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パリよ、永遠に (2014):映画短評

パリよ、永遠に (2014)

2015年3月7日公開 83分

パリよ、永遠に
(C) 2014 Film Oblige-Gaumont-Blueprint Film-Arte France Cinema

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.3

轟 夕起夫

この“試合”の最大のポイントは、沈黙が流れる瞬間

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ヒトラーの爆破指令を受け、パリの命運握るドイツの将軍と、それを翻意させようとする中立国スウェーデンの総領事、一夜の対話劇。ヒット&アウェイからインファイトへと持ち込む“言葉のボクシング戦”だが、会話が途切れ、二人の間に沈黙が流れる瞬間もスリリングだ。つまり、総領事が部屋を出されるか留まるかが、この“試合”の最大のポイントとなる。シュレンドルフ監督の演出はやや平板なところも見受けられるものの、外交(←これが原題)とは決してキレイごとではないという、苦いリアリズムも含んだ一編で、また、食べ物が人物キャラを伝え、作劇を巧みに転がす“フード理論”に沿って眺めても面白い(本作では口に入る薬も!)。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

“個”を殺す戦争の罪を見つめた力作

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 久しぶりの日本公開作『シャトーブリアンからの手紙』と同様に、フォルカー・シュレンドルフ監督はナチスという自国の歴史と向き合う。舞台劇の映画化らしく会話主体で転がる、肉体的な動きの少ない作品だが、心の動きはダイナミックで魅入った。

 最大の魅力は頑固者VSクセ者の駆け引き。どちらの側にも“事情”があり、その溝を埋めていく詰将棋のようなスリルが宿る。ベテラン俳優ふたりの、いぶし銀の味も光り、それぞれの妙演にも唸った。

 『シャトーブリアンからの手紙』もそうだったが、人間対人間なら話も通る。しかし国を背負うと。そう簡単に話は進まない。個を殺す、このやるせなさこそが戦争の罪なのかもしれない。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

狂気の時代にこそぶれない外交が大事のようです

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

ベルリンが壊滅状態にあるのにパリが美しいままなのは許せん、と爆破命令を出すのはヒトラーが常軌を逸した証拠。命令に背きたいけれど家族が犠牲に……というジレンマに陥ったドイツ人将軍とスウェーデン総領事の丁々発止のやりとりを軸に進行する物語は、舞台の映画化らしく台詞ヘビー。会話を追うだけでかなり疲れるのは事実だが、きちんとした信条や守るべきものを大事にする男たちの心理的な駆け引きは見応えあり。敗北が決まった側にはある種の逃げ道を用意するスマートな外交手腕やぶれない姿勢が大事と感動した。でも、先日ISが美術館の収蔵物や文化財を破壊する映像を見て、狂気が言い訳の蛮行許すまじと思ったのも事実です。

この短評にはネタバレを含んでいます
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