奈良橋陽子Pによる「合作」ワークの成熟点

2013年8月3日 森 直人 終戦のエンペラー ★★★★★ ★★★★★

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終戦のエンペラー

プロデューサーの奈良橋陽子による一連の「合作」ワークの成熟点として興味深く観た。彼女が最初にキャスティング・ディレクターを務めたスピルバーグの『太陽の帝国』(87年)と対を成すような内容だが、『ラスト サムライ』『SAYURI』『バベル』と連なる国境を越えた仕事には、78年、作詞家として手掛けたゴダイゴの「ガンダーラ」に見られるようなユートピア(理想郷)志向が常に底流しているはずだ。

今回は日本側の戦争責任というテーマを直截に扱いつつ、ボナー・フェラーズ准将の公私混同とも呼べる精神的な理解と共感を軸とした構成を取っている。歴史的・政治的な観点からすれば確かに甘口ではあろう。

ただし史実に『ロミオとジュリエット』型の恋愛を絡める作劇は、例えば最近だとアンジェリーナ・ジョリー監督の『最愛の大地』(8月10日公開)でも使われている。彼女たちは「戦争」を男性原理として捉え、そこに対して「恋愛」を女性原理として配置し、“個と個のつながり”にラブ&ピースのパワーと可能性を託しているのではないか。ヒロインの初音映莉子、好演!

森 直人

森 直人

略歴:映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「メンズノンノ」「Numero TOKYO 」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況:YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。7月30日より、片山慎三監督(ドラマW『さまよう刃』)の回を配信中。ほか、横浜聡子監督(『いとみち』。月永理絵さんとのダブルMC)、松居大悟監督(『くれなずめ』。SYOさんとのダブルMC)、藤元明緒監督(『海辺の彼女たち』)、さかはらあつし監督(『AGANAI 地下鉄サリン事件と私』)、池田暁監督(『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』)、前田弘二監督&脚本・高田亮さん(『まともじゃないのは君も一緒』)、岨手由貴子監督(『あのこは貴族』)、今泉力哉監督&冨永昌敬監督(脚本/『あの頃。』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

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