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ローン・レンジャー (2013):映画短評

ローン・レンジャー (2013)

2013年8月2日公開 149分

ローン・レンジャー
(C) Disney Enterprises, Inc. and Jerry Bruckheimer Inc. All Rights Reserved.

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.6

くれい響

『ジョン・カーター』に続き、ディズニーがやっちまった!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『許されざる者』に始まった、90年代前半にハリウッドで起こった西部劇ブーム。その後も、本作同様、往年のTVシリーズをリメイクした『テキサス・レンジャーズ』や力作『3時10分、決断のとき』などが製作されるが、それらが一過性で終わった理由は、本作を観れば一目瞭然。主人公は分かりやすいルックスも含め、子供がマネしたくなるヒーローであり、展開は勧善懲悪。そして、ほどよいコミカル描写が盛り込まれる完全なエンタメ作品が製作されなかったことだろう。
 一方、これまで恐ろしいほど作家性がなかったゴア・ヴァービンスキー監督が、前作『ランゴ』で炸裂させた『続・荒野の用心棒』『砂漠の流れ者』だけじゃない西部劇愛。今回もブラッカイマー色を踏まえながら、ロングショットや汗臭い労働者のカットなど織り交ぜ、『ウエスタン』のオマージュを出しまくり。明らかにタランティーノと双璧をなす西部劇愛で『ランゴ』に並ぶ、自身の最高傑作を誕生させた。とはいえ、北米での興収が物語るように、ディズニーが『ジョン・カーター』に続いてやっちまった「よくぞ作った! でも、今じゃねぇだろ!?」映画なのは否定できない。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

終盤の列車アクションに匹敵する名場面があと2つは必要だった

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 アクション大作ではあるのだが、やや視点をずらし、トント役ジョニー・デップの造形から着目したい。ティム・バートン作品における死化粧と、飄々とした海賊ジャック・スパロウを融合し、初監督作『ブレイブ』で自ら演じたネイティブ・アメリカンを、軽妙かつ妖しげに怪演する。オリジナル版では脇であったトントが主役級に格上げされ、彼の魔術で甦らせる瀕死のレンジャー隊員と共に、巨悪への復讐のために共闘するというバディ・ムービー形式。老いたトントが少年に向かって話し始める、アメリカの近過去についての昔語り。この2つの構成と適度な笑いは、名作のリ・イマジンにとって奏功している。
 
 ほぼ死滅していた海賊映画というジャンルを甦らせた『パイレーツ・オブ・カリビアン』チームの、西部劇再生の大成功を阻んだものは何か。それは、テンポよく見せるため編集に尽きる。いささかステレオタイプな、鉄道王と列車強盗という二大悪党のキャラクターによる因縁話がだらけている。アクションが痛快なだけに惜しい。2時間半の長丁場には、終盤のウィリアム・テル序曲に乗せて畳み掛ける王道列車アクションに匹敵する名場面が、あと2つは必要だった。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

映画史の黎明期をフルボリュームで再生する。

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズがあなどれないのは、『宝島』や『海底二万哩』など、ディズニーの実写映画における最初期の海洋ものを21世紀版として改訂したことだ。特にシリーズ第二作『デッドマンズ・チェスト』は、そこにバスター・キートン調のサイレント活劇の要素を取り入れ、古典映画のアクションの再生にとんでもないエネルギーが注入されていた。

同じチームによる『ローン・レンジャー』は、テレビドラマで有名な往年の人気西部劇のリメイク……という体裁を取りつつ(アリバイのように(?)テーマ曲「ウィリアム・テル序曲」が流れまくる)、実質は『デッドマンズ・チェスト』の試みを受け継ぐネオ・クラシックな大娯楽活劇だ。映画史の始まりにまで遡行し、エドウィン・S・ポーターの『大列車強盗』(1903年)などを起点とする鉄道アクションをフルボリュームで再生したような作風を見せる。

西部劇、という意味で本作の「前作」と言えるのは、ジョニー・デップが声優として、ゴア・ヴァービンスキー監督と2011年に組んだ西部劇パロディ・アニメーションの傑作『ランゴ』であろう。ぜひ併せてご覧いただきたい!

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中山 治美

ジョニデ様は魂を売っていなかった!

