたのかもしれないという気がしてくる。

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森 直人

子供は少年に、青年は大人に──生涯ベストワン級。

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

淡白なのに果てしなく奥深い味。時間のリアルな流れ=諸行無常をフィクションの生成に取り入れ、人生のエッセンス(多元性)を凝縮した大傑作だ。むろんダイジェスト(要約)とは真逆の試み。

コールドプレイの「イエロー」(冒頭曲)がグラミー賞候補になった02年から9.11以降の市井の米国人の歩みが描かれるが、私的な視座を徹底することで普遍化への回路を開いた好例でもある。特に父と息子の話として珠玉。子供の成長と青年からの加齢にダブルラインで感情が入ってしまう。

『バッド・チューニング』や『ビフォア』三部作などリンクレイター映画の諸要素を総合した趣もあり、真に贅沢な映画体験。チャーリー・セクストンも出演!

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くれい響

日本には「北の国から」があるじゃないか!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

上映時間165分――『トランスフォーマー/ロストエイジ』と同じ長尺でありながら、“あのとき”の疲労感はないのでご安心あれ。何の違和感なく、エヴァンス一家の人生を自身の人生に重ね合わせて観られる空気感は認めたい。とはいえ、ひたすら平凡すぎるエピソードの連続は、如何なものか。それによって際立つのが、肝である両親の離婚をあえて描かないリンクレイター監督のスカした感。そして、9年毎に撮っていった『ビフォア』シリーズのように観客にじっくり考えさせるところまで到達していない演出力。何はともあれ「北の国から」を観て育った人間なら、12年間同じキャストで撮ったことのどこがスゴいのか、と思ってしまうはずだ。

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相馬 学

“永遠”であり、“アッという間”でもある12年

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 子役の成長を追い12年かけて撮った……という裏話は確かに型破りだし、映画ファンからすれば驚くべきこと。だがそれは所詮、裏話に過ぎない。本作の優れた点は、時間の概念の緩急がリアルに刻まれていることだ。

 18歳の子どもにとって、それまでの12年は人生が続くという希望に満ちた、ある意味、永遠だ。しかし親にしてみればアッという間の12年。その時を生きる者と振り返る者の差が、同じ12年という長さの中に見えてくる。

 時間の経過に切なさを感じる観客は、本作の感動が深いものになるはず。時間の経過を正確に追った『ビフォア~』シリーズもそうだが、リンクレーター監督は、その辺に敏感なのかもしれない。

この短評にはネタバレを含んでいます
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