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ビッグ・アイズ (2014):映画短評

ビッグ・アイズ (2014)

2015年1月23日公開 106分

ビッグ・アイズ
(C) Big Eyes SPV, LLC. All Rights Reserved.

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.6

清水 節

空虚な駄作続きのティム・バートンが長いトンネルから脱出した

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 悲しみをたたえた大きな瞳の人々。絵画の中の彼らは、私はここにいると真実を告げることが出来なかった描き手マーガレット・キーンその人に違いない。時節柄ゴーストライター騒動と比肩されがちだが、クリストフ・ヴァルツ扮するアーティストの手柄を横取りして芸術を騙る男は、表現すべきものが無いのに生き延びるためにアートをビジネスに変換したあらゆる策士のメタファーだ。大作を手掛けても空虚な駄作続きだったティム・バートンが、長いトンネルから脱出した。才能ある者や真の貢献者が追いやられ、したたかにプロデュースし我が物顔で振る舞う者が脚光を浴びるアートやショウビズの世界において、本作は救いのバイブルになる。

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

スマートすぎるが、それも新鮮なバートン映画。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

バートン初の女性映画である。正しくは搾取される妻と搾取する夫の物語だが、開巻草々「女性が男性に従わないのは悪とされた時代の出来事」だとバートン映画の主要舞台サバービアを背景に宣言することからも、この映画の主役はマーガレットだといっていい。それでもなお、何故彼女が10年間も夫の言いなりに描き続けたのかはやや舌足らずなのだが、A.アダムスの微妙にして雄弁な表情の演技が補って余りある。夫(C.ヴァルツ)もただの悪人に貶めず、革新的なプロデュースの才で時代を拓いたことをちゃんと語っているのも好ましい。ピンクとブルーを強調した色彩、C.ジェイダーのヴァイブ・ジャズを持ってきたセンスも流石。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

ヒロイン主体でも、愛着はダメ男に!?

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ティム・バートンによる実話の映画化は『エド・ウッド』以来20年ぶり。不遇の者が逆襲に転じるという、彼お得意のストーリー運びの健在ぶりが嬉しい。

 女性が抑圧されている時代背景を踏まえながら、横暴な夫に立ち向かうヒロインの成長を活写。モルモン教への改宗などのデリケートな逸話もサラリとユーモラスに描く、バートン節は絶妙だ。

 一方で、『エド・ウッド』にも似たホラ吹き男に対する愛情が垣間見えるのも“らしさ”。夫が法廷で笑えるほど見事なダメっぷりを披露するクライマックスは、演じるヴァルツの独壇場だ。これを目にすると、監督は実は悪役であるこちらに肩入れしているんじゃないかと思えてくる。

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なかざわひでゆき

不完全燃焼気味なT・バートンの新境地

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ‘60年代の米国で一世を風靡した画家ウォルター・キーン。ところが、実際に画を描いていたのは彼の地味で控えめな妻マーガレットだった。
 題材となった実話は面白い。芸術家のアイデンティティや女性の自立といった普遍的テーマは料理のしがいがあるはずだ。だが、今回のティム・バートンは彼らしい独創的な視点や表現をほぼ封印し、夫婦間に起きた出来事を客観的に紡いでいく。
 もちろん、映像作家が新たなスタイルに挑むのは当然のこと。しかし本作の場合、マーガレットはなぜ10年もの間耐え続けられたのか、ウォルターは最初から妻を利用しただけなのか、彼らの深層心理に殆ど踏み込んでいないため不完全燃焼な印象が強い。

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山縣みどり

ティム・バ―トン監督に大人の映画は無理だったかも。

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

『エド・ウッド』の脚本家チームと再び組んだ実話ドラマだけど、ティム・バートンらしさが感じられるのは、主人公マーガレットが描く大きすぎる瞳の子ども像だけ。かなりドラマティックな出来事なのにこのフラットさは何? 監督の持ち味であるエキセントリックな想像力をキーン夫妻それぞれの思惑や心の揺れを描くのにもっと使ってほしかった。古い因習や思考に囚われた心の弱い女性が芸術家としての権利と名声を取り戻すさまは、見方によっては一種のフェミニズム映画。ただしバ―トン監督がマーガレットの精神的支えとなったものを積極的に描かなかったため、肝心な部分がぼやけてしまったのが残念だ。

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平沢 薫

ティム・バートンが新たな顔ぶれと新領域に挑戦

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

ティム・バートン監督ファンは、実在の画家夫婦を描く映画と聞いて、この監督が実在のB級ホラー監督を描いた「エド・ウッド」のような映画を予測するのではないか。が、本作は、まったく別モノ。この映画は、あの目の大きな子供たちがなぜ生み出されたのかを描く映画ではない。では何の映画なのか。ふと気になるのは、昨年末、監督と彼のパートナーで彼の映画にも出演していた女優が破局したというニュース。ひょっとしたら、この映画は、バートン監督による夫婦論なのだろうか。その視点から見ると、いろんな点で興味深くはあるのだが。次回作はファンタジー「ハヤブサが守る家」の映画化作。この映画がどう変化するのか、要注目だ。

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くれい響

この20年のティム・バートン監督作でベスト

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ビッグ・フィッシュ』から12年経つが、ティム・バートンが改めて「しっかりオトナの映画を撮れること」を実証した本作。残念ながらオスカー候補からは漏れたが、ここ20年のバートン監督作の中でもベストといえる仕上がりだ。一見、絵の才能はあるのに男運が悪い女と饒舌で上昇志向の強い男による、ちょっといい話にも見えるし、「パワーパフガールズ」にも影響を与えた「ビッグ・アイズ」を始め、60`sポップカルチャーを堪能することもできるが、それだけで済まないところが本作のスゴさ。バートン演出の下、エイミー・アダムスとクリストフ・ヴァルツが奏でる後半のホラー展開は、『ゴーン・ガール』の衝撃再び…といえるだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
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