名プロデューサー、演出もなかなか。

淡々と、しかもミニマルに綴られる民生士の日常。多くの人がチェーホフ「外套」のアカーキイを想起するだろうが、矩形あるいは真正面のアングルにこだわる構図も含め小津安二郎の影響が濃厚。主人公がこだわる葬儀のかたちは明らかに不合理で、むしろ「葬儀は生者のためのものだ」とする(戯画的なまでに悪役の)上司の言い分こそ一理あるが、孤独死した者にシンパシーを抱くどころかそれ以上に孤独な民生士の生活が、彼の行為に充分理由を与えている(物乞いにまで落ちぶれた男よりも女縁がない自分を知って酒をグビるE.マーサンの哀しさおかしさ!)。しかし惜しいのはラスト。ここで泣く人も多いのだろうが蛇足としか思えない。