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

ジョニデ様の、白塗りメイクに隠された心意気にシビれた。
夏休みの娯楽大作を装いながら製作陣が挑んだのは、
先住民の土地を奪い、中国人を使って北米大陸に鉄道を縦断させた血塗られた米国開拓史をつまびらかにすること。それを今に伝え、我々の暮らしは多くの犠牲の上に成り立っていることを認識させることだ。
飛行機と鉄道と違えど、狙いとしては「風立ちぬ」と同じ。でもこちらは、汚い部分や残虐な部分も逃げずに描く。
ジョニデ様が先住民族の血を引いていることは有名だ。初監督作「ブレイブ」でも、先住民が置かれている状況を訴えた。奇抜なメイクも、実在した先住民の写真からイメージしたと、わざわざエンディングロールで(c)表記を載せている。本作はそんなジョニデの思いを受けた監督が共犯者となり仕掛けた野心作だ。
本物の列車を動かしながら撮影した大活劇に心踊らせながら、売れっ子になっても攻める姿勢を忘れないジョニデ様を惚れ直した。

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相馬 学

試みは面白いし退屈知らずだが既視感はバリバリ!?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 往年の人気TVシリーズのヒーローを、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのノリで作る、そんなコンセプトは面白いし、列車上のアクションをはじめ見せ場には事欠かない。『パイレーツ~』のファンには響くものがあるのは間違いないだろう。
 しかし既視感があるのも否めず、コンセプトの面白さの割には新味がない。何より、肝心のヒーロー、ローン・レンジャーがジョニー・デップふんする語り部以上のインパクトがないのが惜しい。そういう意味では回を追うごとに影が薄くなっていった『パイレーツ~』の実質的な主人公ウィルと被ってしまう。
 『パイレーツ~』の頃からジョニーの無声映画的な演技のセンスは評価されていたが、今回は白塗りのせいか、よりバスター・キートンに近づいた感がある。肉体を重視したコメディ演技のセンスに改めて唸った。

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今 祥枝

ブラッカイマー×ヴァービンスキー、以上でも以下でもない

今 祥枝 評価: ★★★★★ ★★★★★

「パイレーツ・オブ・カリビアン」3部作の製作×監督コンビに、はなから過剰な期待を抱く映画ファンは少ないだろう。ゆるさが信条とも言うべき物語に、金のかかった派手なアクションを散りばめ、ジョニー・デップの怪演とくれば鉄壁の布陣。かくして予想通りの大味なハリウッド大作が出来上がる。
 とはいえ、心躍るシーンもある。とりわけウィリアム・テル序曲に乗せて展開する、列車上でのアクションは迫力満点。白馬にまたがり疾走する正義のヒーロー、ジョンに扮するアーミー・ハマーのスクリーン映えのすることといったら! 
 一方、ジョンの相棒で”悪霊ハンター”のトントに扮するデップは相変わらず芸達者で、カラスを頭に乗っけたビジュアルだけで十分エキセントリックではあるが、いま一つ魅力に欠ける。
 旧シリーズに準じて正統派の西部劇風だが、いっそのこと「パイレーツ〜」よろしくスーパーナチュラルを織り交ぜて、トントが文字通り悪霊とでも闘ってくれれば、長尺も気が紛れたかもしれない。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

もっとハッチャケても良かった

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

往年のテレビ版を知る世代(わたしゃ違うよ)には“なんじゃこりゃ!?”のお茶目な凸凹コンビとなった覆面ヒーロー、ローン・レンジャー&相棒トントだが、まあ、21世紀流新解釈と考えりゃなんてことはない。「パイレーツ・オブ・カリビアン」のスタッフ&キャスト再結集ということで、ノリはほぼご想像の通り。原住民に対する白人の暴虐という米国の黒歴史を背景にしつつ、さらには銃規制に揺れる現代米社会への目配せも忘れず、全体的にソツのないエンタメ作品に仕上がっている。ジョン・リード=ローン・レンジャーのおバカなクソ真面目ぶりにイライラ&ハラハラさせられ、微妙に感覚のズレたトントのシュールでブラックな笑いに腹を抱え。とりあえず愉快な2時間半を過ごせるのだが、結果としてそれ以上でもそれ以下でもなく。ジョニー・デップの怪優ぶりはいつもながらあっぱれ。無法者ブッチ役のウィリアム・フィクトナー(「プリズン・ブレイク」)もいい。あとは、象牙の義足に拳銃を仕込んだ酒場のマダムをもうちょい活躍させたら良かった。セクシーな酒場美女軍団を従えたりとかしてさ。この路線ならそこまでハッチャケても良かったはず。

この短評にはネタバレを含んでいます
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