厳粛で、柔らかな作法

西洋版『おくりびと』!? というのもある程度間違っていないのだが、もっと抑制されたマナー&トーン。死の側から生を見つめる物語として、極めて良質の一本だ。
語り口は平易なのだが、色彩設計の細やかさが尋常ではなく、詩情がカラダに染みる感じ。U・パゾリーニ監督は「視覚的に小津安二郎の晩年の作品を参考にした」と語っているが(確かに何度も『秋刀魚の味』を思い出した)、孤独な中年男のストーンフェイスを基軸にゆっくり転がしていくオフビートな喜劇調は、むしろ小津チルドレンの最優秀者の一人、アキ・カウリスマキに近いと思う。
ラストシーンは、ハマればでかい。孤独死や無縁社会という乾いた言葉を潤す力がある。