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海にかかる霧 (2014):映画短評

海にかかる霧 (2014)

2015年4月17日公開 111分

海にかかる霧
(C) 2014 NEXT ENTERTAINMENT WORLD Inc. & HAEMOO Co., Ltd. All Rights Reserved.

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

轟 夕起夫

船の上の大統領、キム・ユンソクがぶっ壊れます

轟 夕起夫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ポン・ジュノが初プロデュースを買って出て、シナリオにも参加、監督デビューを果たしたシム・ソンボはあの『殺人の追憶』の脚本家……ということで期待しすぎたか。いや確かに、極限状況へと追い込まれた人間の業(ごう)と性(さが)に肉薄し、ひとりひとりが壊れていくその怖さは十分感じられる。特に、傲慢さが最大値に膨れあがる船長役キム・ユンソクの阿修羅ぶりはさすが。
 だが、不法移民を密航させる漁船に予期せぬカタストロフィーが訪れるや(ここは本当に驚かされた!)、そこからの船員たちの行動がそれぞれほぼ想定内でどうにも予定調和的に見えてしまうのだ。海の上の“密室”という閉塞感は、最後まで効果的なのだけれども。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

本当は『グエムル』より怖い人間

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

どう見ても、ポン・ジュノ製作&脚本作。コミカル要素を交えながら、女好きやお人好しなど、それぞれのキャラのバックグラウンドをしっかり描く前半パート。そこで観客に感情移入させ、中盤の“予期せず起きてしまった出来事”を機に、キャラが抱える狂気を爆発させ、観客の感情を揺さぶりまくる。古くは香港映画のお得意パターンといえるが、韓国映画ならではの血の気の多さも混入し、“本当は『グエムル』より怖い人間ドラマ”に仕上がっている。
船長役のキム・ユンソクが、どハマり。イケメン色封印な髪型のJYJパク・ユチョンも、なぜこんなヒロインに惚れるんだ?と思わせるほど、しっかり男優の顔になってるからスゴい!

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

残酷で悲惨で醜い貧困が招いた惨劇

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 生活苦に喘ぐ貧しい漁村の漁師たちが金に目がくらみ、オンボロ船で中国から不法移民を密入国させようとするも、その道中で思わぬ惨劇が起きてしまう。
 まさに窮すれば鈍する。登場人物の大半は、貧しくとも美しくなんて綺麗事とはほぼ無縁だ。貧困に追い詰められた人間の浅ましさと愚かさ。ここで描かれる貧乏は残酷で悲惨で醜い。しかも、虐げられる人間がさらにその下の人間を虐げる虚しさよ…。
 後半はほとんどサイコホラー。荒んだ人間たちの暴走する狂気に思わず身震いする。ピュアな若者パク・ユチュンの存在が唯一の救いだが、しかしそんな彼の一途な良心と正義すらも打ち砕く皮肉なラストがまた哀しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

キャラのこだわりがぶつかる韓国製特濃サスペンス

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 小さな漁船上という舞台設定がイイ。そこには逃げ場がない。精神衛生的な健全さを求めるならば、そこにいる誰かと向き合うしかないのだ。

 登場する船員たちと難民には、それぞれに従うべきルールがあり、それが船上でぶつかり合う。そこに悪天候やら悪しき状況やらが襲いかかり、各々のこだわりに変化をあたえるのだから面白い。

 責任感に忠実な者もいれば、欲望に忠実な者もいるし、思慮こそ浅いが純朴な者もいる。そんな人間ドラマのぶつかり合いがサスペンスを機能させ、ドラマのスピードは加速。韓国製エンタメ映画の筆圧の強さに、改めて唸らされる。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」は時と場合によりけり!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

海上を航行する漁船で起きた凶事が軸となる一種の密室サスペンスだが、事件に関わった当事者の人間性を描くことに重点を置いたシム・ソンボ監督の脚本が秀逸だ。犯罪に加担させられて心を壊す人もいれば、金のために仲間を裏切る人あり、守りたい人のために戦う若者もいる。狂気と正気の境界線を超えるのは意外に簡単で、逆に異常な状況で人間性を維持する方が難しいと痛感。「赤信号、みんなで渡れば怖くない」が成立するのは、みんなの利害が一致するときだけだ。凄惨かつ残酷なシーンが続くなか、新米船員を演じたパク・ユチョンの熱演が一服の清涼剤。平凡な人間が持つちっぽけな良心こそに人間の存在意義があると思わせる。

この短評にはネタバレを含んでいます
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