“正当に評価されない”、そんな不満が招いた悲劇

努力しても成果を上げても報われない。頑張りが足りないのか、それとも世間が正当な評価をあたえてくれないのか? 本作の核心は、この双方向の疑問の境界を浮かび上がらせたことにある。
五輪で金メダルを獲得しながらも貧しい暮らしを強いられるレスラーと、巨万の富を手にしながらも満たされぬ大富豪。そんな両者の出会いが史実通りの悲劇を引き起こす。そこにいたるサスペンスはもちろん、葛藤のドラマにも見入ってしまう。
アメリカという国家が人をどう評価するのかをも視野に入れた物語は、社会派劇としても興味深い。求めすぎた彼らが悪いのか、あたえない国家が悪いのか? 役者たちの熱演ともども歯応えのある力作だ。